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【094 ドクサ地方攻略(三十) ~攻略成る~】


【094 ドクサ地方攻略(三十) ~攻略成る~】



〔本編〕

 ドクサ地方の五つの砦のうち、最も南側にある第五ペンプトスの砦攻略は、ソルトルムンク聖王国のマデギリーク将軍が担っていた。

 クーロとツヴァンソの養父にあたり聖王国筆頭将軍であるマデギリーク将軍は、五千の兵を率いて第五ペンプトスの砦に攻めかかる。

 第五ペンプトスの砦は砦ではあるが、その規模は地方の城に匹敵するほどであり、さらに砦の西側は海洋に直接面している。

 それも、第三トゥリトスの砦のような遠浅な海岸線ではなく、百人乗りのこの当時で最も大きい巨大船を十艘近く接岸できるほど水深が深くそして広い海岸線であり、敵に水軍がある限り砦を完全包囲することは不可能で、兵糧攻めなどが出来ない造りになっていた。

 だからといって力攻めにうったえたとしても、巨大な城並みの高い城壁を有しているため、その巨大な城壁に阻まれなかなか攻めることが出来ない。

 普段は五百の兵しか常駐しておらず、さらに第三トゥリトスの砦奪回の援軍に二百五十人と砦の指揮官ヴリオ上位大隊長が砦を離れたが、第五ペンプトスの砦の重要さをよく知っているミケルクスド本国により、砦内の兵は、七百五十人が補充され千人となり、上位大隊長より上の階級である小官クラスの指揮官も新たに着任していた。

 水軍もウーア将軍の指示で千の兵が派遣され、それ以外にも千人が援軍として第五ペンプトスの砦付近に配備された。

 砦内外全体で三千の兵が配備されていたことになる。

 奪還を目的とされた第三トゥリトスの砦を除くと、防衛としては最も手厚い配備といえた。

 普通に考えれば、五千の兵ではとても攻略など不可能であった。

 ミケルクスド國としても、仮に第三トゥリトスの砦の奪回がすぐに達成できなかったとしても、第五ペンプトスの砦を橋頭保きょうとうほとして、いずれはドクサ地方全域を再奪取するつもりでいたのであった。極めて近い将来を見据えて……。

 そして最も北側の第一プロトスの砦も、第五ペンプトスの砦ほどではないとしても、陥落させるのが難しい砦であるため、この二つの砦さえ敵の手に落ちなければ、仮にジュリス王国が海洋を再び手に入れたとしても、第三トゥリスト砦付近の遠浅の海岸線しか確保できず、つまりは遠浅から出航できる五人乗りの小型船や十人乗りの中型船しか着水させられないため、ミケルクスド國が大型船で外海へ出るルートを包囲した場合、ジュリス王国の水軍は外海へ出られず、結果、水軍としての存在意義が失われ、結局はドクサ地方そのものを再び放棄せざるを得ない事態になってしまうはずであった。

 しかしその戦略が、第五ペンプトスの砦の陥落により根底から崩れ去った。

 マデギリーク将軍がいかにしてそのような奇跡ともいえる偉業を成し遂げたかについてはここでは割愛するが、第五ペンプトスの砦が陥落したことにより、第一プロトスの砦は完全に孤立し、結局、第五ペンプトスの砦陥落から一月ひとつき後に、第一プロトスの砦に籠っていたミケルクスド兵は、砦を放棄して、海洋へ完全撤退したのであった。

 これでドクサ地方の五つの砦全てからミケルクスドの兵が、全員撤退したことになる。

 龍王暦二〇二年五月三日のことであった。



 龍王暦二〇二年六月六日。ソルトルムンク聖王国聖王子ブーリフォンは、ジュリス王国の首都であり王城でもあるヤ・ムゥに滞在していた。

 五月三日にミケルクスド國領のドクサ地方の五つの砦からミケルクスド國兵が完全に撤退してその後、奪取した砦の修復、ドクサ地方からミケルクスド國の残存兵の完全排斥、ドクサ地方に住んでいた住民への対応等を並行して実施し、それらについてほぼ目途がついたのがひと月後であった。

 これによりドクサ地方での聖王国軍の役割は全て終わり、同盟の条件の通り、全ての聖王国兵がドクサ地方から聖王国領へ引き揚げた。

 聖王国はジュリス王国との約束――ドクサ地方をジュリス王国、聖王国の連合軍で攻め、それを奪取した後、聖王国兵は全てドクサ地方から撤退する――を忠実に守ったことになる。

 マデギリーク軍はタシターン地方に戻り、ブーリフォン聖王子の大部分の兵は聖王国王都へ帰還し、ブーリフォン聖王子と一部の側近のみ、ジュリスのワーハグッホ王子と共にジュリス王国の王城ヤ・ムゥを訪れた。

 ブーリフォン聖王子は、王都ヤ・ムゥにてジュリス王による歓待を一週間受け、その後ブーリフォン聖王子の兄であるアグリフォージョ聖王子の妻になったジュリス王の娘ネヴィス姫を伴い、ソルトルムンク聖王国の王都マルシャース・グールに帰還した。

 ソルトルムンク聖王国が同盟の約定を一切違えることがなかったので、ジュリス王国も同盟の条件であるネヴィス姫を聖王国の王都に、聖王子の妻として差し出したのであった。

 これによりジュリス王国は再び海洋を手に入れ、ソルトルムンク聖王国もジュリス王国との強固なる同盟を締結することができた。

 むろんソルトルムンク聖王国からすれば、これは第一段階に過ぎず、次なる段階にいよいよ踏み出すこととなる。

 次なる段階とは、龍王暦一八〇年にソルトルムンク聖王国がミケルクスド國から奪われた海洋を奪取する段階のことである。


 ブーリフォン聖王子がジュリス王国の首都ヤ・ムゥに向かうと同時に、クーロとツヴァンソもマデギリーク将軍と共にタシターン地方に戻る。

 六月九日、タシターン城において今回のドクサ地方攻略における論功行賞が行われ、クーロ、ツヴァンソ共に大隊長に昇格した。

 いよいよ、ソルトルムンク聖王国が海岸線奪取を目的とする対ミケルクスド國戦を、翌年の龍王暦二〇三年から開始する。

 二百五十人規模を指揮する大隊長に昇格を果たしたクーロとツヴァンソは、今まで以上に過酷な戦いに身を投じることとなるのであった。

【第二部 完】




〔参考 用語集〕

(人名)

 アグリフォージョ聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 ウーア(ミケルクスド國の将軍。水軍の将軍)

 ヴリオ(ドクサ地方第五の砦の上位大隊長)

 クーロ(マデギリークの養子。中隊長)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。中隊長)

 ネヴィス姫(ジュリス王国の王女)

 ブーリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)

 ワーハグッホ王子(ジュリス王国の王子)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 タシターン地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 トゥリトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第三』という意味)

 ドクサ地方(ミケルクスド國領)

 プロトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第一』という意味)

 ペンプトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第五』という意味)

 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

 ヤ・ムゥ(ジュリス王国の首都であり王城)


(その他)

 小官(指揮官の位の一つである官の第三位。千人規模を指揮する。大隊長より上位)

 上位大隊長(上位大隊は五百人規模の隊で、それを率いる隊長)

 大隊長(大隊は二百五十人規模の隊で、それを率いる隊長)

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