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【065 ドクサ地方攻略(一)】


【065 ドクサ地方攻略(一)】



〔本編〕

「そして、ジュリス王国との共同戦線を担う軍は、先ず間違いなくマデギリーク様の軍勢! ……となれば、そこにクーロ様とツヴァンソ様が招集されることも先ず間違いないかと……」

 コロンフルが断定するように言った。

 むろん、まだマデギリーク軍がジュリス王国との共同戦線を担う軍になることすら決定していないのではあるが……。

「それは、いつ?!」

 ツヴァンソが、待ちきれない様子でコロンフルに尋ねる。

「予定通りであれば、今月中にここの三つの砦は全て完成するでありましょう。そうなれば、今の半数以下の軍勢でここを守ることが可能になります。さらに、エーレ城も今月の半ばには修復が完了するでありましょう。エーレ城の修復は、リェスシルワが実行しておりますので、修復というよりは完全に前とは別の城として完成するでありましょう。エーレ城が難攻不落の城の一つになるのに間違いないかと……」

「リェスシルワは、築城の名手であるからな!」

「はい! マデギリーク軍の第三副官であり、築城と城の守りには定評のある人物です。リェスシルワ副官の元には、城や砦の守りに精通している部下が多くおりますので、エーレ城修復後、リェスシルワ軍からここの砦にも兵が派遣されるでありましょう」

「……ということは?」

「はい! ツヴァンソ様。我々は、遅くとも九月半ばには、ここの任務が解かれるでありましょう」

「やったぁ!」

「ツヴァンソ! 素直に喜び過ぎだぞ! とにかく残りの期間で、中隊の編成も兼ね実戦に役立てられる隊にしておかないと、父上のお手伝いが出来ないどころか、ジュリス王国の兵からあなどりを受けることにもなりかねない! お前はそれを理解しているのか?!」

「クーロ兄さんこそ、ここでの任務が終わることが前提どころか、ジュリス王国とのドクサ地方攻略に参戦することが大前提の発言になっていますよ! まだ、何も確定していないのに……」

「……確かに、ツヴァンソの言う通りだ! 僕も案外、ここでの任務より次のことを考えていた! これではツヴァンソのことを、偉そうには言えないな!」

「兄さんもなんだかんだで、攻めが好きですものね!」

 二人の兄妹は、一緒になって笑った。

「そういう私も、そろそろここでの任務に飽きがきているところでありますので、お二人の気持ちもよく分かります」

 付け加えるようにコロンフルが、そうつぶやく。

「……意外とコロンフルだけ、ここに残されたりして……」

 ツヴァンソがいたずらっぽく、そう呟いた。



 龍王暦二〇一年八月六日。

 ソルトルムンク聖王国の首都であり王城でもあるマルシャース・グールにおいて、聖王国聖王子とジュリス王国王女との婚姻が行われた。

 新郎はアグリフォージョ聖王子。第五代聖王ジュラーグレースの息子の一人で、ジュラーグレース聖王の嫡男にあたるデルニエ聖王子のすぐ下の弟で、デルニエ聖王子に次ぐ第二位の王位継承者である。

 そして、新婦はネヴィス姫。現ジュリス王国王である第五代ジュリス王ボーデングッホの娘にあたる。

 アグリフォージョ聖王子が二六歳、ネヴィス姫が一六歳。

 この婚姻をもって、ソルトルムンク聖王国とジュリス王国の同盟は成立した。

 さて、八月六日より三日三晩続いたうたげの後、ネヴィス姫は、聖王国王城マルシャース・グールを離れ、ジュリス王国の首都であり王城にあたるヤ・ムゥに戻る。

 本来、アグリフォージョ聖王子とネヴィス姫は婚姻関係を結んだのであるから、共に新郎のいるマルシャース・グールに住むことが原則なのであるが、今回は一旦別居という形となった。

 ジュリス王国からすれば、ネヴィス姫をマルシャース・グールに住まわせるということは、政略結婚である以上、一種の人質のようなものである。

 両国の関係が悪化し、同盟が破棄された場合、ネヴィス姫の生殺与奪せいさつよだつは全てソルトルムンク聖王国側にある。

 実際問題として、王族同士の婚姻が絡む同盟であればそれが当然であるが、今回の同盟には一つの条件が付されていた。

 その条件が、元々ジュリス王国の領地で、二十年前にミケルクスド國に奪われたドクサ地方を、ジュリス王国と聖王国で共同して奪取するというものであった。

 その条件が果たされて、名実ともに正式な同盟が成立するわけである。

 したがってその条件が達成するまでは、ネヴィス姫は人質というていになるマルシャース・グールには住まない。

 それが、両国の同盟における条件の一つであった。

 八月に婚姻が行われ、両国の同盟が成立して二か月後の一〇月。

 聖王国の一軍が、ジュリス王国の首都ヤ・ムゥに到着する。

 聖王国から派遣されたその軍は、大方の予想通り、聖王国筆頭将軍であるマデギリーク将軍の軍であった。

 そしてその軍の中に、九月までエーレ地方に派遣されていたコロンフル副官の軍も含まれていた。

 そのコロンフル軍の中に、クーロ中隊とツヴァンソ中隊の二中隊も当然含まれていた。


 ジュリス王国の王城ヤ・ムゥから北北東に八十キロメートルのところにあるビャヌ地方。

 ビャヌ地方の中心都市ビャヌ城からさらに北東十キロメートルのところに、ブイトゥィイ城がある。

 そのブイトゥィイ城から東に一キロメートルの地点に、ミケルクスド國との国境線が北から南に伸びている。

 そこに国境線が出来たのは、わずか二十年程前であり、その国境線の先がミケルクスド國領のドクサ地方となる。

 元々ジュリス王国領であった地である。

 龍王暦二〇一年一〇月一〇日。

 ビャヌ地方のブイトゥィイ城の外に、今回、ドクサ地方奪回のために派遣されたジュリス王国、ソルトルムンク聖王国連合軍が勢揃いしている。

 総勢二万五千、内訳はジュリス王国一万に、ソルトルムンク聖王国一万五千である。

「一堂集まったようなので、顔合わせを兼ね、最初の軍議を催そう!」

 ブイトゥィイ城の一室に集まった将軍たちを前に、一人の男がこう告げる。

 そう広くない軍議の部屋の真ん中に、幅十メートル、長さ三十メートルの長机が置かれ、机のそれぞれの位置に数人が座っている。

 最初に口を開いた男は、その長机の短いへりの右側に座っている。

 そして短い縁にもう一人の男が座り、残りは両側の長いへりに並んで座っていた。




〔参考 用語集〕

(人名)

 アグリフォージョ聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 クーロ(マデギリークの養子。中隊長)

 コロンフル(マデギリーク将軍の副官)

 ジュラーグレース聖王(ソルトルムンク聖王国第五代聖王)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。中隊長)

 デルニエ聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 ネヴィス姫(ジュリス王国の王女)

 ボーデングッホ王(ジュリス王国第五代王)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)

 リェスシルワ(マデギリーク将軍の副官)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国。聖王国と同盟を結ぶ)


(地名)

 エーレ城(エーレ地方の主城)

 エーレ地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 ドクサ地方(ミケルクスド國領)

 ビャヌ城(ビャヌ地方の主城)

 ビャヌ地方(ジュリス王国の一地方)

 ブイトゥィイ城(ビャヌ地方の城)

 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

 ヤ・ムゥ(ジュリス王国の首都であり王城)


(その他)

 中隊(小隊五部隊で編成される隊。五十人規模の隊)

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