アークデーモン襲来
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「人間共が罠にかかったようだな……」
森の奥にて。アークデーモンは赤い眼を光らせた。
「途中で魔力の反応が途絶えてしまったのは不思議だったが……」
虹色ニンジンを採った人間を探していたのだが、街が近づくとその反応が消えてしまった。
盗んだ本人が追っ手を撒くためにそこでロストしたのか、とにかく手掛かりが無くなったのだ。
「その後、人間の国で虹色ニンジンが売っていた」
エルトが商人たちに虹色ニンジンを売ったため、その商人たちが王国の各街へと向かいそこで虹色ニンジンを売りさばいたのだ。
「お陰でどこに虹色ニンジンが運ばれたかわからなかった」
なのでアークデーモンは次の手を打った。
「モンスターを煽動すれば迷いの森に入ってくる。虹色ニンジンを盗んだ奴かは分からぬが…………」
締め上げてみれば何か情報が得られるだろう。
「このままでは済まさぬからな。人間どもめ」
アークデーモンの呪詛が闇に溶けていくのだった……。
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「よし、皆。今日はここで野宿をする。1日滞在して問題が無ければ引き返していくからそのつもりでいてくれ」
調査に入ってから3日目。ラッセルさんは疲労を濃く、俺たちにそう伝えた。
「ふんっ! ようやく着いたか」
クズミゴが悪態をつく。こいつはここまでの道程で散々文句を垂れていた。「疲れた」「飯がまずい」「もっと敬え」。
こいつがわがままを言うたびにラッセルさんたち中央のパーティーが相手をさせられた。正直な話、モンスターとの戦闘の方が全然楽だっただろう。
「エルト、一緒に休みましょう」
セレナが声を掛けてくる。どうやらクズミゴから少しでも離れてしまいたいようだ。
「ああ、そうだな」
俺とセレナは周囲を見回りするラッセルさんに伝えるとその場を離れた。
「食べるか?」
2人きりになったところで俺は虹色ニンジンをとりだす。
俺の能力は秘密にしているので人気のない場所でないと手持ちの食材を取り出せないのだ。
「うん、ありがとう」
セレナは虹色ニンジンを受け取ると幸せそうに食べ始めた。
「それにしても異変の内容がはっきりしなかったわね」
セレナは真剣な様子でこれまでの調査に関して口にする。
「そうだな。強いモンスターと遭遇したが、原因になるようなものは見当たらなかった」
突如森からモンスターが湧きだしたのでその原因を探るのが今回の依頼だったのだが、どうやら徒労に終わりそうな気がする。
「あとは明日をこの場で過ごして戻って報告するだけだ」
とはいえ、結構な数のモンスターを倒したので当面の脅威はさったのではないかと思う。
「ううう、嫌だなぁ……。あの兵士……人間嫌いになりそう」
さんざん嫌がらせを受けたセレナはまるで目の前にクズミゴがいるかのように怒りをみせた。
「でも……ラッセルさんにはお世話になったもんね。我慢しなきゃ……」
溜息を吐くセレナ。俺は彼女の頭を撫でるのだが…………。
『マスター大変なのですっ!』
「どうした。マリー?」
これまで沈黙をしていたマリーが話し掛けてきた。俺はセレナの頭から手を離すと彼女の言葉に耳を傾ける。
すると、彼女はこう言うのだった。
『アークデーモンが現れたのですよ』