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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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最後の一手

たった二人の最終防衛ラインなんて、おかしいと思わなかった?


 ボロボロになった神殿の中、背中合わせに縛り上げられて座り込んでいる男が二人、救助を待っていた。


「いてて、ちょっとエレオスさん。あんまり動かないでくださいよ」


「こっちはお宅よりも体勢がきついのでね、辛抱してください」


「うへー、救助が来るのはいつになるのかもわからないのに……」


 上半身と腕を合わせて縛られているので、どちらかが動くともう一人の手首の辺りが強く締め付けられる。先程から苛立たしそうに貧乏ゆすりをするエレオスは、パトレアにとってはとんだ災厄であった。


「うう、もう少し優しく縛ってくれたら良かったんですけど」


「殺されてないだけマシでしょう。あいつの目的はますますわからなくなりますが……」


「それはそうですがね。人間は欲の深い生き物ってことですよ」


「それを言えば、そこを戒めるからこその神官だとも」


「あ、正論」


 クック、と笑いを漏らすパトレア。その様子があまりにも軽薄なので、腐っても神官のエレオスはちょっとイラッとした。

 だが、今この状況で喧嘩をするほどエレオスの社交性は終わっていない、というかそうだったら隊長(ここ)まで偉くなれていない。ため息をつきたくなる衝動をグッと堪え、沈黙を選ぶことができた。


 エレオスが黙ってしまったので、二人の間に微妙な静寂が生まれる。

 別に仲がいいわけでもないので普通に気まずいだけの沈黙だが、エレオスはそんなことは知らんとばかりにじっとして動かない。

 パトレアとしても、ある意味競合他社である見廻隊に対してあまり親しくしようとも思っていないので、特に話そうとは思わなかった。


 だが、閑暇とはいつだって思考を産むもの。

 静寂の間に、ふと彼は気になって、背後の片割れの声をかけた。


「————そういえば、結局あの計画って実行する方向でいいんですかね」


「……あの計画?」


 急に話を振られ、驚いたエレオスはもう一度彼に聞き返す。

 すると、パトレアはそれに頷くと、再度口を開いた。


「ええ———天使を復活させる(・・・・・・・・)とかいう、アンリヨール復活時の対策のことです」


「—————! キサマ、どこでそれを!」


 パトレアの言葉はエレオスをして目を見開かせるものであった。

 彼はあまりの驚きに縄で縛られていることも忘れて立ち上がりかけたが、しかしすぐに冷静になると吐き捨てるようにいった。


「……そうか、よく考えればお前らは国側(ルーラー)だったな。天使様の復活、なんて大それた対策、無許可な筈がない、か」


「いてて、お分かりいただけてよかった。私の手首がちぎれるかと……」


「ああ、申し訳ない。こちらもまだまだ精進が足りないようでした」


「はは、修行で殺されてちゃ世話ないですけどね」


「…………」


 少しばかりの罪悪感を覚えたエレオスだったが、なんとなくこの男に頭を下げるのが憚られたため、そのまま話を戻した。


「計画のことですが……まあ、知ってるなら話してもいいか。おそらくは実行の形を取るでしょう。アンリヨール復活は現実となったのですし、予断を許す状態ではない。いくら復活直後には力がないだろうとは言え、です」


 エレオスが力なさげに俯く。パトレアはそれに少し驚いたように目を見開いた。


「へぇ! 天使様の復活なんて、畏れ多くて最後の手段だと思ってましたよ」


「本来ならばそうあるべきですが……今回の件はずっと昔から決められていたことでもあります。それこそ、神護会の伝統には逆らえないんでしょう」


「なるほどー、教会にもいろいろあるんですねぇ」


「………ええ。残念ながらアンリヨールの封は破られましたのでね、意地を張って世界が滅亡すれば、我々は一体主にどのように顔向けすればいいのやらわからない。もうなりふり構っていられないんですよ」


 残念そうに首を振るエレオス。

 そこには、自分の失態に対する嫌悪やら不甲斐なさやら、様々な感情がこもっている。


「……それはそれは。守りきれなくて悪いことをした」


 一方パトレア。あいもかわらず平易な声色である。


「「……………」」


 両者の間にしばしの沈黙。


「貴方、先ほどから適当な返事しかしませんね?」


「え? いやまぁ、世界が終わるとか急に言われても、私は一介の警官ですのでねぇ。正直実感は湧きませんよ、ははは」


「………………」


 エレオスの冷たい視線がパトエアを襲う。

 しかし、背中合わせのこの状況ではパトレアにそんなもの伝わるはずもなく、敢えなく躱されてしまった。


 ———だが、エレオスは、ここで終わるような男ではなかった。


「……実は、中々自分ごとに引きつけられない貴方に朗報があります」


「へぇ? なんです? 聞けば私もこの件の重大さがわかると?」


「まあ、そうでしょう」


「そりゃ興味深い! 是非お聞かせ願いましょうか!」


 すると、エレオスは満面の笑みを浮かべると、精一杯の明るい声で声を弾ませた。


「実は—————天使の復活には大量の神術師が必要でして! 今日ここにいる全神官が集まって、現在絶賛儀式中なんですよ!!」


「……え」


「なので、多分助けが来るのは明日の朝とかになると思います!」



「…………………」



「…………………」



「どうです? 急に自分ごとのように感じられてきたでしょう?」


「あー………すっっごい、感じられました…………………」


 先ほどまでも飄々とした雰囲気はどこへやら、パトレアの顔色はすっかり土気色だった。

 一方、意気消沈のパトレアを見てエレオスの方はとても上機嫌だ。


「天使様がどの程度人類に協力的かは分かりませんが……我々の失態は吹き飛ばしてくださるといいですね^ ^」


「ソ、ソウデスネー……」


 これも、仕事をとちった自分への天罰か……と、パトレアは心の中で一人自省するのだった。

 


God bless you……(笑)



 なお、ここでいう天使というのは神お抱えの精霊のことを指します。ご存知の通り神はすでに隠れていますので、それと一緒にどっか行っちゃったんですね。でも、実はアンリヨール復活に備えて一つだけ、天使を召喚できる神術を用意してくれていました。

 実は聖域からアンリヨールの気配が消えると自動で議会に通達が行き、そしてその場で天使復活の是非を問う採択が行われる仕組みになってたりします。尚、今日は定例会の日で神官大集合中なので直ぐに復活の儀式まで行けますし、エレオスたちは死んだと見てガン無視されてます。

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