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【057 エーレ城奪還戦(十八) ~副官コロンフル~】


【057 エーレ城奪還戦(十八) ~副官コロンフル~】



〔本編〕

 ジュスウ将軍の強行補給軍による強行的な攻めで、ミケルクスド兵も死傷者は二百ほど出したが、それより深刻なのは、強行的な攻めにも関わらず、正午までの三時間で一キロメートルしかエーレ城に近づけていないということであった。

 聖王国のコロンフル副官も、ただなす術なく負け続けているわけではなく、ちゃんと後方に何か所もの防御柵の設置や、伏兵などを配置し、敵が防御柵などを突破して、そのまま一気に突き進もうと進軍しても、そこからわずか五十メートルの地に新たな防御柵があり、そこに弓兵が配置されており、その兵から数十本の矢が放たれる始末であった。

 その上、防御柵を突破した強襲補給軍の横合いから伏兵が現れ、補給軍を分断しようと攻撃する。

結局、防御柵の弓兵と横合いから仕掛けた伏兵については、ミケルクスド兵により次の瞬間には蹴散らされてしまうが、その間それなりの時間が消費され、強襲補給軍は柵を突破した勢いを、そのまま流れとして中々つかむことができない状況であった。

 弱兵である聖王国兵なりの運用方法を、コロンフル副官は熟知していたのであった。

 例えば、一つの拠点にこだわらない。

 または、攻められたら背中を向けてでも一目散に逃げる。

 むろん、それによってあっさり討たれる兵もいるが、逃げ延びた兵は、その後方の拠点で敵への備えをする時間を確保できる。

 そしてその戦い方にあたって、クーロ小隊を始めとする五小隊の特殊弓兵隊の活躍は、非常に有益に働いた。

 五十メートル以上の射程圏内を持つ上位弓兵が多いので、一つ前の五十メートル先の防御柵を攻めているミケルクスド兵を狙うことができるからである。

 一つ前の防御柵で戦っている聖王国兵の隙間を抜けて射かけられるクーロたちの矢は、それだけでミケルクスド兵の戦意を一瞬とはいえ削ぎ、攻めへの積極性を失わせる。

 一瞬でも戦意が削げれば、敵がその戦意まで再び回復するのに、数秒から場合によっては数分の時を有し、その間に、下がりかけていた聖王国兵の士気も盛り返すことができる。

 一回一回は微々たる効果でも、何度も積み重なればそれなりに大きな効果となった。

 コロンフル副官率いる別動隊が大崩れしない理由の一つがそれであった。

 第四副官といってもコロンフルは、マデギリーク将軍の副官の一人である。

 コロンフルは、そういった時間をかけて粘る戦いにけた指揮官であり、そういった指揮官を別動隊の指揮官に任じたマデギリーク将軍の人選の妙ともいえる。

 ジュスウ将軍も、ここまで数々の失態による結果故の今の窮状ではあるが、それでも実際に戦闘をすれば、最前線に立ち部類の強さで、聖王国兵を次々となぎ倒していく。

 一四日の一日間でジュスウ将軍は、一人で百人以上の聖王国兵を葬り去った。


 それでも、このようなコロンフル副官の戦法とは別に、聖王国軍を蹴散らしきれない大いなる理由が二つ。

 一つが、五千の主力部隊の後に続く兵がいつまで経ってもこの場に到着しないことである。

 補給運搬部隊の救出に向かった主力部隊三割にあたる二千五百の兵は、既にその場に存在していない夜襲を仕掛けたクーロ達特殊部隊への警戒を解くことができないまま、荷車の修理、並びに死んだホースに代わって、自分たちで補給物資を運ぶといった作業に専念していたのであった。

 ジュスウ将軍が、補給物資を全て運ぶことを最優先で指示したため、救出部隊の兵は黙々とそれを遂行せざるを得なかった。

 長期的に考えれば、補給物資をエーレ城に運び込むことは正しい戦略なのであるが、マデギリーク将軍がエーレ城を力攻めしている以上、とにかく少しでも早く、大量の兵を援軍としてエーレ城に向かわせる方が正解であった。

