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【096 バラグリンドル攻略必須条件】


【096 バラグリンドル攻略必須条件】



〔本編〕

 今回の海岸線奪取の目標ターゲットがバラグリンドル地方になったのは、至極単純な理由で、マデギリーク将軍が領主を務めるタシターン地方とエーレ地方、そのうちのエーレ地方とバラグリンドル地方が隣接しているからであった。

 エーレ地方は、この小説で度々(たびたび)出てきているが、龍王暦二〇〇年にミケルクスド國が領土拡大を目的として攻め込んだソルトルムンク聖王国領である。

 当時の領主であるデスピアダトは殺され、主城のエーレ城とエーレ地方三分の二を、一時いっときはミケルクスド國に奪われるほどであった。

 幸いにも、エーレ地方に隣接するタシターン地方の領主マデギリーク将軍の働きによって、エーレ地方に攻め込んできたミケルクスド國のエンテ将軍の軍勢を撃退し、エーレ城を始めとするエーレ地方全域の奪取に成功したのが、翌二〇一年であった。

 マデギリーク将軍の養子であるクーロとツヴァンソが初陣などの戦いを経験したのも、このエーレ地方における戦いであった。

 この戦いの功績により、マデギリーク将軍はタシターン地方に加え、エーレ地方の地方領主にも任命されたのであった。


「今回のバラグリンドル地方攻略は、聖王国が失った海岸線を奪取し、改めて聖王国が海洋を持つ國になるための戦いですが、これにはいくつかの仕掛けが必須となってきます」

 マデギリーク将軍の第四副官にあたるコロンフルが、クーロとツヴァンソに説明する。

 ゴンク帝國へ、クーロとツヴァンソが遠征に向かう一週間ほど前の出来事であった。

 ゴンク帝國遠征に向かうマデギリーク軍の兵は一千。

 コロンフル副官がその司令官であり、その一千の内に、二百五十人をそれぞれ率いるクーロ大隊長並びにツヴァンソ大隊長の大隊が二隊組み入れられていた。

 コロンフルが、ヴェルト大陸の地図を広げ、二人の大隊長に今回の戦略の概要について説明をする。

「今回のバラグリンドル地方攻略には、王都マルシャース・グールからブーリフォン聖王子様も参戦されます。ブーリフォン聖王子様が主将、マデギリーク将軍が副将の計三万の軍勢となります」

「それはすごい! ドクサ地方を攻略した際のジュリス王国と聖王国連合軍の総数が二万五千だから、それを聖王国一國だけで上回る規模というわけか!」

 普段は冷静なクーロが高揚していた。

「そうです! それも『闘王』の異名を持つブーリフォン聖王子様と、聖王国一のマデギリーク将軍が率いる軍勢ですので、おそらく規模から鑑みても、現在の聖王国における最も精強な軍勢といえましょう。海岸線奪取を目指す聖王国の並々ならぬ決意の表れかと……。……しかしながら」

 コロンフル副官が少し声音を落とした。

「残念ながら、その三万の軍勢であっても、それだけではバラグリンドル地方攻略は不可能だというのが、中央政府並びに我がマデギリーク様の見立てであります」

「なぜ?!」

 ツヴァンソがコロンフルに尋ねる。

「バラグリンドル地方の位置がその最大の要因でございます、ツヴァンソ様! 地図を見てお気づきになられませんか?」

「……!」

「ミケルクスド國の領土であるバラグリンドル地方を我がソルトルムンク聖王国が攻略した場合、つまり聖王国がバラグリンドル地方の海岸線を奪った場合……」

「ミケルクスド國が真っ二つになる!」

「その通りであります!」

 コロンフルが続ける。

「バラグリンドル地方を完全攻略し、海岸線が聖王国の手に戻るということは、現在のミケルクスド國からすれば腹部を奪われるということ、結果ミケルクスド國が南北に分断されるといったわけであります!」



「そしてこれは言わずもがなではありますが、ミケルクスド國からすれば、王都イーゲル・ファンタムを敵に奪われるほどの重大事! 否! 場合によっては王都を奪われるより危機的状況かもしれません!! その後の戦いの展開次第ではありますが、ミケルクスド國が滅亡する可能性も否定できませんので……」

 コロンフルの言葉に、クーロもツヴァンソも大きく頷く。

「つまりは、これまでのミケルクスド國の比ではないほど、強力な抵抗が予想されると……」

「おっしゃる通りであります。クーロ様!」

 コロンフルが大きく頷く。

「兵の動員数もさることながら、必ずミケルクスド國三将軍が軍を率いることでありましょう。これは、いくら臆病で王都から三将軍を動かしたがらないミケルクスドの現王であっても、今回は事情が事情でありますので先ず間違いはないかと……。事態次第では、三将軍全てがバラグリンドルの地に集結する可能性も無いとはいえません。そうなれば、いくら聖王国がブーリフォン聖王子様とマデギリーク様三万の軍勢を遠征させても、バラグリンドル地方を奪うことはまず不可能かと……」

「だからそれをミケルクスド國にさせないような仕掛けが必要ということか! バラグリンドル地方にミケルクスドの軍を集中させないような仕掛けということになるわけだな」

「はい! その通りであります。クーロ様!」

「バラグリンドル地方に兵を集中させない仕掛け?」

 ツヴァンソが首をひねる。

「バラグリンドル地方以外のミケルクスド國の拠点を攻め、その対処に一部の敵将と軍をくぎ付けにするという手が、最も有効的かな! その際、その拠点はなるべくバラグリンドル地方から距離がある方が有効だな!」

「しかし、クーロ兄さん! 聖王国にそのような余力はないかと……。むしろ、そのような余力があればバラグリンドル地方攻略の規模をさらに増強する方が、はるかに効率が良いのでは……」

 クーロの発想に、ツヴァンソがそう反駁する。

「その通り! だから他の拠点を攻めるのは我が聖王国の軍ではなく、他国の軍ということになる!」

「つまり、同盟国のジュリス王国の軍というわけですね!」

「それともう一國、ミケルクスド國の南側に位置するフルーメス王国! この二か國がミケルクスド國に攻め入るのが、今回の作戦を成功させるための必須条件ということになる!」

 クーロのこの言葉に、コロンフル副官が満足そうに頷いた。




〔参考一 用語集〕

(人名)

 エンテ(ミケルクスド國の将軍)

 クーロ(マデギリークの養子。大隊長)

 コロンフル(マデギリーク将軍の副官)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。大隊長)

 デスピアダト(エーレ地方の元領主。エンテ将軍に殺される)

 ブーリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ゴンク帝國(ヴェルト八國の一つ。東の国)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 イーゲル・ファンタム(ミケルクスド國の首都であり王城)

 エーレ城(エーレ地方の主城)

 エーレ地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 タシターン地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 ドクサ地方(ジュリス王国領)

 バラグリンドル地方(ミケルクスド國領)

 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)


(その他)

 三将軍(ミケルクスド國で最も優れた三人の大将軍のこと)

 大隊(中隊五部隊で編成される隊。二百五十人規模の隊)

 大隊長(大隊は二百五十人規模の隊で、それを率いる隊長)

 副官(将軍位の次席)



〔参考二 大陸全図〕

挿絵(By みてみん)

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