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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第一章 生きる世界、変わりました
12/125

あゝ素晴らしかった誕生日よ

大事な話なので増量です!

1〜3で1話だと思うと、分けて良かったと思う……思うよね?


 俺たちは現在次の目的地へと向かっていた。

 まあ、といっても俺は抱っこされていただけだが。


 俺はさっきからクルクルと風車を回しては、弱い風を吹かしている。

 もう季節は秋だ。

 そんな季節に風を吹かすな、という寒がりもいるかもしれないが、やはり涼しい風というのは心が落ち着いて、俺は好きだ。


 それに、強い風を吹かそうと試行錯誤するのは、少し単調だがゲームを思い出させる。

 勿論、魔法の仕組みの研究も兼ねているのだが。

 

 両親は悪戦苦闘する子供(おれ)が可愛いのかくすくす笑っている。


 微笑をするならヒントくれ! ……うん。流石に口には出せない。


 まあ、実際俺もそんな子供がいたら微笑ましく思うだろう。

 別にそういう趣味(ペドフィリア)ではないが、顔もいいときたなら尚更だと思う。


 それから、目的地につくまでにさっき騒ぎのあった通り(ストリート)を通ったが、もう騒ぎは無くなっていた。

 あの店で結構時間を使ったので、当然と言えば当然だろうが、それでも少し希望を抱いていたので残念だ。

 後で少し調べてみようかな、と思う。


 その通りを抜けて、足音響かせ歩くこと20分、両親が再び会話を始めた。


「あ、おい。ここを右に曲がればもう着くんじゃないか?」

 

 父は右の方を指さし、母の方を向いた。

 その後母は少し逡巡してわずかに頷くと、肯定の言葉を口にした。


「うん。まちがいない。ほらグリム、もうすぐそこですよ〜」


 彼女は俺の背中をポンポン叩いて優しく話しかけてくきた。


 別にもう起きてるからそんなことしなくてもいいのになぁ。

 やはり親としてやりたいものなのか、それとも母がぬけているのか。

 

 くだらない疑問を頭から消し去ると、俺は元気よく返事をした。




 俺たちはついに目的地に到着した。

 見た目は特に変なところはなく、普通の店っぽい。

 どちらかと言えば民家に近い作りをしている。住居も兼ねているのだろう。


 店名は「服飾雑貨」……まあ、十中八九服屋だろう。


 というか、この街の店の名前は単純すぎやしないか?

 魔道具店とか武器店とか、家具店とかばっかり並んでいたぞ。

 この店も単純だが、「〜店」でないだけまだ凝ってる方だろう。なんならさっきの「遊遊道具」なんて、超絶お洒落ネームだったわけだ。


 などと無駄なことに感心していると、母が店主と話を進めていた。


「頼んでいたもの、もうできていますか?」


 店主は母の言葉を聞くと、自慢げに笑みを浮かべた。


「ああ、勿論ですよ。結構いいもんができたと思います」


 少し痩せ型の店主の言葉を聞いて、母はパァッと明るい表情になると、そのまま頭を下げた。


「ありがとうございます。無理を言ってしまい申し訳ありませんでした!」

「アッハハ、頭を上げて下さい。恩人の頼みじゃあしょうがないですよ」


 頭を上げた母の表情はとても朗らかな笑顔だった。

 どうやら本当に嬉しいらしい。何を頼んだんだろうか。


「……やっぱ可愛いなあ」


 おうおうパパン、俺は聞き逃さねぇかんなぁ? 惚気はやめろ、(ぼっち童貞陰キャ)に効く。

 し、深呼吸で落ち着くんだ。ひっひっふー、ひっひっふー。


 さて、どうやら両親はツテを使い少し無理を言って頼んでくれたらしい。

 そこまでして何を頼んでいたのかは気になるが、まずその前に、だ。


「ねーねーパパ、おんじんって、なあに?」


 そう、先ず何の恩人かを確認しなければならない。

 その自然な話の持っていき方として、俺の純粋スマイルで先制攻撃を仕掛ける!

