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【079 ドクサ地方攻略(十五) ~各戦線~】


【079 ドクサ地方攻略(十五) ~各戦線~】



〔本編〕

「敵に降下を許すな! また仮に降下されたとしても、そこに絶対に拠点を作らせるな!!」

 クーロは懸命に指示を飛ばしつつ、自身も矢を射る。

 今、第三トゥリトスの砦上空は、多くの敵飛兵によって、日中でありながら、太陽が遮られ薄暗くなるほどであった。

 砦の上空を滑空している敵飛兵は、時折、高低差を利用し、急降下で砦の兵士に襲い掛かる。

 飛兵の上空からの攻撃に対し、砦の一人の槍兵は、槍をその飛兵に向けて繰り出すが、飛兵の速さに対応できず、槍は砕かれ、その兵自身は飛兵の槍に鎧ごと身体を串刺しにされた。

「槍兵は一人になるな! 密集して飛兵の攻撃に備えよ! 飛兵を槍で仕留めようと考えるな! あくまでも、飛兵を砦に降ろさないことだけに注意を集中せよ!」

 砦の防衛隊長カランパノがそう叫ぶ。

 槍兵だけで、飛兵と戦うのは、はなはだ不利ではあるが、飛兵を砦に降下させない限り、いくら敵飛兵が制空権を握っていたとしても、最終的な砦攻略にはなり得ない。

 槍兵が敵飛兵を倒せなくても、矢という飛び道具を持つ弓兵によって飛兵を倒すことが出来るので、最終的な飛兵撃退については弓兵に任せれば良い。

 ただ、弓兵は近接戦闘には極端に弱いので、飛兵が弓兵に接近しないようにする役割を槍兵が担っている。

 こうして、弓兵と槍兵がお互いの欠点を補いつつ、砦の防衛に当たっていた。

 先述した槍兵の身体を貫き突破した敵飛兵も、砦に一旦は降下できた、すぐにクーロ中隊長の指示により、降下した飛兵の周りを槍兵が取り囲み、その槍兵の後ろから弓兵が矢を放った。

 結局、砦に一旦は降下できた飛兵も一、二騎では、そこで矢の洗礼を浴び、再び上空に離脱しない限り、倒される。

 そして、たとえ上空に離脱を試みたとしても、そのかん無防備となるので、上空に離脱する際に追撃の矢をいくつも受け、そのまま墜落する飛兵も多々あった。

 飛兵の強みとして、地上の敵兵を無視し直接砦へ攻撃できるという利点があるが、結局、砦内に弓兵がいる限り、①組織的な降下から、②拠点の構築、そして最終的な③砦の占拠への流れには持ち込むことが出来ずにいた。

 それでも敵飛兵は三千、それに対するカランパノ大隊長並びにクーロ中隊長の連合部隊は五百五十、仮に敵が数を頼りに砦に降下してくれば、カランパノ、クーロ連合部隊は、一日持たずに砦から追い落とされ、砦はミケルクスド國の手に戻ったであろう。

 しかし、ミケルクスドの飛兵部隊は、部隊としてまとまっておらず、個々に攻撃を仕掛けてくるだけであった。

 まとまった降下攻撃もせいぜい十騎程度のものであったため、砦の上の五百五十人も、個別対応によって砦を防衛できているのが現状であった。



 第三トゥリトスの砦の攻防戦は、一瞬の予断を許さないほどの厳しい戦いであったが、砦の外における戦いも、それに勝るとも劣らないほど厳しいものであった。

 ミケルクスド國王都から送り込まれた地上兵――騎兵と歩兵の混成部隊であったが、その総数は一万。

 それと相対するのが、ジュリス王国一の猛将アッティモ将軍率いる四千であった。

 第三トゥリトスの砦から二キロ離れた地点を地上軍の合流地点としたミケルクスド軍に対し、アッティモ将軍は四千で強襲する。

 あえて、守りに徹せず、攻めることで寡兵かへいの不利を覆そうとしたのであった。

 強襲といっても、戦場が昼間の平原で、アッティモ将軍自身が軍を秘匿させてこっそり攻めるような性格ではないので、最大速度で真正面から堂々と敵軍に攻めかかった。

 ミケルクスド國の騎兵の一部も、強襲してくるアッティモ将軍の軍に果敢にも攻めかかるが、勢いの差は歴然としており、それらの騎兵は簡単に蹴散らされた。

 味方の騎兵が蹴散らされるのを目の当たりにしたミケルクスド國の歩兵は、盾や槍でアッティモ軍の騎兵の強襲に対処しようと陣形を固める。

 ツヴァンソ中隊の五十人も、このアッティモ軍へ配属されていた。

 しかし、ジュリス騎兵のそれも精鋭兵の最大速度での強襲移動に対し、ツヴァンソ中隊は二キロメートルの移動の間に五百メートル近く離され、ツヴァンソ中隊が、ミケルクスド地上兵が駐屯している場所に到着した時には、そこここでジュリス、ミケルクスド両軍の激しい戦闘が既に行われていた。

