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クズデーモン

「おのれっ! 精霊王だとっ! 貴様がその力を報告しておれば俺だって逃げなかったのだっ! どうせ精霊王の力でアークデーモンを撃退しただけの分際でっ! 偉そうにいいやがって!」


 騎士によって絨毯に頭を押し付けられたクズミゴは呪いでも掛けそうな顔で俺を睨みつけてくる。


「うるさいのです。御主人さまは最強なのですよ。お前みたいな人間に文句を言われる筋合いはないのですよ」


 マリーが俺の代わりに言い返す。俺の傍にくると振り返りアッカンベーをした。


「ぐわわわわっ! く、クソガキがあああああああっ!」


 マリーの態度に真っ赤になって怒るクズミゴ。


「まあ、なんにせよこれで全ての問題は解決ね」


 肩を竦めながら近寄ってくる女。


「アリシア。この人は?」


 妙に訳知り顔なので俺はこの女がどういった人物なのか聞いてみる。


「イルクーツ王国の王女アリス様だよ」


「えっ? 嘘だろ? だって……」


 先日の泉での騒動を思い出す。

 俺はアリス様を相手に剣を振るい打ち負かした。それどころか水に濡れて服が透けていたので見てはいけない恰好まで見てしまったのだ。


「エルト君。後でちょっと話いいかしら?」


「ああ……わかった」


 満面の笑みを浮かべるアリス様。何の因果でこうなったのだろうか?


「アリス様。エルトと話すのは私が先ですよ。やっと出会えたのに……もう放さないんだから」


 アリシアはそう言うと俺の背中に手を回し強く抱きしめてきた。アリシアの頭を見下ろしながら懐かしい匂いにほっとしていると…………。


「御主人さま気を付けるのですっ!」


「えっ?」


 前の方から良くないオーラが漂ってくる。


「なんだこいつっ!」


「おいっ! 抵抗するなっ!」


「く、黒いオーラが噴出してきて……ぐああああっ!」


 騎士たちが吹き飛ばされ、クズミゴが立ち上がる。


「ふふふ、なぜだか分からぬが力が湧いてくる。俺の怒りに呼応するように力が……」


「ま、不味いのですっ! デーモン化が始まったのですよっ!」


 マリーの緊迫した声がする。


「ごごかかかっ! 憎い憎いぞエルトよっ! ぐふふふふっがががアアアアアアアアアッ!」


 クズミゴがのけ反るとなにやら身体に変化が生じた。内側からぼこぼこと何かを突き破ろうとしている。


「デーモン化だと? それは一体なんだ?」


「高位のデーモンは邪悪なオーラを持っているのですよ。このオーラを浴びた中で素質がある人間はデーモンに生まれ変わることがあるのです」


「なんと……するとクズミゴは……?」


 国の偉い人が驚愕の表情を浮かべる。


「今まさにデーモンに変化しているのですよ」


 周囲の人間が剣を握りしめ警戒する。

 俺はアリシアを背中に避難させると……。


「アリシアを頼む」


 アリス様に託す。


「や、やだぁっ! エルトもう行かないでよっ!」


 心配そうに手を伸ばしてくるアリシア。思えば彼女はいつもそうやって俺を守ろうとしてくれたな。

 俺は苦笑を浮かべると……。


「大丈夫だ。俺だっていつまでもアリシアに守られるわけにはいかない。絶対に無事で帰ってくるからな」


「アリシア、彼は強いから大丈夫よ。信じて待ちましょう」


 俺とアリス様の間を視線が行き来すると……。


「わかった。信じてるからっ!」





「クククク。ウマレカワッタヨウダ。イイキブンダゾエルト」


 変化が終わったようで、目の前にはデーモン化したクズミゴがいた。


「ハイデーモンなのですよ。普通の人間の邪悪さならレッサーデーモンかデーモンあたりから始まるはずなのです。どうやらクズミゴの邪悪さは中々の才能だったのです」


「そんな才能で嬉しいのだろうか?」


 剣を構えると俺は疑問を浮かべる。


「ククククク。オロカナキサマニインドウヲワタシテヤル」


 クズミゴが一歩ずつ近づいてくる。


「き、君っ! 危ないから離れろっ!」


「相手はハイデーモンだぞっ! 皆で一斉にかからなければだめだっ!」


 焦りを浮かべる騎士たち。


「ムダダ。オレヲワラッタムクイ。ミンナコロス」


 既に知性が飛んでしまっているのか、クズミゴハイデーモンは俺への恨みだけで動いているようだ。


「だめだっ! 魔法隊が間に合わない。接敵するぞっ!」


 ハイデーモンの強さは騎士数人相当。身体の半分は魔力で出来ているので魔法が有効。そんな情報を思い出しつつ……。


「そうか、それは困るから――」


「「「「「はっ?」」」」」


 その場の全員の驚き声とともに……。


「――お前はもう消えてくれ」


 俺は神剣ボルムンクを高速で何十回も振り抜くと。



「アヘェ?」


 クズミゴハイデーモンはバラバラになって崩れ落ちるのだった。


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