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【074 ドクサ地方攻略(十) ~敵大軍勢到着~】


【074 ドクサ地方攻略(十) ~敵大軍勢到着~】



〔本編〕

「何! マデギリークのガキどもが、ミケルクスドの部隊を壊滅させただと……!!」

 第三トゥリトスの砦に駐屯しているジュリス王国アッティモ将軍が、驚きのあまり大声で叫ぶ。

「はい! それも二中隊で、南方のミケルクスド兵四百五十を文字通り壊滅させたとのこと! 偵察兵を走らせ、現地を見てまいりましたので間違いありません!」

 報告しているジュリス兵も、驚きを隠しきれない様子であった。

「しかし策を用いたとはいえ、聖王国兵が、四倍以上のミケルクスド兵を駆逐したとは信じ難きことだ! ガキどもの名前はなんだったか? くそ! 思い出せん!!」

「アッティモ! ガキではない! マデギリーク殿の御子おこ達である。そのようなあなどりは、自身を滅ぼす原因にもなるぞ!」

 アッティモ将軍の苛立ちに、ジュリス王国の武神フセグダー将軍が笑いながらさとす。

「クーロ殿とツヴァンソ殿だ。心にとどめておくよう……」

「はい、フセグダー様。しかし、にわかには信じられません! 聖王国の弱兵たちが……」

「それはわしも同じ気持ちだ! ……しかし、アッティモよ! 少しは喜べ! 少なくとも味方が大勝したのだから……。お前は本当に素直だな! ハッハッハッハッ!」

 フセグダー将軍の高笑いに、アッティモ将軍も顔を赤らめ、少し恥じ入った様子であった。

「しかし、このままマデギリーク殿の御子達のみに活躍されては、我らも立つ瀬がない! アッティモ将軍! 味方に怒りをぶつけることはできないが、敵ならば遠慮はいらないな! 北方の敵を蹴散らすか!」

「むろんです! すぐさま最も機動力の優れている騎兵を編成して北方へ向かいます! 一人たりとも逃しません!」

「うむ! ……ところで、北方の敵兵は三百五十であるが、いかほど率いる?」

「一千で参ります!」

「よし、よく言った! アッティモ! お前が将軍の御子達を意識して、百やそれ以下の数を言っていたら、わしが一喝していたところぞ! うむ、千が機動力を十分生かすに、ギリギリの数だ! それ以上であれば、馬脚が鈍る!」

「はい! 一千で迫れば、敵は一戦を交えることなく逃げ出す! しかし、我らの機動力であれば、一キロメートルも逃げられない! 兵の数が整っているのに、あえて少数で挑む意味はありませんので……」

 アッティモ将軍は、それからわずか五分後、一千の騎兵を率いて、北方に出張っているミケルクスドの援軍三百五十に襲い掛かる。

 敵の圧倒的な兵数を知り、すぐに逃げ出したミケルクスド兵であったが、騎馬に一日の長があるアッティモ将軍の騎兵の前には逃げ切れるはずもなく、八百メートル逃走後に追いつかれ、完全包囲の中一人残らず討ち取られた。

 これで、第三トゥリトスの砦に駆けつけた最初のミケルクスドの援軍は全て壊滅したのであった。



 月が替わり一一月一日。

 第三トゥリトスの砦に、ミケルクスド國軍の大軍勢が到着する。

 騎兵並びに歩兵で編成されている地上兵一万を中心に、飛兵部隊が三千、そして海洋からの水軍五千の、合計一万八千の大軍勢であった。


 対する第三トゥリトスの砦のジュリス王国、ソルトルムンク聖王国連合軍は、八千百人。内訳はフセグダー将軍四千、アッティモ将軍四千、そしてクーロ中隊五十、ツヴァンソ中隊五十であった。

 守りに適していない第三トゥリトスの砦において、籠城戦は不利どころかそもそも不可能である。

 八千百人の兵を賄えるほどの食料はなく、第一、八千もの人数を収容できる規模の砦ではない。

 結局、砦に籠る人数は五百とし、フセグダー将軍は、部下のカランパノ大隊長を砦内の守備長として、自身は三千五百の兵とともに、砦の外に陣取った。

 同じくアッティモ将軍も四千の兵とともに砦の外に陣取り、ツヴァンソ中隊は、アッティモ将軍の軍に配置された。しかし、基本的には独立遊軍として、自由に動く権限を与えられていた。

 クーロ中隊はというと、砦内に配備され、こちらはカランパノ大隊長の指揮の元に置かれたが、クーロ中隊も基本的には独立遊軍として、自由に動ける権限を与えられた。

 クーロ中隊とツヴァンソ中隊は、ジュリス兵との共同での兵運用の機会が一切なかったことが、独立遊軍という扱いの一番の要因ではあるが、先の四百五十の南方に配置された敵援軍を壊滅させた実力を認められた上での、独立遊軍の位置づけであることも間違いなかった。

 しかし、それは重要な局面での活躍を期待されていることの反面、窮地に陥った場合、ジュリス兵からのたすけが得られないという危険性もはらんでいた。

 一日午前八時、ミケルクスド國軍地上部隊が第三トゥリトスの砦から南に二キロメートル地点に到着する。

 その報を受け、前日から砦の外で野営していたアッティモ将軍率いる四千の軍は、ミケルクスド國軍地上部隊に向け、兵を動かした。

 ツヴァンソ中隊も、アッティモ軍と共に進軍を始める。

 ここに第三トゥリトスの砦を巡る攻防戦がきって落とされた。




〔参考 用語集〕

(人名)

 アッティモ(ジュリス王国の将軍)

 カランパノ(フセグダー将軍の部下。大隊長)

 クーロ(マデギリークの養子。中隊長)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。中隊長)

 フセグダー(ジュリス王国の将軍。『生ける武神』の異名を持つ)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 トゥリトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第三』という意味)


(その他)

 大隊長(大隊は二百五十人規模の隊で、それを率いる隊長)

 中隊(小隊五部隊で編成される隊。五十人規模の隊)

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