ゲート・ガーディアンズ その1
記念すべき百話目、及びぴったし一周年です!
そして始まる章ボス戦。ぜひ楽しんでってください!
『……なんだ、あんた一人じゃなかったのか』
横から飛んできた光の球をみて、俺はそうこぼした。
すると、その発射地点である立方体の裏からまた一人の男が現れる。
「今の光線はすごいな。魔法の練度がそこらの雑兵とは桁違いだ」
そう言って、男は感心したように笑った。
一方俺は、見覚えのあるその顔に僅かに顔を歪ませる。
『へぇ、その顔……知ってるぜ、あんたエレオスだろう。見廻隊の隊長だったか。クク、わざわざそんなビッグネームを呼んでくれるとはな』
そう、敵の応援は、校外学習で俺たちの引率をやっていたエレオスだった。
あの日と違って敬語がなく、若干此方への敵意によって雰囲気が変わっているが、あの訓練場で漏れていた本性とはなんとなく重なる。顔も似ているし、間違いないだろう。
実際それは当たりだったようで、エレオスはスッと肩をすくめた。
「ああ、知られてたのか。これはこれは光栄なことだ」
『おう、絶対思ってないな』
タハハ、と笑う彼を俺は冷ややかな目で見る。
コイツ、なんとなく思ってたけど矢張り真面目の部類ではないな。
見廻隊の雰囲気がなんとなく知れた気がしたところで、俺は話を戻すことにした。
『まあ、何人いようと問題ない。俺は俺なりのやり方であんたらを片付けたら、悪魔さん解放してさっさとここを去らせてもらうぜ』
俺はそう、一切の疑念を挟むことなく、一切の躊躇いを見せることもなく、それが当然だと言わんばかりに豪語した。
ゴロツキ特有の自分への自信を見せつけたのだ。
それに真っ先に反応したのは、エレオスだ。
「………言うに事欠いて、この俺を問題ないとは言うじゃないか。神術は聖域においては大きく強化を受けるんだ、それこそ魔術師の君じゃ敵わない。そんなことも分からないのか?」
……え、初耳なんだけど。なにそれ。
「宵闇の忠臣の幹部達が負けたのも、何も私の裏切りばかりによるものではありません。彼がたった一人で全員を殲滅したんですよ」
え? e? 幹部をって……やばくね?
「いやいや、パトレアさんのサポートのおかげもあります。そんな大仰に言わないでくださいって!」
何伊達に謙遜してんだよ、十分キモいわ。
うーん、ちょっと……あれ、もしやコイツらめんどくさい?
えと、うーんと、あー……
俺は少しの逡巡を済ませると、柔らかく微笑んで———
『………はっ! 知るかよかかって来いヤァ!!』(ヤケクソ)
五月蝿え竜の試練超えてんだからなんとかなるー!!
『蝕光世界!』
『その導く儘に手を動かされる、さらば御身は守られる』
そして、放たれた二つの魔法弾が激突した。
◇◇◇
基本的に、神術と魔法というのは役割が被っている。
使うのが魔素か否かだったり詠唱の有無があったりと互いにメリットデメリットあるが、逆にいえば究極二つの間に差はない。
要は、術者がどれほど強いのか、が魔法戦では重要になってくるわけで。
『くっ……聖核の簒奪!』
『略:三章五節』
『チッ、また防がれた』
純粋に威力強化が入る相手の方が、力としては上手なのだ。
(クソ、略式詠唱とか余裕かましやがって腹立つなぁ!)
俺は詠唱しながら心の中でそう独りごつ。
実際、舐めプされていると思うとイライラくるのだ。まあ、神術は単純に詠唱が長いので省くという理由もあるのだろうが、それにしたってそんなもので捌かれるのは心外だ。もっとちゃんとやってほしい。
俺の魔法、これでも竜の玉で強化入ってるんですけどね。なんで的確に攻撃の軌道上に神術展開できるんですかね?
