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【義妹SIDE】帝国のメイドとして使われることに

「ぐふっふ! これはよい買い物ができたなっ!」


 男は大層喜んでいた。何でもこの帝国ビスマルクの帝王らしい。要するに王様だ。恰幅のいい軍人風の男だ。


 やはり武力でのしあがていった国なのでどこかしら血の匂いのする男であった。


「は、離してくださいませ! やめてくださいませっ!」


「黙ってろ奴隷! 貴様はわしに買われたのだ! 大人しくせいっ!」


「ひ、ひいっ!」


 帝王に怒鳴られ、ディアンナは押し黙りました。流石に風格があります。


「これはリノアも喜ぶぞっ! ぐふふっ!」


「リノア……?」


 ディアンナは首を傾げる。大きな城につくなり、ディアンナは使用人に渡されました。大きな城とはいえ、石造りの城ではなく鋼鉄で作られた要塞のような城です。 


「帝王、彼女は一体?」


 メイドが首を傾げます。


「ああ。奴隷市場で競り落とした奴隷だ。リノアの新しい専属メイドにしようと思てな」


「はぁ……左様ですか」


「メイド服に着替えさせろ。わしがリノアの部屋へ連れて行くのだ」


「わ、わかりました」


 こうしてディアンアはリノアという少女の部屋に連れていかれるのでした。リノアというのはどうやらこの帝王の娘のようです。


「またまたえらい事になってしまいましたわ」


 ディアンナは苦悩しましたが己の運命にただただ流されるだけでした。


 ◇


「ぐっふっふ! これはリノアが喜ぶぞっ! リノア、新しい専属メイドだぞっ!」


 メイド服に着替えさせられたディアンナは部屋に連れていかれる。新しいペットを拾ってきたくらいの気安さで。実際その程度にしか思わえていないようだ。


「お父様! 寂しかったですわ!」


 豪華な部屋にいたのは美しい少女でした。確かに美しいのですが、どこか我儘そうで目つきがきつそうです。彼女は情熱的な赤いドレスに身を纏っていました。


 ディアンナは内心呟いてしまいます。


(確かに見た目は美しいですが、傲慢そうですし、性格の悪そうな女ですわ)


 そう思っていました。どの口が言っているのでしょうか? 言える立場にはないと思うのですが。

 

 流石に言葉にこそしませんでした。言葉にしたら最悪殺されかねません。


「まあ……お父様、素敵なメイドね。可愛いわ」


「そうだろう? そうだろう? お前が喜ぶと思って奴隷市場から買ってきたんだぞ。好きに使い潰して構わないからな?」


「ええ。好きに使い潰しますわ、お父様」


 使い潰す、とても人間相手に使う言葉ではなかった。どうやら二人はディアンナを人間だとは思っていないらしい。奴隷の立場とはこの国ではそのようなものなのだろう。


「それでお父様。リノア、新しいメイドも欲しかったんですが。もっと欲しいものがありますの」


 リノアは父である帝王に頼んでくる。


「ん? なんだ? 言ってみろ? お前の欲しいものなら何でも手に入れてみせようぞ」


「ルンデブルグの王子のエル王子はとても美しい容姿をして、才覚に溢れたお方だというではありませぬか? その弟君のレオ王子もです。私はそのお二人を婿として迎え入れたいのです」


 リノアはそう語り掛けた。


「ほう……王国の王子をリノアはご所望か。がっはっは! わかったぞ! すぐに手に入れてみせようぞっ!」


(そ、そんな、あっさり……ですの!)


 自分が決して手に入らないと思っていた王子二人をまるで玩具を買うかのような扱いで。


このリノアという少女。帝王の娘ということは王女という事なのだろうが。天と地ほどの境遇格差があった。


奴隷まで身を落とした自分と強大な力を持つ帝国の王女。二人の間には物凄い権力格差があった。


そんな二人が何の運命が一緒になってしまった。とはいえ、扱いは主人とペット、いやそれ以下のものではあるが。


「では早速ルンデブルグに駆け込むとしようではないかっ! リノア! 使者を出すからその王子二人を貰いに行くがよい!」


「ふふっ! お父様! 愉しみですわ! 美しい王子が二人とも私のものになるのですねっ!」


 リノアは笑っていた。その目はディアンナからしても恐ろしい目あった。ディアンナだけではない。リノアは人を完全に物のようにしか見ていないのである。王子二人も例外ではない。


彼女はどこか人として欠落しているのだ。もしかしたら自分が新しいメイドとして雇われたのも。


 恐ろしい想像が脳裏に駆け巡ってくる。ディアンナは頭を振ってその想像をかき消す。


 ディアンナにできる事は何もない。ただただ運命に流され、起こる出来事を眺める観測者になる事しかできなかったのである。


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