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英雄の帰還

「凄いな。たった半日でエリバンまで戻ってきたぞ」


 エクスに命じて天空城を動かした俺は、画面に映るエリバンの城下町を見ると感動して声をだした。


「この移動力一つとっても世界をひっくり返せる程の脅威ね。エルト君ますます注目されることになるわよ」


 アリスが冷や汗を掻きながらそんなことを告げてきた。


 道中も俺の身を案じているような態度で今後起こり得る各国の動きを教えてくれたのだが……。


「いざとなったら逃げるとするか」


 その内容の重さに気落ちしていたのだが、空を駆けるこの城に乗ったおかげで吹っ切れた。


「それにしても移動してるのにほとんど揺れを感じなかったわね」


『それはシールドの展開と重力制御を完璧に行っているからです』


 セレナの呟きにエクスが答える。


「見てエルト。城下町があんなに小さいわよ。空の上から見える景色って凄いよね」


 アリシアが俺の腕を引っ張ると映像の一つに視線を向ける。


 この天空城には映像投影水晶がいたるところに設置されていて、水晶が映した映像をこの部屋で映すことができるのだ。


『映像を拡大することができますが、実行しましょうか?』


「ああ、やってくれ」


 エクスの提案に俺が頷くと画面の一つの映像が拡大されていく。

 エリバン王都を映していた映像は城を映し、城を映した映像は部屋を映す。


 画面には高い衣装を身にまとった壮年の男が映っていて驚いた顔でこちらを見ている。


「凄いわね、これがあれば各国をスパイし放題よ」


「その前に近づいた時点でバレるんじゃないか?」


 アリスの言葉に俺はつっこみを入れる。水晶が次から次に街の様子を映しているのだが、住人達は例外なく大口を開けるとこちらを指差していた。


「天空城に乗ったなんて自慢にできるわよね」


 隣ではアリシアが嬉しそうに呟いていた。


「それよりエルト君。この状況あまりよくないわよ」


 アリスの言葉に俺は首を傾げる。


「エリバン王国にしてみたら突然領土上空に正体不明の物体が現れたのよ。最悪攻撃されるかも」


 確かにアリスの言う通り。もし逆の立場なら不安に思うことだろう。


「マリー。いるか?」


「はいなのです」


 俺が呼び出すとマリーが中空に現れる。


「宰相さんに伝言を頼む。俺たちが戻ってきたことと、この城は安全だと」


「わかったのです。行ってくるのですよ」


 マリーは頷くとエリバン城へと飛んで行った。


「エクス。この城は降りられるのか?」


 いつまでも浮かんでもいられない。俺は地上に降りられるか聞いてみた。


『問題ありません。このまま降りてよろしいでしょうか?』


 下を見ると街道が見える。他にも民家がちらほら点在しているのを確認すると。


「いや、近くの平原に降りてくれ」


 多少王都から離れても何もない場所の方が良いと判断した。


『かしこまりました。着地します』


「きゃっ!」


 セレナの悲鳴が聞こえる。


 エクスの言葉とともに揺れが発生した。どうやら上下の動きに対しては揺れるらしい。


 それからしばらくすると、俺達は平原へと降りるのだった。






 降りてから数時間経ってエリバン国王と宰相さんが現れる。

 マリーに伝言を頼んだところ「こちらから出向く」と返事があったからだ。


 二人の背後には騎士団の他にも野次馬なのか様々な人間が立っていた。


「ず、随分と早い戻りだったようだな」


「ええ、すべてはこの城のお蔭ですね」


 元々戻る予定はあと二週間後だったのだが、天空城の飛行速度が素晴らしくあっという間に戻ってこれた。


「それより、これしばらく置いておいても大丈夫でしょうか?」


 平原の少し上空に浮かんでいる天空城を見る。

 出入りに関しては転移魔法陣に乗ると直接制御室へと戻ることができる。


 入城にはエクスに発行してもらった入城証が必要で、これがなければ転移魔法陣に乗っても制御室に転移することはできない。


 上空にはイビルビームでしか破壊実績がないバリアが張られているので侵入される心配はないと断言できる。


 防犯面が保障されているので、俺としてはここに置いておきたい。宰相さんの返事は……。


「そ、それは構わぬが……」


 宰相さんが額に汗を流しながらそう答える。彼にはこれが何であるかマリーに説明させている。


「その前にエルト。一つ確認させてほしいのだが……」


 エリバン国王がそう言うとヒューゴ司教が真実のオーブを持って前に出てくる。

 額に大量の汗を浮かべ頬が痩せこけている。どうやらあまり体調が良くなさそうなので病気なら休んでいて欲しい。


「なんでも聞いてください」


 俺が頷くとエリバン国王は険しい顔をしながら質問をした。


「それは何かね?」


 エリバン国王が天空城を指差した。周囲の人間達も固唾をのんで見守っている。エリバン国王に質問された俺は一度頷くと周囲を見渡しその場の全員に聞こえるように言った。


「これは失われた魔導装置の天空城です」


「「「「「なっ!!!!」」」」」


「……………………真……実……です」


 全員が驚く中、ヒューゴ司教の疲れ果てたような細い声が風に流されるのだった。


 

プチ報告


この作品と直接関係はありませんが、現在連載している他の作品


『生産スキルがカンストしてS級レアアイテムも作れるけど冒険者アパートの管理人をしています』


が書籍になることが決定しました。


まだ読んだことが無い方はこの機会に是非読んでみて貰えると嬉しいです

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― 新着の感想 ―
[一言] …使わない時は天空城ストックしておけばいいんじゃないか?
[一言] 主人公は元々ただの村人だったから考えが足らないんだろうけど、隠しておくべきでしたね。これ下手したらこの城を巡って戦争になる。 自国か他国かは分からないけど確実に「国に献上せよ」って言ってくる…
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