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【055 エーレ城奪還戦(十六) ~脱出口侵入戦(終)~】


【055 エーレ城奪還戦(十六) ~脱出口侵入戦(終)~】



〔本編〕

「わぁぁぁ~!!」

 脱出口に、突然響き渡る大人数の喚声。

 それは、ツヴァンソ小隊の後ろから聞こえてきた。

 ツヴァンソ小隊と戦っているミケルクスド國兵は、その喚声に驚き、ツヴァンソ小隊の後ろをうかがう。

 そこには、本道を埋め尽くすように駆けてくる大人数の敵兵の姿があった。

 十人、二十人などではない。

 道幅が狭いので五人ぐらいにしか横に広がれないためその兵の総数は一瞬では把握できないが、列は果てしなく続いているように見える。

「敵の増援だ!!」

 ミケルクスド兵が口々に叫ぶ。

「やぁぁぁ~!」

 その時、駆けてくる増援の大音声とは、別の高い声が脱出口に響き渡る。

 ツヴァンソの声であった。

 そして、彼女は声と共に、ゲイルーナに対し初めて攻撃を仕掛ける。

 ツヴァンソの下段から上段への切り上げられた剣は、ゲイルーナの振り下ろす鉄棒と激しくぶつかった瞬間、直径三十センチメートルのその太い鉄棒を、まるで豆腐を包丁で切るかのように、何の抵抗もなく真二つにしていた。

 ツヴァンソの剣は、それで止まらず、そのまま自分より三十センチ高いゲイルーナの首を、その次の瞬間には落としていた。

 一瞬の出来事であったが、そのの動きも非常に速かった。

 ツヴァンソは、ゲイルーナの首を切り落とした剣をいったんは鞘におさめ、ツヴァンソ自身はそのまま前進する。

 彼女の前には、頭部を失ったゲイルーナの巨漢が、まだ立ってはいたが、彼女は全く頓着しなかった。

 結果、ゲイルーナの巨体は、ツヴァンソに体当たりで、そのまま後方に大きく吹っ飛び、後ろのミケルクスド兵を数人なぎ倒した。

 そして、その吹っ飛ばされたゲイルーナの死体の後ろから、ツヴァンソが飛び出し、再び抜いた剣で、そこにいる敵を片っ端から切っていく。

 そのツヴァンソの剣を振り回しながらの全力疾走を、脱出口本道にひしめくようにいたミケルクスドの兵が、一瞬として止めることが出来ないどころか、その疾走の速度すら全く緩めさせることが出来ず、ミケルクスドの兵は、次から次へと切り伏せられていく。

 ツヴァンソ小隊の面々も、ツヴァンソのその動きに呼応し、走りながら目の前の敵を倒していく。

狭い本道にひしめいていたミケルクスド兵は、全員がパニック状態におちいった。

 脱出口の通路は狭いため、真後ろにしか逃げ場がなく、逃げようとした味方同士がぶつかり合い、それがさらなるパニック状態を生み、ミケルクスド兵は一人として、ツヴァンソ小隊と向き合って戦う者はいなくなった。

 ゲイルーナから離れること約五十メートル後方で、続々と投入されてくる兵を自分の前に送っていた四隊長の一人トルメンタも、ツヴァンソの動きに慌てふためき、さらに後方に引こうとしたが、味方が邪魔してなかなか後ろに下がれない。

 結局トルメンタも、ゲイルーナの死からわずか五十秒後、ツヴァンソに、逃げようとしていた背中越しに首をかききられ、こと切れる。

 ものの数秒で、二人の指揮官を失ったミケルクスド兵は、ますますパニック状態となり、味方を踏みつけ合いながら、我先へと全員が脱出口の入り口目がけて逃走し始めた。

 緩やかな坂になっている本道を一気に駆け、ツヴァンソ小隊は本道入り口(ツヴァンソ達から言えば『出口』)に辿り着く。

 そのツヴァンソ小隊に、千人の聖王国兵が続く。

 四月一六日午後三時二十分、ツヴァンソ小隊と千人の聖王国兵は、脱出口からエーレ城内への侵入を無事に果たしたのであった。



 さて、少し時をさかのぼる。

 四月一一日午後一時、エーレ城へ急ぎ向かっていたジュスウ将軍率いる強襲補給軍の主力部隊は、後方からついてきているはずの補給運搬部隊が、敵の奇襲にあったという報を受ける。

「どういうことだ!!」

 ジュスウ将軍は、その第一報の内容が信じられず、それを伝えた兵を大声で怒鳴りつける。

「敵は、我らの前方にいるはずではないか?! 何故、後方の補給運搬部隊が敵の奇襲を受ける! それは、敵が我らを混乱させるために流した偽の情報に違いない!!」

 先を急いでいるジュスウ将軍からすれば、敵の偽情報で間違いないと思う気持ちでいっぱいであった。

 しかし、真実は無情であった。

 その後、続々と後方の補給運搬部隊が奇襲を受けたという報が届く。

 さすがのジュスウ将軍も、奇襲に関する報が第十報を数えたところで、強襲補給軍の主力部隊に全軍停止を命じた。

 ジュスウ将軍は、全軍に停止を命じた後、参謀を集め軍議を開く。

 こういったところで、ジュスウ将軍の判断能力の愚鈍さが露呈する。

 採るべき選択肢は、主に三つ。

 一つは、全軍で後方の補給運搬部隊の救出に向かう、一つは、奇襲を受けた補給運搬部隊の処置は、運搬部隊に任せ、とにかく主力部隊は、このままエーレ城の応援に急いで駆けつける、そしてもう三つ目が、主力を運搬部隊の救出と、エーレ城への援軍の二手に分ける。

 最後の選択肢は、分ける二手の割合をどうするかの問題は残されるが、いずれかを指揮官であるジュスウ将軍が即決し、直ちに行動に移せば良かった。

 それぞれにメリット、デメリットがあり、どれが一番良いかの判断はこの段階では分からないが、ただはっきりしているのは、この場に主力全軍を停止させて、軍議を開いてそれを決めようとしていることが、最も下策であるという点については、異論の余地はなかった。

 実際に、軍議では補給運搬部隊の救出に行くべきと、このまま主力部隊はエーレ城の応援に急行するという、二つの意見を中心に参謀が割れ、そこに両方の折衷案も加わったため、容易に結論が出ぬまま、何と一一日当日だけでなく、一二日の昼までという、丸一日という貴重な時間を軍議に費やしていた。

 結局、主力の六割が、このままエーレ城に向かい、残りの三割が補給運搬部隊の救出に戻り、さらに残った一割が、この場で待機して、エーレ城合流、運搬部隊救出のどちらにも対応するといった、極めて凡庸ぼんような案で最終的に決定した。




〔参考 用語集〕

(人名)

 ゲイルーナ(新しい四隊長の一人)

 ジュスウ(ミケルクスド國の将軍)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。小隊長)

 トルメンタ(新しい四隊長の一人)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)


(地名)

 エーレ城(エーレ地方の主城)


(その他)

 四隊長(エンテ将軍の配下の四人。死隊長とも呼ばれている)

 小隊(この時代の最も小規模な集団。十人で編成される)

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