 ただ、ツヴァンソ中隊はアッティモ軍の下に配属はされているが、独立した行動を許されている独立遊撃部隊であったため、戦場に辿り着いた時点で、その場で今何をすべきかを判断し、中隊として最も有効な行動をとれば何ら問題はなかった。

 戦場を俯瞰ふかん的に見回したツヴァンソは、先ず自分の近くを駆けている敵騎兵隊五十の側面に攻めかかった。

 その敵騎兵隊五十は、アッティモ軍の騎兵隊が、ミケルクスドの槍兵の防御陣をこじ開けようと攻めている隙を狙い、騎兵隊の左側面にまさに攻めかかろうとしていたところであった。

 まさに、後数メートルでアッティモ軍の騎兵隊の左側面に攻めかかれたはずのミケルクスド騎兵隊は、気づいた時には、そこに突如として現れたツヴァンソ中隊に、逆に右側面を横撃され、壊滅したのであった。

 攻めに夢中になっている敵の隙を狙って攻めたミケルクスドの騎兵隊であったが、まさか自分たちがその攻めに夢中になり、その隙をツヴァンソ中隊に攻められるとは、夢にも思わなかったのであろう。



 砦の外のもう一つの戦い。

 ジュリス王国“生きる武神”ことフセグダー将軍三千五百の軍勢は、第三トゥリトスの砦周りに布陣して、アッティモ軍の攻撃をすり抜けてきた地上軍の殲滅、並びに海岸線の敵水軍への防衛を一手に引き受けていた。

 ミケルクスドの水軍は、この援軍の指揮官ウーア将軍率いる五千であったが、第三トゥリトスの砦へ上陸できる海岸線は遠浅なので、水軍のうち百人乗りの巨大船や五十人乗りの大船は、海岸から一キロメートル内側には、船底が厚すぎて入ってこられない。

 十人乗りの中船や、五人乗りの小船は船底がそれほど厚くないので、海岸線ぎりぎりまで乗り入れることが可能ではあるが、それでは五千の水軍の強みが十分には生かせない。

 巨大船や大船に搭載している遠距離攻撃用で、砦の防壁に大岩などを飛ばし直接ダメージを与えることが出来る『投車』がその射程距離まで近づくことが出来ないので全く使用できず、その上沖合で巨大船や大船から、兵を中船や小船に乗り換えさせなければ海岸線ぎりぎりまで兵を投入できない。

 むろん、中船や小船の数も限られているので、五千全てをいっぺんに乗り換えることは不可能で、何回かに分けて海岸まで兵を運ばなければならない。

 今回、ウーア将軍の用意した中船と小船全て使って、一回で千人までしか運ぶことが出来ず、したがって、五千は五回に分けて運ばなければならないが、何もない海岸線に兵を運ぶのであれば、全ての中船と小船を五往復させれば、何ら問題はない。

 しかし実際に海岸線には、第三トゥリトスの砦を守るフセグダー将軍の兵が防衛線を構築させている。

 そこへ兵を投入するということは、軍運用で最も悪手と謂われている最前線への兵の逐次投入に当たるので、これはフセグダー将軍側からすれば、逐次投入された兵を、それこそ各個撃破していけば良いだけになるので、数に劣るフセグダー将軍のジュリス軍でも十分に対処できるのであった。




〔参考 用語集〕

(人名)

 アッティモ(ジュリス王国の将軍)

 ウーア(ミケルクスド國の将軍。水軍の将軍)

 カランパノ(フセグダー将軍の部下。大隊長)

 クーロ(マデギリークの養子。中隊長)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。中隊長)

 フセグダー(ジュリス王国の将軍。『生ける武神』の異名を持つ)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 トゥリトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第三』という意味)

 ドクサ地方(ミケルクスド國領)


(その他)

 大隊長(大隊は二百五十人規模の隊で、それを率いる隊長)

 中隊長(中隊は五十人規模の隊で、それを率いる隊長)

 投車(巨大な岩石や大量の矢を、超長距離に飛ばすことが出来る車輪がついた装置)

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