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【067 ドクサ地方攻略(三) ~五つの砦~】


【067 ドクサ地方攻略(三) ~五つの砦~】



〔本編〕

「ただ今回は、聖王国の軍勢一万五千が加わるので、数でミケルクスド國を圧倒できるとわしは考えておる!」

「……しかし、フセグダー将軍! 純粋に兵数が増えても、連携がうまくとれなければ、必ずしも勝てるとは限りません!」

 フセグダー将軍の言葉に、若きアッティモ将軍が異論を唱える。

「将軍の言いようもっともである!」

 アッティモ将軍の含みのある言いぶりに、聖王国のガストロンジュ副官が、顔を真っ赤にして何か言おうとするのを制する形で、マデギリーク将軍がそう言った。

「わしもアッティモ将軍と同意見だ! ここは、両國が連携を図るに当たり、単純にジュリスの兵と聖王国の兵を組ませては、それぞれの長所を打ち消し合い、数の優位を十分に生かせないことになる! フセグダー将軍殿! 少し砦のことを詳しくご説明いただけないであろうか!」

「うむ! ドクサ地方の五つの砦に特に名称はないので、我が國は北から順に『第一プロトス』、『第二ゼフテロス』と呼んでいる。最近では、この呼び名を皮肉なことに、ミケルクスド國兵が使用している!」

 フセグダー将軍は苦笑しながら話を続ける。

「五つの砦のうち第一プロトス第三トゥリトス第五ペンプトスの三つの砦が海岸線に近い場所にあり、第二ゼフテロス第四テタルトスの二つの砦が、海岸線より十キロメートル内陸部にある」

「なるほど! それで五つの砦のうち最も攻略しやすいのはどれでありますか?!」

「それぞれに特徴があり一概には言えないが、逆に最も攻略しにくいのは第五ペンプトスの砦と言える!」

 フセグダー将軍の、それぞれの砦についての詳しい説明が始まった。

第一プロトスは、バルナート帝國との国境線沿いなので、ミケルクスド國が地上から援軍を送るには一番遠いが、逆に海岸線沿いなので海洋から敵が援軍を送るのは比較的楽だ! 第二ゼフテロス第四テタルトスは内陸の砦なので、敵の海洋からの援軍は望めない上に、我らは地上兵のみで包囲することも可能だ。第二ゼフテロス第四テタルトスを比べれば、ミケルクスド本国に近い分だけ、第四テタルトスの砦の方が攻略は難しいと言える。そして、第三トゥリトスは海岸線沿いではあるが、遠浅であるため、敵は大型船を接岸できない。我らとしてはその分攻めやすいが、逆に砦を奪った後、他の四つの砦からの援軍によって包囲されてしまう。そして、第五ペンプトスの砦が、ミケルクスド本国から最も近く、敵は地上と海どちらからでも援軍を送りやすい!」

「なるほど! しかし最も攻略し難い第五ペンプトスが、ドクサ地方攻略に当たり、最も重要な拠点とは言えませんな。私が今のお話を伺ったことから推察するに、第三トゥリトスの砦を攻略するのが、ドクサ地方攻略の大いなるくさびになり得ると思われますが……」

「さすがは、マデギリーク将軍! おっしゃる通り! 第三トゥリトスは、大型船による敵海軍の救援は不可能で、ここを落とすのはさほど難しくないし、言われた通り、非常に重要な拠点といえる。しかし、逆に落とした後、我らがここを守るのが非常に難しい。第二ゼフテロス第四テタルトスの砦が内陸にあるため、他の四つの砦全てから援軍を出され、簡単に包囲される。……というか、あえて第二ゼフテロス第四テタルトスを内陸部に設けたのは、第三トゥリトスを奪回しやすくするためだと思われる! 結局、第三トゥリトスだけ攻略しても意味がなく、五つの砦全てを攻略して、初めてドクサ地方攻略といえる!」

「確かに! それで先ほど、軍を五つに分けて、五つの砦を全て同時に攻撃したとおっしゃいましたが、フセグダー将軍とアッティモ将軍は、どの砦を受け持ったのでありますか?」

