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レオ王子に突然キスをされてしまいます

【第二王子レオ視点】


 日の光が差し込んできた。チュンチュンチュン。小鳥のさえずりが聞こえてくる。


「うっ……俺は」


 レオは目を覚まします。体には包帯が巻かれていた。


「俺は……そうだ。あの時軍事演習の時俺は、馬に吹き飛ばされて、それで」


 最後に覚えている光景。それは杭に落ちる自分の姿。


「すーっ……すーっ……すーっ」


 規則正しい寝息が聞こえてきた。ベッドに顔を伏せて眠っていたのは例の彼女であった。


「こいつは……あの地味女……俺をずっと看病してくれていたのか」


「はい。その通りです。レオ王子」


「お前は……ヴィンセント」


 レオの前にヴィンセントが姿を現す。


「彼女は付きっ切りであなたを看病していたのです。容態が落ち着いたから使用人が代わるといったのですが、容態が急変するかもしれないと一晩中看病を代わりませんでした。その結果、朝には疲れ果てて眠ってしまっていたのです」


「俺は……この女に助けられたのか」


「ええ。その通りです。ですからどうか命の恩人を『地味女』など呼ばない事です。いくら王子でもバチが当たりますよ。それではしばらく彼女の事はそのまま眠らせてあげてください。王子の看病で余程疲れているようですから」


 そういってヴィンセントは去っていく。


「俺は……間違っていたのかもしれねぇな。兄貴の事も、この女の事も」


「すーっ……すーっ……すーっ」


 規則正しい寝息。愛らしく無邪気な寝顔にレオは微笑を浮かべた。


「ったく、この地味女、そんな寝方してると風邪ひくぞ」


 レオは羽織ものをかける。


「って、また『地味女』って言っちまったな。アイリスだったか」


 レオは笑った。


 ◇


「うっ……ううっ……ここは。私、眠っていたのですか」


 私はどうやらレオの看病をしていた時に眠むってしまっていたようです。私は目を覚まします。


「よっ。おはようアイリス」


 レオ王子が私にそう挨拶をしてきます。


「レオ王子……体の具合はよくなったんですか?」


「ああ。見ての通りだ。ピンピンしてるぜ」


 レオは無理に体を動かそうしていました。元気だというアピールがしたいようです。


「よかった。ですが無理をしないでください。それだけの重傷だったのですから」


「アイリス、ありがとうな。あれだけこっぴどく地味だのなんだの言っていた俺を助けてくれて、本当感謝しているよ」


「何を言っているんですか。人の命を助けるのは薬師として当然の事です。それに少し悪口言われたくらい平気です。そういう事は言われ慣れてますから。逆に久しぶりだったんで新鮮なくらいでした」


 私は笑みを浮かべます。ストレス耐性ができた事に関してだけは義妹と継母に感謝して良いところかもしれません。


「それとすまなかったな。俺達とお前じゃ立場が違うとかいろいろ、偉そうにひどい事言って」


「何を言っているんですか。レオ様は王子ですし。私はただの雇われの薬師です。使用人ではないかもしれませんが、立場の違いはあって当然ですよ」


「立場の違いか……確かに兄貴の気持ちが少しわかってきた気がするよ」


「え? 何がわかったんですか?」


「アイリス」


「えっ!? きゃっ!?」


 レオ王子はいきなり私を抱きしめてきました。な、なんでしょうか。命が救われてそんなに嬉しかったんでしょうか。それにしてもいきなりの事なのでとてもびっくりしてしまいます。さらには心臓もとてもドキドキとしてしまうのです。


 無理もありません。レオもエルとはタイプは違いますが、とびっきり素敵な王子様である事に変わりはないのですから。


「な、何をするんですか、レオ王子。んっ、んんっ!」


 驚きました。レオ王子はいきなり私の唇に――自分の唇を重ねてきたのです。つまりはキスなのです。キス。私は今までキスをした事がありませんでした。つまりはファーストキスです。あまりにいきなりの事すぎてびっくりでした。


 私の頭の中が真っ白になります。レオ王子は唇を離しました。


「えっ……な、何をいきなり……するんですか?」


「兄貴になんてゆずらねぇ。アイリス。俺の女になれ」


 そう突然に告白されてしまいます。


「えっ!? どういう事ですか!? レオ王子」


「だから、何度も言わせんな。恥ずかしいんだから。俺の女になれ。俺のモノになれって言ってんだよ」


「それは妾とか……体だけの都合のいい女になれって事ですか?」


「違うっての。そういうのじゃない。だからアイリス、一度しか言わないからよく聞けよ」


 レオ王子は告げてきます。


「結婚して俺の嫁になれって言ってるんだ」


 どうやら間違いないです。これは間違いなく求婚です。


「えっ、ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 私は思わず叫びました。王宮中に響き渡りかねないほどの二度目の絶叫です。叫ばざるを得なかったのです。だってまさか人生で王子様から二度も求婚されるとは思ってもみなかったのですから。


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