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【092 ドクサ地方攻略(二十八) ~撤退~】


【092 ドクサ地方攻略(二十八) ~撤退~】



〔本編〕

 二月一五日、第二ゼフテロスの砦を陥落させたブーリフォン聖王子は、五千の兵のうち二千を砦に留め、自身は三千の兵を率いて、第四テタントスの砦へ向けて南下した。

 第四テタントスの砦攻略は、マデギリーク将軍の副官にあたるガストロンジュ軍二千が担当していた。

 マデギリーク軍第一副官で猛将であるガストロンジュの攻めは、冬場に入っても苛烈であり、第四テタントスの砦を守るコグメーロ上位大隊長は、援軍の助力により、かろうじて砦を死守出来ている状態であった。

 そのような戦況下の二月二〇日、ブーリフォン聖王子三千の軍が第四テタントスの砦に到着する。

 これを知ったコグメーロ上位大隊長の戦意は一気にしぼみ、ついには聖王国軍に降伏を願い出た。

 ブーリフォン聖王子はその敵方の降伏要請を受諾し、第四テタントスの砦から全てのジュリス兵が退去した。

 これで三つ目の砦が落ちたことになるが、第四テタントスの砦の陥落は、数字上のひとつの砦陥落以上の意味を持っていた。

 第二ゼフテロスの砦並びに第四テタントスの砦が陥落したことにより、第三トゥリトスの砦奪還の援軍である地上部隊の東側――つまり砦側と逆方向の向背に敵が存在するという状態になってしまったのであった。

 一旦は冬将軍の到来で、第三トゥリトスの砦から全面撤退したファング率いる飛兵部隊であったが、春先には味方の地上部隊と連携し一気に第三トゥリトスの砦を奪還しようと考えていたファングは、冬の間に地上部隊の竜騎兵並びに地上部隊の主だった指揮官数人と実際に会って、その調整をはかっていた。

 さらに、水軍の長でこの援軍の実質的な総司令官であるウーア将軍に伝令を送り、現在の実情並びにファング自身が考えている戦略などを伝え、それによってウーア将軍から正式に副司令官に任命され、さらに援軍の地上部隊と飛兵部隊を束ねる権限も併せて得た。

 ファングのこれらの根回しや調整により、仮に四月までになんら戦況に変化がなければ、第三トゥリトスの砦は、ファングの総攻撃から三日経ずに陥落したことであろう。

 戦況が変わった今となっては、言っても詮無いことではあるが……。


「ファング様! 第二ゼフテロス並びに第四テタントスの砦が陥落したことにより、我が軍の向背に敵軍が存在するようになりました。このままこの場で春を待っておりましたら、我々は第三トゥリトスの砦の攻略どころか、逆に敵の挟み撃ちにあい全滅してしまいます。ここは、一刻も早い勇気ある撤退をお願いいたします!」

 ワイヴァーンナイトの一人ガーリオが、ファングにそう進言する。

 ファングも、ガーリオの進言を苦々しい顔つきで聞いていたが、それでも既に撤退以外に選択肢はないとファング自身が悟っていた。

「やむを得ない! みすみすジュリス王国に我が海洋を奪われるのは痛恨の極みではあるが、その上ここの兵が全滅するのはさらに悪い事態である。分かった! 東の敵兵が我らに接近する前にこの地から撤退しよう! ウーア将軍に我らが撤退する旨を伝え、我らの撤退の隙を砦側から攻撃されないよう、ウーア将軍に援護攻撃を行っていただこう。さらに飛竜ワイヴァーンも船で運搬していただくよう要請しよう!」

「ファング様! 我々のワイヴァーンは一緒には行動できないのでありますか?!」

「仕方ない! この天候では飛兵は空を飛ぶことは不可能だ! それではワイヴァーンは、撤退の際の足手まといとなる。そのせいで、敵に追撃されれば我らも甚大なる被害を免れない! それに我らがホースに騎乗すれば、敵は我らをワイヴァーンナイトとは認識するのは不可能となる!」

「しかし我らワイヴァーンナイトは、ワイヴァーンに乗っていなければ一般の兵と大差ございません。万が一、敵の襲撃をファング様が被られましたら……。せめて、竜騎兵ドラゴンナイト二体の護衛を、ファング様にお付けすることを許可してください! そうでなければ、我らはワイヴァーンとの別行動に賛同しかねます!」

 ガーリオは、それだけは譲れないという決意を籠めた顔つきでファングに迫る。

「分かった! それを許そう! 我ら六人のワイヴァーンナイトは、ドラゴンナイトによって前後を守ってもらおう。それであればよいか! ガーリオ!」

「はい、ありがとうございます。早速、今日中に準備を終わらせ、明日の夜には撤退が出来るよう取り計らいます」

 こうして、第三トゥリトスの砦奪回に援軍としてやって来た飛兵部隊並びに地上部隊は、南に向かって撤退を開始すべく準備を整え始める。

 しかし、守りを固めるために護衛させた竜騎兵ドラゴンナイトが完全に裏目となるのであった。


「ファング様! 敵が奇襲をしかけてきました!!」

 ワイヴァーンナイトの一人ガーリオが、ファングに向かって叫ぶ。

 二月二五日午後十時。前日二四日に撤退の準備をし、水軍のウーア将軍の援護攻撃が始まって六時間が経過した時間で、第三トゥリトスの砦を攻めていた飛兵部隊並びに地上部隊が密かに南に向けて撤退を始めて一時間が経過した頃の出来事であった。

 ほとんど予期していなかった敵の奇襲に、一万以上の飛兵部隊と地上部隊の連合軍は一斉に浮足立つ。

 第三トゥリトスの砦奪還を諦め、南方に撤退を始め、兵の士気が著しく低いタイミングでの最悪な形での奇襲であった。

「慌てるな! 敵の数は多くはない! ガーリオ! 兵を編成し、しんがり軍として敵奇襲部隊の襲撃を防げ! 残りは隊列を維持しつつ、撤退を続けろ!」

 ファングがそう叫び、ガーリオも百の兵を編成し、敵奇襲部隊に向かっていった。

「ファング様! 奇襲部隊はガーリオ様にお任せして、ファング様は少しでも早く南方へ向かって下さい! 敵の狙いはファング様です!」

 共に撤退している兵がファングにそう訴えかける。

 ファングもそれに同意するよう頷き、南への道を急いだ。




〔参考 用語集〕

(人名)

 ウーア(ミケルクスド國の将軍。水軍の将軍)

 ガーリオ(ミケルクスド國ワイヴァーンナイト)

 ガストロンジュ(マデギリーク将軍の第一副官)

 コグメーロ(ドクサ地方第四の砦の上位大隊長)

 ファング(ミケルクスド國ワイヴァーンナイト隊隊長)

 ブーリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 ゼフテロス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第二』という意味)

 テタントス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第四』という意味)

 トゥリトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第三』という意味)

 ドクサ地方(ミケルクスド國領)


(兵種名)

 ドラゴンナイト(最終段階の小型竜に騎乗する騎兵。竜騎兵とも言う)

 ワイヴァーンナイト(最終段階の飛竜に騎乗する飛兵。竜飛兵とも言う)


(竜名)

 ワイヴァーン(十六竜の一種。巨大な翼をもって空を飛ぶことができる竜。『飛竜』とも言う)


(その他)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

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