グループ分け
『それでは、まず部隊を分けさせてもらう』
騎士により今回の調査方法が説明される。
『諸君らは全部で180人だ。まずはこれを6つのグループに分けるのだ。その際にグループを統括するリーダーを1人決めてもらう。そして6つのグループはそれぞれ離れた場所から森に入って行く』
迷いの森は広い。確かに大人数でやみくもに動き回るわけにはいかないだろう。
『そしてそのグループを6人1組のパーティーにするのだ。グループリーダーがいるパーティーを中心に四方に展開し北上していく』
いきなり大人数を指揮するなんてできるのだろうか?
『そこから3日進み、その場に1日滞在してから引き返してきてくれ』
その言葉に若干ほっとしたのは俺だけではない。
俺たちが懸念していたのは迷いの森の奥深くまで進行されることだった。
森の奥にはエルフの集落もあるし、更に奥には邪神の城がある。
そこまで調査の手が伸びるとなれば面倒だし、何より森の奥には強力なモンスターがいるのだ。
「リーダーの選出方法はどうすればいい?」
ラッセルさんが挙手すると騎士は言った。
『諸君らは王都周辺の6つの街から集まってもらっている。それぞれの街でならリーダーにふさわしい人物を自分たちで選べるだろう?』
なるほど、よく考えられている。
まったく知らない人間がトップに立つと反発する者もいるだろう。だが、自分たちが認めている相手ならば受け入れやすいというわけだ。
「王国の兵士たちはどうするんだ?」
ラッセルさんが質問をしたからか他の冒険者からも疑問が飛ぶ。
使い込まれた鎧に業物の剣。いかにもベテランと思われる雰囲気を漂わせた冒険者だ。
『我々はそれぞれのグループに3人ずつ同行するつもりだ。彼らには今回の調査の記録に加えて諸君らの働きを査定する仕事を与えている』
その言葉に冒険者たちがざわつく。
誰もが理解しているのだ。ここで功績をあげることができれば国に召し上げてもらえる可能性があると。
『何か異変があればすぐに兵士に伝えるように。それでは半日後に森に入るので1時間後に各グループのリーダーは我々の元へ集まるように』
そう締めくくるとその場はいったん解散となるのだった。
「それにしても結局のところ俺たちを利用してるんじゃねえのか?」
俺たちの街のリーダーは順当にラッセルさんになった。
現在は、迷いの森の調査について更に詳しい話を聞きに騎士の元へと行っている。
「でも出世のチャンスだよ。私たちが活躍すればラッセルさんが城に取り立ててもらえるかもしれないでしょ?」
俺とセレナは冒険者ギルドでもラッセルさんと行動をともにしていたので、何となく一緒にいると。
「ラッセルさんはかなりの腕だと思うのだけど、あれだけ強くても兵士になれないの?」
セレナがそんな言葉を口にした。
話していた2人は……。
「実はな、兵士登用の話もなくはなかったんだが……」
気まずそうな声を出すと。
「当時、私たちもラッセルさんに拾ってもらったばかりだったのよ。それであの人『私たちを放り出して行けるか』ってね。兵士の道を断っちゃったのよ」
いかにもラッセルさんらしい話だ。
「だからよ、俺たちはラッセルさんに恩返しがしたいんだ。今回の冒険で俺達も立派に成長したというところを見せつけて送り出したいんだよ」
照れ隠しに鼻をかく。そんな彼を俺は尊敬の眼差しで見た。




