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誰でもいいから出てきてくれ

「さてようやく外に出られるな」


 アリシアの代わりに魔法陣に突入した時は生きて戻ることは考えなかった。だが、こうして邪神の城から脱出できたことで徐々に生き延びた実感がわいてくる。


「取り敢えず……この鉄柵だけど開き方がわからないんだよな」


 見たところ鍵穴が無い。柵が地面に食い込んでいるところをみるともしかすると何かをいじれば上がるのかもしれないが……。


「とりあえず、ここから出るのはあきらめるか」


 俺は鉄柵からいったん離れると鉄柵の横の壁に木箱を積み重ねてよじ登った。


「無理して他の出口を探すぐらいならこの方が早いしな」


 ステータスが上昇しているのでこのぐらいの高さなら飛び降りられる。壁の反対側から降りようとするのだが……。


「なんだこれ? 見えない壁がある?」


 何かに阻まれて前に進めない。触れてみると硬い感触がした。どうやら見えないバリアが存在するようだ。


「とりあえず神剣ボルムンクで斬ってみるか」


 剣を取り出し鞘から抜き放つ。俺はそれを大きく構えると全力で振り下ろした。


 ——ギイーーーーーーーーーーーンッ――


 金属がぶつかり合う音がする。


「かたっ!?」


 手に衝撃が伝わってきて痺れる。どうやらこのバリアは神剣では破れないようだ。


「もしかして邪神が死んでもこのバリアは永久稼働しているとか?」


 どうやら邪神さんの家のセキュリティは万全のようだ。手持ちの中で最も攻撃力が高い剣で駄目なら何で叩いても同じだろう。


 壁の上で俺はアゴに手を当てて考える。衝撃があるということは実体があるということ。問題はその硬さなのだ。それをどうにかすれば……。


「そうか、これならいけるか!」


 思いついたら行動あるのみ。俺は、ストックしてあったイビルビームを発動する。

 すると不可視のバリアにぶつかり『ジュバッ』と音がした。どうやら無事にバリアを貫いたようで、そのままイビルビームを動かして人が通れるように穴を広げる。


「よし、なんとか抜けられたな」


 後ろを振り返ると不可視のバリアを叩いてみる。無事にあちら側へと出られた。


「ん?」


 目の前に何やら歪みのようなものが見える。ちょうどイビルビームを当てたあたりだ。


「なるほど、自動で修復するのか」


 放っておけば入り口としてまた使えるのではないかと思ったのだが、再び入るにはイビルビームを1つ失う必要があるらしい。


 そのうちまた来ることもあるかもしれないが、その時はその時。

 こうして俺は邪神の城をあとにするのだった。






「とりあえずここがどこなのか知ることが重要だな」


 森の中を歩く。邪神の城をでてから数時間ひたすら真っすぐ進んできた。


「村でもあれば誰かに聞くことができるんだけどな…………」


 だが、どれだけ歩いても人の気配がない。人間が足を踏み入れている場所ならそれなりに道ができているはずなのだが、そのような形跡が一切ない。


 もしかすると邪神の城は孤島にあり、人間は存在していない可能性もあるのではないか?


「こうなったら何でもいいから姿を見せてくれないか!」


 先程から小動物すら見当たらない。俺は何でもよいので動く物に会いたいと希望を口にするのだが…………。


 ——ガサガサガサガサガサガサガサガサガサ――


 何やら音がした。俺は慌ててそちらへと向かう。そして森を抜けたその先に広間のような場所があり、そこで目にしたのは――


「AAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!」


 血のように真っ赤な身体に数メートルを超す巨体。額から伸びたツノ。右手に持っている重そうな棍棒。


「なんでもいいとは言ったけど、こういうのは望んでいないんだが」


 俺は目の前のモンスターにゲンナリするのだった。





「えっと、念のために聞くけど見逃してくれたりしないか?」


 人から聞いた話の中から目の前の巨人に最も近いのはオーガだろう。

 だが、明らかに目の前の巨人はオーガよりも一回りは大きく肌の色もおかしい。


「AEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」


「何を言っているのかはわからないが見逃す気がないということはわかった」


 何せあちらさんは棍棒を振り上げている。俺を叩き潰す気満々だ。


「せっかく生贄から生き延びたのにこんなところで死んでたまるか」


 初めて会う人型モンスターなのだ。本来なら恐怖して動けないところかもしれないが、目の前のモンスターのプレッシャーは邪神に比べれば大したことはない。


 今ならまだ距離がある。森に逃げれば振り切れる可能性は高い。そう考えていたのだが……。


「ん。あれは……?」


 オーガの後ろに1人の人間を発見した。

 フードを被っているので姿までは解らないが、体格からして若い女性のようだ。


「流石に……見殺しには出来ないよな」


 どうやら気絶しているようだが、このまま俺が逃げたらオーガの餌食だ。

 少なくともこいつを引き付けて逃がしてやる必要があるだろう。


「仕方ない。相手をしてやる」


 俺はそう奮い立たせると神剣を抜き放つとオーガへと向かっていった。

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