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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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ゲート・ガーディアンズ その6


 ガギィィイン!


 何度目かの大きな衝突音が俺の横からなった。そして、その音の出どころを見ればそこには黒い靄。

 奴は一瞬困惑していたが、俺が反撃に出ようと体を動かすとすぐ我に返り、みるみるうちに距離を取った。


 そして少し離れたところでまた停止する。


『……やっぱり、今のも間に合わせてきたな、神術結界。いくら何でも構築早すぎねぇ?』


 どうやら、俺が防御を間に合わせてきたのが意外だったらしい。

 そりゃ確かに、先ほどまでの為体(ていたらく)に比べれば急な上達だろう。何せ、奴との会話の後からすでに四度も攻撃を防いでいるのだから、その驚きは表せるべくもない。


 一方俺は、その様子を見て組み立てていた「予想」を「確信」へと変えた。


「………ふん、解ってみればくだらない、ただの加速に過ぎないか」


 そう俺が小声で言うと、別に聞かせるつもりはなかったのだが、奴は耳ざとくそれを聞きつけ、そしてわらった。


『あれー、気づかれた? すごいなー……って、さっき自分でも零してたっけ』


 ミスミス、と言ってヘニャヘニャ笑う黒。

 矢張り、見た目の不気味さと口調が似合っていない奴である。


 その様子を無視し、俺は奴へと答え合わせをすることにした。


「『針の遅れる時計(テンシュタルディウス)』だったか……アレはやはり、単純に()()()()()()()()()()()魔法か。移動、思考、引いては『物理的な落下速度』まで、自らに関わる全てを加速させる、と言ったところだろう。全く、何とも厄介なものを使うようだ」


 俺は吐き捨てるように言うと、チッ、と舌を鳴らす。

 その様子を見て、何がおかしいのか奴はクスクスと笑い声を立てた。


『クック、そうだろう、面倒だろう面倒だろう。正解だ、エレオス。まあ、厳密には速くなっているんじゃなく、「早く」なっているんだが……ま、関係ない。とにかくそう、俺が使っていたのは攻撃魔術でも何でもない、ただの加速だとも』


 素早さアップってこう言う理屈だったのかって驚いたー、などと、奴はその後意味のわからないことを続けていたが、それは無視する。とにかく、相手から(真実かはともかく)言質を取れたので、俺はひとまずその確信を事実として信じることにした。

 そして、なお不敵に立ち塞がるそれに対して、俺もまた余裕の笑みを見せる。


「そう、お前のそれは加速の魔法。確かに非常に強力な一手だが……ああ、変声、黒煙、攻撃誘導に加速に身体強化……一体、君は今幾つ魔法を重ねているんだか?」


 そう言って俺が笑えば、奴もまた誤魔化すように笑う。

 だが、それは俺の予想が正しいと言うことの確かな裏付けでもあった。


 そう、加速魔法を使うにしては、奴の攻撃は単調過ぎたのだ。


 先程から奴がしてきている攻撃は、よく考えてみれば一切の魔法を使わないものであった。それは、或いは掌底であったり、或いは蹴りであったり、全て物理に頼った攻撃なのである。

 勿論、高速で放たれるそれらはいずれも強力なものではあるのだが、しかし魔法には及ばない。やつほどの使い手ならば、言わずもがなだ。では、奴はなぜ急に魔法の展開をやめたのか?


 それはつまり──────


()()()()()……やっと上限が来てくれたようで何よりだ」


『──────ま、正解だな。いやー、さすがの俺もここが限界だわ。くっそー、あと二、三個は唱えたいんだけどなー』


「ほざけ。三個同時展開できればプロウィザード、四個もできれば宮廷行きだ。五、六も使っておいて贅沢言うな」


『おう、すまんすまん』


 飄々とした返しに連動して、奴の黒靄が蠢いている。

 なんだかそれが、不定型の生物のようにも見えてきた気がした。いや、多分中の人間が動いているのに合わせているだけなんだろうが。


 まあ兎に角、俺が先程の攻撃に対応できたのはそう言うわけなのである。


 敵は、これ以上の魔法行使ができないのだ。勿論それが罠の可能性もあるが……魔法を使えば決着のつくシーンはいくつもあった。それを逃してまで魔法を使わない理由は、俺には思いつかない。だから、きっとこれは真実なんだろう。そしてそれゆえに、攻撃と防御を合わせやすい。


 結局、物理攻撃は接近しなくては使えない。いくら速く動こうとも、どこかで必ず俺へと軌道が曲がる。そうしなければ攻撃が当たらないからだ。


 故に、俺はもう奴の行動を見るのはやめている。

 神術によって徹底的に底上げした動体視力、その全てを相手の軌道を読むことに向けてているのだ。そうすれば、自然と奴の動きがわかるようになる。後は、それに合わせて防御の神術を唱えるだけ、と言うわけだ。


 神術の詠唱スピードも、奴は物理攻撃しかしてこないので、詠唱を大きく省略したものを使おうとも破られることはない。しかも体術の攻撃範囲は常に点なため、防御範囲を絞れば更に破られにくくなる。

 だからといってそれが完璧に対応し切れるわけではないが、幸いあっちには加速の時間制限もある。今測ってみた感じでは、長くても五秒だろうか。それなら、詠唱できなくなる前にあっちの加速が切れる。


 まあそんなわけで、これで対黒靄用防御マニュアルの完成、と言うわけだ。


『…………ふむふむなーるほど、こんなもんか……』


 ボソボソと奴が小声で何かをいっているが、小さいのでよく聞き取れない。何を喋っているのか聞いたが、相手は「何も」と言ってはぐらかすだけだ。

 だが、何にせよ関係ない。俺はここから、ひとまずはこの戦法で防戦を続けるだけである。


 パトレアの帰還は、見たところまだ少し遠そうだ。

 このまま何事もなく戦闘が終わってくれればいいのだが。


・『針の遅れる時計(テンシュタルディウス)

 自らに関係するすべての時間を早回しすることによって、擬似的な超加速(術者視点では時間の遅速化)を行うことを可能とする魔法。なお、その行使には時間制限があり、ずっと続くわけではない。また、『跳躍』の上位互換のように見えるが厳密には色々仕様が違うので全くの別物と考えるべき。



尚、相手の動きがわかっても反応できなきゃ意味がないので、超加速中の相手に合わせて神術の詠唱ができるこの神官はやっぱ頭おかしいです。

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