大復活だゾ!
俺が魔法の効果を誤魔化す、というしょうもないハッタリ作戦でエレオスを倒したことにより、主戦力を失った敵は当然瓦解。また、サポート特化のパトレアが俺に張り合えるはずもない。必死の抵抗虚しく、パトレアは五分と持たずに俺の前に跪くこととなった。
自身の手のひらの先に魔力をこめながら、俺は最早立ち上がることすら叶わない敵へと笑いかける。
『で、最後に何か言い残すことは?』
「………責任はあくまで教会なんで、そこんとこよろしく」
『誰への確認だ!』
「ぐえー」
そう言って聖核の簒奪を発動すると、それにボコボコに打ち抜かれたパトレアの体はぐったりと地に倒れ伏した。どうやら気を失ったようである。
『ふう、とりあえずこれで一段落ってところかな。流石にもう起きないだろ」
俺は二人の体が本当に気絶しているのかを確認すると、漸く変声の魔法を解いた。
結構ギリギリの戦いだったので、もう変装用魔術すらそれなりに負担となるのだ。ほんと、あれで決着がついてラッキーだった。
「ま、それもこれもエレオスが戦いに熱くなりがちな奴だったおかげだ。校外学習で会えてなかったらやばかったかもな〜。一瞬でも冷静になられたら、俺がペラペラデメリットを喋るわけないって気づかれるし、激情タイプだってわかってたのはアドだったわ」
俺はそんな独り言を呟きながら、二人の体を持ってきた縄で縛り上げる。(実はこれも一応魔道具の一種だ。適切な結び方をすると非常に小さくなって、持ち運びやすい。本来は小麦をまとめたりとかで使う製品らしい。知らんけど)
なお、縛り上げる理由は特にない。どーせ直ぐに此処は去るのだから、このまま放置でもいいんだが………コイツら(特にエレオス)はなんか変なことしてきそう。そんな感じする。
……うーん、“謂れのない捕縛がエレオス達を襲う───!”とかナレーションが入りそうだ。
「よし、できた!」
キュッ、と俺が引っ張れば、縄は固く二人を締め上げ、その体に赤く縄の痕を残した。
痛そうだなー、かわいそうに。などと他人事のように思いながら、俺は振り返る。
「さて……やっと本日の主役んとこに行けるなぁ」
そういう俺の視線の先には、空中に入った黒い歪みがある。この、凄烈なほどに白を強調してくる部屋に似つかわしくない、汚らしい黒。まるで世界そのものを侵略しようとでもしているかのような、真っ黒な闇。
そう、それはつまり———この聖域に封じられし大逆の悪魔、アンリヨールの封印そのものである。
◇◇◇
実際、アンリヨールの封印の解き方というのは結構単純である。
神話にもあった通り、アンリヨールは封印当時聖女様によってほとんどの力を奪われていたので、封じ込めておくのに然程大きな苦労はなかったらしい。
なんでも、ちょちょいっと聖女様が指を振ると空から巨大な杭が降ってきて、それが悪魔の体を細切れになるまですりつぶしたのだとか。そして、その杭に施された聖なる力が、悪魔の力を未来永劫奪い続ける、と言い伝えられている。
……相変わらず、ぶっ飛んだことをする聖女様である。幼学園で初めて聞いた時は、まさかの封印方(物理)に驚いたものだ。
まあ、その杭の中にはこんな立派な聖域が広がっていたわけなので、昔に思ったほどゴリ押しな方法でもなかったっぽいが。
しかしいずれにせよ重要なのは、この封印はちょちょいっと施された、弱々しい悪魔を閉じ込める程度の力しか持たないものだということ。そして、その本質はあくまで変わらずである、ということだ。
そう、所詮これは「力を奪い続ける」という機能しか持たないポンコツな封印に過ぎないのだ。
そもそも、強力な封印だというのなら、教会本部を上に設置して必死に警備などする必要すらもない。神の力を信じるなら、それこそどんと構えているべきだろう。
だが、教会がそうしないということは、つまりこの封印はその程度のもの、ということなのである。
だから、こうして少し力をかけてやれば────
「パんパカぱーン! ヤッほー人間どモ!!! 私こそがサイっきョーの精霊ニして完全なそんざい、アンりヨール君ダゾ!」
こうして、簡単に復活してくれるのである。
………にしても、なんでこんな性格なんだろうなぁ、コイツ。折角見た目いいのにさぁ、ほんと惜っしいキャラだわぁ……
答えはプロデューサーの趣味。あと絵師の悪ふざけが少々。
因みに、アンリヨール君は無性です。見た目も中性的な人間ですし、声もどっちにも聞こえるところにあります。古事記風にいうなら、「余ってるところ」も「できてないところ」もないです。お人形かな?(竜種は身体が生物によく似た構造をしているので性別もありましたが、基本精霊はそういうのないです。精霊全般に言えますが、あいつら基本的に生殖しません。魔素から自然発生はしますけど)