「むろん、最も攻略が難しい第五ペンプトスをフセグダー様! そして、私が次に攻略が難しい第四テタルトス乃至ないしは、第一プロトスを攻める! しかし、結局、我々がそれらの砦を攻略する前に、第三トゥリトスを攻めた味方が、フセグダー様と私が攻めている砦以外からの援軍による攻撃などを受け、敗退してしまう! これを何度となく繰り返している!! それにミケルクスド本国からの飛兵部隊は、第五ペンプトス第四テタルトスの砦を我々が攻めていようが、その頭上高く第三トゥリトスの砦に援軍として向かえるので、我々だけでは手の打ちようがない!!」

 アッティモ将軍が怒りに震えながら、そう大声で呟いた。


「よく分かりました! それを伺い、私に一つ作戦案がございますが、愚考をお聞きいただけますでしょうか?」

 マデギリーク将軍がフセグダー将軍とアッティモ将軍の話を聞き、そう進言する。

「おお、マデギリーク殿の案! 是非ともお聞かせ願いたい!」

 ジュリス王国のワーハグッホ王子が笑顔で、マデギリークに作戦案を話すよう促した。

「それではお話させていただきます」

 マデギリークが語り始める。

「まず、攻略する拠点についてでありますが、それは、五つの砦とドクサ城の六拠点で間違いないと確信いたしました! ドクサ城は行政府としての機能のみで、守城という意味合いはそれほどではないとはいえ、やはりドクサ地方の中心部に当たりますので、ここを攻略する必要性がございます」

「マデギリーク殿! むろんドクサ城を無視しているつもりはないが、先ずは海岸線の五つの砦を攻略した後、落とすので何の問題もないのではないと、わしは考えるが……」

「確かにフセグダー殿のおっしゃる通り、ジュリス王国の兵一万のみであれば、先にドクサ城を落としますと、それを守る兵がいないので無理でありましょう。しかし、そこは聖王国の増援一万五千がありますので、それを利用していただければよろしいかと……。兵数に余裕がありますので、そこは本腰をいれて、じっくりとドクサ地方を攻略していてまいりましょう。先ずはドクサ城を落とし、そこをジュリス王国、ソルトルムンク聖王国連合軍の本陣といたします。ドクサ城には総大将のワーハグッホ王子様に入城していただきましょう。ワーハグッホ王子様は、現ジュリス王国王の嫡男。二十年前にミケルクスド國の領土となったとはいえ、ドクサ地方に住む者の半数以上は、元々ジュリス王国の民。ワーハグッホ王子がドクサ城に長く留まれば、自ずと民の中にジュリス王国に帰属しようという気持ちが徐々に高まってまいります。それはミケルクスド國が最も嫌う現象でありましょう! 我が國も昨年の二〇〇年から一年以上エーレ城が敵の手中にある時など、早い段階で奪取しなければ、エーレ地方が民もろとも全て失われるという危機感を覚えたもの。それと同じ感覚を、今度はミケルクスド國が味わうことになることでありましょう」

「うむ。確かに兵数に余力があれば、そのような長期的な手が打てるわけか! 早くも父王の同盟の効果が現れてきているな!」

「しかし、王子! それは最終的に五つの砦を攻略して、初めてその効果が本物となるもの。海岸線を奪取できなければ、聖王国の兵が去った後に、ドクサ城も再び奪われて元の木阿弥となりましょう」

「そうだ、アッティモ将軍の言う通りだ! しかし、むろんマデギリーク殿には、五つの砦攻略の絵も、既に描かれておるのであろう。それを語り聞かせてくれ!」

 アッティモ将軍の憂いを補うような形で、ワーハグッホ王子が重ねてマデギリークに尋ねた。




〔参考一 用語集〕

(人名)

 アッティモ(ジュリス王国の将軍)

 ガストロンジュ(マデギリーク将軍の第一副官)

 フセグダー(ジュリス王国の将軍。『生ける武神』の異名を持つ)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)

 ワーハグッホ王子(ジュリス王国の王子)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 エーレ城(エーレ地方の主城)

 エーレ地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 ゼフテロス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第二』という意味)

 テタルトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第四』という意味)

 トゥリトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第三』という意味)

 ドクサ城(ドクサ地方の主城)

 ドクサ地方(ミケルクスド國領)

 プロトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第一』という意味)

 ペンプトス(ドクサ地方の五つの砦のうちの一つ。『第五』という意味)


(その他)

 副官(将軍位の次席)



〔参考二 大陸全図〕

挿絵(By みてみん)

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