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Sランク認定モンスター

「ラッセルさん!」


 俺とセレナは慌ててベースへと戻るとラッセルさんを探す。


「どうしたエルト?」


「今すぐここから避難してくれ!」


 俺は簡潔に用件を述べた。


「あん? 避難も何も、今からここで待機するところだろうが?」


 怪訝な顔をするラッセルさん。無理もない。

 事情を知らなければ俺が豹変したようにしか見えないだろう。


「エルトの言う通りよ。あまり説明をしている時間はないの。お願いだから信じて」


「なんだ? また騒ぎを起こしているのか?」


 クズミゴが騒ぎを駆けつけて寄ってきた。


「聞いてくれ、今からここに強力なモンスターがやってくる」


「なんだと? 何故そんなことが貴様にわかるんだ?」


 クズミゴは胡散臭い者を見るような目を俺に向けた。


「私の精霊が教えてくれたのよ。急がないと手遅れになるわ」


 次第に周囲に人が集まってくる。俺たちが騒いだからか注目を集めたようだ。


 ラッセルさんはアゴに手をあてると俺たちをみていた。どうするか悩んでいるように見える。ラッセルさんもただ事ではないと察したようなのだが…………。


「ふざけるなっ! 本当にそんなモンスターが来るかわからないだろうがっ! 大体、貴様らの仕事はこの迷いの森の調査だ。その調査を妨害するようなモンスターなんぞ倒せばよかろう。この場の最高責任者は私だ! 文句がある奴は前にでろっ!」


 この場で決定権を持っているのは雇い主である国の代理人クズミゴだ。


「あんたねぇ……今の状況が分ってるの? そう簡単に倒せる相手なら私たちもこうして…………」


「セレナ」


「何よエルト!」


 俺はセレナを黙らせると空を見上げる。そして皆の気を引くと視線を誘導して言った。


「もう手遅れだ」






 目の前には黒い肌に翼をはばたかせた赤い瞳のアークデーモンが飛んでいる。


「こ、こんな……ばかな……」


 クズミゴが腰を抜かしている。そのアークデーモンは強烈な瘴気を放ち、それに触れた者は恐怖で身体を崩れさせる。


「ぐふふふ、愚かな人間どもがおるわおるわ」


 赤い瞳を輝かせるとアークデーモンは俺たちを見渡す。そして…………。


「我はアークデーモン。デーモンロード直轄の十三魔将の1人だ」


「ああああ、アークデーモンだと!?」


 クズミゴが取り乱すと歯をカチカチさせて後ずさった。


「人間どもよ。貴様らの中で1番偉い奴は誰だ?」


 俺たちの視線がクズミゴへと向かう。


「ん。貴様か? たいして強くなさそうだが?」


「ひいっ!」


 アークデーモンの視線を受けたクズミゴ。恐怖に身体を震わせている。


「俺がこの部隊を纏めている代表だ」


 そんなクズミゴを庇ったのか、ラッセルさんがアークデーモンの質問に答えた。


「ほぅ、貴様がそうか?」


 元々小物に興味が無かったのか、アークデーモンはラッセルさんを見ると、


「俺達は迷いの森の様子がおかしいから調査に入ってきた。もしかするとあんたが何かしたのかい?」


 ラッセルさんはアークデーモンに物おじすることなく質問をする。


「いかにも。この度の騒動は我が起こしたものだ」


「一体何のためにそんなことを?」


 警戒しつついつでも戦えるように周囲に視線を送る。

 皆はラッセルさんが話をしている間に防具を身に着け戦闘をするための準備を整えた。


「奪われた物を取り返す為だ」


「その奪われた物というのは?」


「虹色ニンジンだよ。ステータスの実と同時に食べる事でその効果を倍にしてくれるステータスアップ食材だ」


 俺はセレナと顔を見合わせる。どうやらセレナもそんな効果は知らなかったらしい。


「生憎心当たりがねえな」


「そうか」


「だが、それを突き止めて返せばこの場は引いてくれるのかい?」


 ラッセルさんはアークデーモンを相手に交渉を続けていた。

 この場の全員の命を預かる者として弱腰になれないのだ。


 そんなラッセルさんの気持ちとは裏腹にアークデーモンは結論を出す。


「いや、どちらにせよ殺すつもりだったからな。貴様ら人間なんぞこの世界の害。滅ぼさぬという選択肢はないわっ!」


「くっ! 仕方ねえやってやる!」


 ラッセルさんの言葉を合図に皆が武器を構える。


「ひっ! わ、私は無関係だあああああああああーーーー」


 その一瞬でクズミゴが身体を起こして慌てて森の方へと走り去っていった。


「あ、あいつっ! 本当に最低っ!」


 セレナが軽蔑の言葉を投げかけると…………。


「皆、相手はSランク認定されているアークデーモンだ。俺が時間を稼ぐから他のグループに救援を要請してくれえええええ」


 その言葉を皮切りに戦闘が開始されるのだった。

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