あと、地味に後ろでコソコソしているパトレアがうざい。
あいつ戦闘だとなんもしない癖に、地味にバフ魔法持ってるみたいで、時々出てきてはエレオスの強化をして帰っていくのだ。
視界の端にちょろちょろして気が散るし、技を避けるのも上手いので攻撃も当たらない。お手本のようなバッファーである。
ちくせう、流石に長年戦闘やってきてる奴らだけあって、どうやら実力は確かなものらしい。俺は宵闇連中が使いそうな魔法だけしか使えない状況とはいえ、まさか俺が押されることになるとは。
コイツらは、魔法の腕自体は俺に圧倒的に劣るものの、俺のやりにくい間合いで自分のやりやすいことをやり続けている、経験に物を言わせているタイプだ。この手のやつは隙という隙がないし、一芸しか持たないが、それをどう活かすかを知っている。つまり、非常に厄介だ。
なんなら俺も、ここがMMOだったら普通にパーティー申請してる。伊達にここの警備を二人任せにされていないらしい。
俺は身体強化の魔法で、宙に浮く立方体を時に壁に、時に足場にしながら縦横無尽に駆け回る。彼方に飛べばこちら、此方に飛べば彼方と、天も地もなくそれらの間を縫って移動する。
だが、相手も同様にして此方から的確に目線を切り、俺の攻撃を交わし続ける。
そのスピードは一種爽快なパルクールのようで、何も知らない人は単なるサーカスにみえたかもしれない。……まあ、実際はただの戦闘ですけど。
『蝕光世界!』
「っと、……なるほど、この魔法は全方位に等間隔の魔法弾があるだけか。読めてきたな」
俺が放った魔法を、恰も軌道がわかっていたかのように躱すエレオス。どうやら魔法ごとの特徴を覚え出しているらしい。
(……く、使い過ぎて流石にこの魔法は対応してきたな)
当然だが、何度も繰り返すと魔法は対応されてしまう。神術式魔力固定変換は、技名を必ず叫ぶので通常よりパターン化しやすいのもそれを助けているようだ。
そして、魔法ごとの対応が完全に形式化されると、次第に同じことの繰り返しに陥ってしまう。俺はそんな膠着状態に痺れを切らし、また別の魔法で相手を攻めることにした。
『闇槍貫く!』
その瞬間、目に見えないほどの速さで細い一本の魔法の槍がエレオスの方へと飛び出した。
その速度は速く、神術のスピードでは間に合わない…………はずなのだが。
「危ない! エレオスさん!!」
そうパトレアが言った時には、エレオスは詠唱を終え、彼の手には俺の槍とは正反対の、光り輝く槍が用意されていて。
暗黒の魔法槍と神々しさを覚える光の槍は、それぞれが敵めがけて空を舞い、そして衝突し、消えていった。
『くそ、詠唱破棄かよ、ほんとあいつバフ厄介だな』
「あ、褒めまてくれました? どうもですー」
『煽ってくんじゃねぇ!』
「うわー怖いー!」
く、しっかりこっちの気を紛らわしてくるなぁアイツ。
刻一刻と過ぎていく時間に焦らされながら、俺は必死に二人の動きに対応していた。
実際声と靄で二重に魔法展開してるのが結構効いてる。身体強化できる分が減ってるわけだからね。
竜の時は氷さえあれば敵が弱ったけど、今回そうも行かないから……
あと、神術の解説や強化される理由はもう少し後でやります。ここではまだ早い。
一応上にも書きましたが、今日この回でもって連載一周年です。(こらそこ、二ヶ月休載してただろとかいうな!)一周年がピッタリ百話かつ章のボスになってしまいました。なお、偶然です。
最近読み始めた方も、昔から読んでくださってる方も、あるいは遥か未来の読者な方も、ここまで読んでいただきありがとうございます。随分ながくなっているこの物語も、実はいよいよ終盤になってきていたりするので是非最後までお付き合いいただけると幸いです。
グリマニア達の物語を、その温かい目で見守り続けてやってください。
しゅー
高評価とブックマークもよかったらしていってくださいね。




