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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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ゲート・ガーディアンズ その4


『オラオラァ! どうした攻めあぐねてるみたいだなぁ!?』


「うる、さい………くっ、やはり物量戦では神術は不利か!」


 神術式固定変換を使わず、只々圧倒的質量でエレオスを圧倒する俺。

 詠唱が必要な神術はその分対応が遅れ、どうしても後手に回らざるを得ない状況だ。先程までは補助により威力で上回っていたから間に合っていたが、今はパトレア不在。同威力ならより早い方が勝つのは自明の理だった。


『君、思い悩むな煩うな。苦とは欲の見せる幻である!』


 と、エレオスが神術を唱えれば、その力は瞬く間に広がりあたりの魔法を消してしまう。どうやら自らの外敵を消し去ってくれる神術らしい。

 だが、それも無駄なことだ。いくら神に祈ろうと所詮は贋物の奇跡。その全てを実現などできず、いくつかの撃ち漏らしが体に当たり確実にエレオスの体力を削る。


「ぐぅっ………! お前、その打ち方に対して威力が高すぎんだろ!!」


『はぁ? 魔法の強さは術者のイメージがどれ程細かいかで決まる。発動の雑さは関係ないんだ、知らないのか?』


「チッ、知ってるに決まってんだろ──────『苦とは欲の見せる幻である!』


 エレオスが、先程同様再び魔法を打ち消す。

 だが、その詠唱は先のものよりも短い。唱えるだけの時間を確保できていないからだ。俺への攻撃と自らの守護を両立できなくなっているのだ。

 そして、詠唱が短ければ当然威力は落ち、攻撃はさらに激しくなる。そしてさらに詠唱は短くなり──────と、言う様に、エレオスは敗北へと続く負のループに陥ってしまった様だ。


 フフフ、悔しがるエレオスの顔でメシがうまい。

 このままいけば間違いなく勝てる。さっきまで俺がエレオスにされていたことをアイツにやり返しているのだ、抜け出せるわけがない。勝ったな(確信)


 ……と、言えればよかったんだが。


 実際この状況は結構まずい。

 そりゃ確かに? この作戦は絶対に相手の負けに続いているのは確かだけども? 残念ながら、それは時間が無限にあった場合なのだ。


 追い詰め続けていると言うことは、決めきれないと言うことでもある。

 そう、パトレアが戻ってきた瞬間俺の敗北が確定する以上、エレオスとしてはただ耐えるだけでもいいのだ。だとしたら、いつまでもこいつに手間取っている俺の状況は非常によくない。一応適宜パトレア側に魔法を送ってもいるのだが、それでも供給より消費の方が多いのだ。いつか奴は帰ってくる。そうなれば…………いや、考えるのはよそう。


 とにかく! 俺には現状維持に甘んじることなど許されていないのだ。

 なんとしても、なんとしても! 今のうちにこいつを倒すか、アンリヨールの封印を解除せねばならないのだ!!!


『………つってもなぁ、こいつ的確に俺と封印の間に割り込んでくるムーブしてんだよなー……』


 つい、俺はそう零す。


 そうなのだ。俺の状況は相手も百も承知。いつでも離脱できる戦線を未だ抜けず、ここで攻撃を喰らい続けているのが何よりの証拠だ。

 つまり、コイツは態と俺の前に立ち塞がっているのである。


 実際、さっきから俺が移動すると絶対についてくるし………クソウゼー、めっちゃ粘着質だな見廻隊。ほら、なんか目も滅茶苦茶ギラついてるし、練習場でも分かってたけどコイツ絶対性格悪いって。


 魔法の発動を続けながら、俺はぐむむと唸る。


 まあ、当然と言えば当然なのだが、俺と彼とではやはり実践経験が違いすぎるのだ。俺は敵を薙ぎ倒す力は持っているが、どうすれば薙ぎ倒せるかなど知らず、相手は逆に力はなくともどうすれば並び立てるかを熟知している。まあつまるところ、結局これは防衛線だから経験がものを言う戦いになっているということなのである。

 うーん、逃げるだけとか姿隠しの腕ならプロ級なんだが……やっぱ軍人相手に戦うのは無謀であったか。いや、一応アレは神官だけど。


 さあ、どうするか。一応押してはいるのだし、ここは現状維持でも勝てる可能性に賭けるか? いやでもなぁ……


 俺はそう思いながら、とりあえずサッと打ち出す魔法の角度を変えてみる。


 急に方向転換をした闇槍貫く(ティーブネー)たちは、しかしその形を歪に曲げながらも直角にエレオスの腹を抉らんとして駆ける。そして、その黒い槍が彼の血で赤く染まるか、と、そう思われたその刹那、それに気づいたエレオスもまた無理矢理に腰を曲げたかと思うと、殆ど一八○度の角度で脚を振り上げて魔法の槍々を打ち払った。


 しかし、その間に迫っていた他の魔法弾が、無理な体勢変化により無防備となったエレオスに迫る。その攻撃は鋭く、全て喰らえば間違いなく戦闘の続行は不可能だ。

 だがこれもまた彼は焦ることなく、蹴りの途中に唱えていた神術で魔法を消してしまう。

 結局、彼が食らったのは撃ち漏らした弱々しい数撃のみ。さらに、それはあまり継戦力を下げることはない背中などへの攻撃に集中していた。


『……ヒュー、ヤッバー……』


 その対応の軽やかさには、さしもの俺も舌を巻かずにはいられない。


 いやー、これ。確かに押してるけどさ、やっぱ倒すってのは言い過ぎなんじゃないかなー……なんなら、一瞬でも隙を見せたら此方がやられそうなんですけど。


 じとり、と背中に気持ちの悪い汗が出るのを感じる。

 これは、初めての真面目な戦闘という奴への、恐怖心の表れなのだろうか。


 俺は、そこまで考えて大きくため息をついた。


 …………うん、決めた。次の一手を打とう。

 ここでアレを仕留めきれないことが一番の問題だ。パトレアの実力も未だ未知数故に、迷えば敗れるのは必至。多少はリスクがあるが、ここはもっと攻めさせてもらうことにしよう。


 そう、俺は更なる攻勢に出ることを決意する。


 そして、そうと決まれば行動は早かった。俺は、今までの安定した姿勢を崩しゆらりと体をしならせる。

 それは、相手に動きを読ませないための体勢。勿論単なる素人の浅い考えに基づいたものに過ぎない型だが、しかしこの体に残る才能、そして周囲を漂う黒靄が、それを有効なものにしてくれる。

 エレオスは避けながらに俺の異変を察知したようで、神術を紡ぐ声が少しばかり小さくなった。


 その様子を認めると、俺は不敵に笑みを浮かべて、叫んだ。


『さて……こっからはスピード勝負だぜ! 加速しろ、針の遅れる時計(テンシュタルディウス)!!」


 その瞬間、世界が遅くなった。


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