 結果、相手は全てを話す!(多分)


「ん、恩人っていうのは、何かを助けてくれた人ってことだよ」

「えー、じゃあ誰がこの人の恩人さんなのー?」

「実はパパなんだよ、これが」


 はいちょろい。まあ男など少し煽ててやればこんなもんだ。

 あとは、何の恩人かを聞けば王手(チェックメイト)だろう。


「じゃあ、パパは何の恩人さんなのー?」

「んー、それはね……あの人の娘さんの命を助けたことがあるんだよ」


 え、すご。普通に偉いじゃんパパ。

 俺は純粋にそう思い、父を褒めてあげた。


「ん? そうか、ん? やっぱりか。あっはっは!」


 一応誰も否定しないので本当っぽい。

 いやほんと、普通にすごい。あとは調子に乗らなきゃ完璧だったけどな。


「いや本当、ライアンさんには一生かかっても返せない恩ができちゃいました」


 店主はその椛色の頭をかきながらそう言った。


 しかし、父はいやいやそんな、と照れっぱなしである。

 ……言っていることは謙遜なのに、全くかっこよくないのは人徳だろうか。


 母がそこで、その子が元気にしているかを尋ねる。

 店主は頷くと、後で会わせる、と約束してくれた。

 どうやら俺と同い年らしく、友達になってやってくれと頼まれてしまった。


 そこで店主は話を切り上げると、プレゼントに話を戻した。


「頼まれた通り、サイズは可変式のやつで、色も真っ黒にしときました」


 そう言って店主は俺たちを連れて店の奥へ行くと、ある箱の前でたちどまった。

 箱は扉がついている。きっとこの中に服があるのだろう。


「それじゃ、準備いいですか? いきますよー」


 店主は軽く確認を取ると、扉をゆっくりと開けた。




 その中にあったのは———制服だった。

 というより、行事に着るタキシード的なやつに近いのかもしれない。


 しかし、いったいなぜこんなものを、と思っていると、母がまるで心を読んだかの如くその疑問に答えてくれた。


「グリム、あなたは来年で3歳だから、ついに幼学園に通うの。それで、行事用に服を用意したってわけ! だからプレゼントは、入学報告!」


 どうやら俺は、来年から幼稚園生的なものになるらしい。


 


 いや、え? あるんだそんなの。


 それが俺の第一の感想だった。

 中世社会にそんなものがあるなんて全く思っていなかったので、俺はとても混乱してしまっていた。

 いや、俺が本物(グリム)だったとしても、きっと困惑したことだろう。

 何月か過ごして分かったが、どうやら母は結論を先に言うタイプのようだ。

 ちゃんと説明をしないでこちらをよく混乱させる。


 とりあえず俺は母の説明を待つことにした。


 「子供はね、三歳になる年から幼学園に通うことになるの。それで、卒業までの十二年間を毎日のようにそこで過ごすことになる。寮生もあるけど、うちは家が近いから通学ね」


 あ、すいませんストップで。


 はいまず十二年間ですか。長いですね。中学までやるんですか。

 中世だとそういうのは人手がないからできなかったみたいなの聞いたけど?

 これも魔法のおかげかな?


 次に「毎日」ですか。多いですね。週休二日制なんだろうな。

 いやー、勤労時間の概念とかなさそうだなーこの時代。

 さ、流石に長期休暇はあるはず。信じてっからな!


 最後に寮生と通学生ですか。すごいですね。

 いったいどのくらいの人が集まるのやら。

 流石に一定学年ごとにキャンパスは分かれてるよね?

 あと、まさか都市に一個しかないとかないよね?



 はい。愚痴時間終わり! よーし現実に戻ろう(現実を見よう)


 まあ、俺の最も嫌いな学校生活とかいう地獄があるのが確定したところで、彼らにその悲しみは伝わらないわけで。あいも変わらず全員ニッコニコである。

 ぐわーっ、眩しい、眩しすぎるーっ!


 そんな光景から俺は目を逸らし、子供が困惑するふりをして後ろを見る。

 これは逃げではない。撤退だ。多分そうだ。


 ……しかし、後から振り返ると、俺は最悪手を選択してしまっていたのだ。



 俺は、振り返った時に何かの影が動いたのを見逃さなかった。

 いくら薄暗い場所とは言え、もう目は慣れていたから。


 そして、それを店主に俺は尋ねてしまった(・・・・・・・)

 店主はそれに気づくと、それに声をかけた。


「あ、おーいお前もおいで、二ヶ月後に一緒に入学する子だよ」


 そう聞いて、それ……いや、店主の娘さんはゆっくりとこっちに近づいてきた。

 というか、普通子供はそんな落ち着いて佇んだり歩いたりしない。俺がおかしいのだ。


 そして、その姿、というか顔が見えてくるにつれ、俺の顔は引き攣っていった。


 頭をよぎるのは、あの違和感たち。


 謎の文字列と模様、遺伝しない髪色、この世界の風景、風車そして………



 ()()()()()()()()()()()



 そう、彼女は忘れもしない。忘れるわけがない。

 少し幼いが、俺がかつての世界で最後に見た顔。

 主人公「レイン」その人なのだから。


 少女は栗色の髪を揺らし、俺の前でうっすらと微笑みを浮かべている———


極楽は一瞬にして地獄と化す……。

果たして主人公のSAN値は大丈夫なのか———!

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