 マデギリーク軍さえエーレ城周辺から撤退させれば、補給物資の運搬は、その後何の支障もなく行える。

 少なくとも、ミケルクスド國国境からエーレ城までのルートにまとまった聖王国軍はいないのであるから……。

 さらに、待機を命じられた主力部隊の約一割に当たる八百の兵は、よりにもよって補給運搬部隊の応援要請に応じ、エーレ城と反対の方向へ部隊を移動させてしまった。


 そして大いなる理由のもう一つが、ミケルクスド國の飛兵が全く功を奏しなかったことである。

 飛竜ワイヴァーンに騎乗する最強の飛兵ワイヴァーンナイトはいなかったが、それでもグリフォンナイトやホークナイトといった飛兵は強襲補給軍に実際に編成されていた。

 それらの兵を効果的に活用し、幾重の防御柵を無視することにより、コロンフル軍の本陣を一気に強襲できたはずなのであるが、ジュスウ将軍はそれをすぐには実行に移さなかったのであった。

 ジュスウ将軍が一四日の午後、飛兵をようやくコロンフルの本陣急襲に運用した頃には、時遅く、クーロはその対応として、クーロ小隊をコロンフル副官の本陣まで退かせた。

 つまり、本陣にパインロとその二人の弟子、ズグラとヒルルがいた。

 その三人の弓兵により、本陣に急襲をかけたミケルクスド國自慢の飛兵は、続々と撃ち落とされる。

 結局、ジュスウ将軍の強襲補給軍は、一四日の一日で三キロメートルしか前進することができなかったのであった。



「コロンフル様! 急報です!!」

 コロンフルの本陣に、一人の諜報兵が馬皮紙に記された一報を伝える。

 馬皮紙を読んだコロンフル副官の顔がみるみる蒼ざめる。

「いかがされましたか! 副官!」

 参謀の一人が、不安げに尋ねる。

「……今から一時間の後、ジュスウ将軍の強襲補給軍に五千の兵が新たに加わる! 補給運搬部隊と残りの主力部隊がついにここに到達するとのことだ!」

 ジュスウ将軍とコロンフル副官の軍が戦いを始めて二日後にあたる四月一六日の午後一時。

 ついにジュスウ将軍の率いる強襲補給軍全軍がここに揃う。

 個々の兵の質の圧倒的な差から、倍の兵数であったにもかかわらず、聖王国兵はこの二日間で三千近くの死傷者を出し、対するミケルクスド兵はその十分の一の三百しか死傷者を出していない。

 その上、コロンフル副官の本陣は、ここ二日間で十キロメートル後退し、いよいよ防御柵といったハード面の防御物質は底をつこうとしていた。

 つまり、ここからエーレ城に向かう道程どうていに、一切防御柵などがないという意味である。




〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(マデギリークの養子。小隊長)

 コロンフル(マデギリーク将軍の副官)

 ジュスウ(ミケルクスド國の将軍)

 ズグラ、ヒルル(パインロの直弟子、クーロ隊の一員)

 パインロ(クーロの弓の師であり、クーロの隊の一員)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)


(地名)

 エーレ城(エーレ地方の主城)


(兵種名)

 ホークナイト(第二段階のジャイアントホークに騎乗する飛兵)

 グリフォンナイト(第三段階の鷲獅子グリフォンに騎乗する飛兵。鷲獅子飛兵とも言う)

 ワイヴァーンナイト(最終段階の飛竜に騎乗する飛兵。竜飛兵とも言う)


(竜名)

 ワイヴァーン(十六竜の一種。巨大な翼をもって空を飛ぶことができる竜。『飛竜』とも言う)


(その他)

 小隊(この時代の最も小規模な集団。十人で編成される)

 副官(将軍位の次席)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

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