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【041 エーレ城奪還戦(二)】


【041 エーレ城奪還戦(二)】



〔本編〕

 さて、ここで指揮官と軍組織の規模について簡単に説明する。

 軍組織として一番小さな組織が小隊であり、その指揮官が小隊長である。

 小隊は小隊長を含めて十人で編成されており、今のクーロとツヴァンソの役職が、その小隊長である。

 そして、隊の規模が大きくなるにつれて、中隊、大隊、場合によっては中隊と大隊の間に上位中隊なるものも存在したりする場合もある。

 しかし、いずれも軍の組織ではあるが、区分的には『隊』あるいは『部隊』と呼称され、『軍』とは呼ばない。

 『軍』とよべる組織は、大隊の上の小官からになる。

 小官は千人規模の組織であり、小官という言葉は、千人規模の組織を表すと同時に、それを率いる指揮官のことも小官とひょうす。

 故に、それを明確に区別する場合の言葉として指揮官の小官を『千人将』、あるいは組織としての小官を『小官軍』と言い分けたりする。

 軍の組織は小官、中官、大官ときて、その上位が将軍の率いる軍ということになるが、隊組織である小隊、中隊、大隊については、ヴェルト八國全てで存在するのに対し、小官以上は軍組織として存在しない國もある。

 それは、純粋にそれぞれの國の人口規模による軍、つまりは國全体の兵の動員限界数に起因する。

 八國のうち、最も人口規模が小さい國がジュリス王国であり、人口は二百万である。

 一般的に常に動員できる兵の限界数が、人口の一パーセントと謂われているので、それによるとジュリス王国の動員限界兵数は、二万ということになる。

 ちなみに、小官が千人規模の軍、中官が三千規模、そして大官が五千から六千規模の軍のことを指す。

 その上位が将軍ということになると将軍は単純に一万規模以上の軍を率いる指揮官ということになってしまうが、それでは理論上、ジュリス王国には二人しか将軍が存在しないことになってしまう。

 さすがにそれはないので、ジュリス王国では将軍が三千や五千といった、理論の上からいえば中官や大官が率いる規模の軍を実際に指揮している。

 同じことが、ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國を除く残り五國にも当てはまる。

 なぜなら、その五國は全て人口が三百万なので、動員限界兵数も三万ということになるからである。

 バルナート帝國においても人口は四百万なので、純粋に官レベルの軍組織が大・中・小と三つ全て存在しているのは、人口が九百万規模のソルトルムンク聖王国ぐらいであろう。


 続いて、副官について説明する。

 副官は、将軍の次席を表す言葉であり、一定の規模の軍を率いる指揮官という意味はない。

 ましてや、副官が率いる軍組織を表す言葉は存在しない。

 副官とは、将軍の次席――意味合いとしては将軍補佐的な者を表す言葉だが、これも一人とは限らず、複数いることもある。

 今回のマデギリーク将軍の軍でいえば、副官が四人いる。

 将軍補佐、あるいは将軍代理のような役割を担う者と捉えればよい。

 したがって、副官が何人の兵を率いるかは、その将軍の率いている軍の総兵数、将軍に付き従っている副官の数、そして副官に与えられた任務により、その都度変化する。

 将軍によって軍が編成され、その中にあって初めて副官という役職が個別に任じられるといった感じととらえればよい。

 実際、マデギリーク軍の第四副官に任命されたコロンフルは、本来は千人を率いる小官という役職ではあるが、今回の作戦では、将軍に代わり敵強襲補給軍を迎撃する軍の長を任じられたので、この作戦のあいだ、彼は一万規模の軍を指揮することとなったわけである。



 話を本筋に戻す。

 マデギリーク将軍は、全軍の半数に当たる一万を割き、これからエーレ城に向かってくる敵強襲補給軍迎撃に、コロンフル副官を指揮官として向かわせる。

 しかし厳密言えば、コロンフルの任務は強襲補給軍の迎撃ではない。

 あくまでも、強襲補給軍の運搬している物資を、エーレ城内に持ち込むのを阻止する役割であった。

 迎撃しないのではなく、迎撃できないのである。

 ミケルクスドの強襲補給軍も、コロンフル副官の迎撃軍も同数の一万なので、迎撃の可能と一般的には考えられる。

 しかし、ヴェルト大陸基準である兵評価『一』のソルトルムンク聖王国兵と、『三』評価のミケルクスド國兵では、同数では迎撃どころか、エーレ城に近づけさせないようにするのも至難の業と言わざるを得ない。

 評価の数字が、純粋のその倍数ではないと前述したことがあるが、それでも『一』評価の聖王国兵と『三』評価のミケルクスド國兵では、せめて聖王国側が後五千多い、一万五千ぐらいなければ、敵の侵攻を食い止めることはできないのである。

 コロンフル軍が、全員戦闘できる迎撃軍という性質の軍であり、一方で敵が、兵の半数が兵糧を運搬するために使用される補給軍という性質の軍であっても、同数では足をとどめさせることすら難しい。

 この國別の兵の強弱は、一朝一夕いっちょういっせきに解決できる問題ではないので、聖王国が抱えている事情は、非常に深刻といえよう。

 特に十人規模の小隊レベルといった少人数組織であれば、一人の突出した力で、その法則をも覆せるかもしれないが、一万という軍規模では、その兵の強弱は直接影響する。

 一万は、個の力で決して法則を覆すことができない規模である。


 それでも、指揮官の質、さらには戦略や戦術によって、その差を埋める又は、覆すことは不可能ではない。

 それを踏まえた上でのマデギリーク将軍の采配が、コロンフル率いる一万の迎撃軍であった。

 今回、そのキーになるのが、コロンフル迎撃軍に組み込まれたクーロ小隊であった。

 クーロ小隊の動き等の詳細は後述するとして、マデギリーク将軍自身は、エーレ城攻略の指揮を直接とることになる。

 一万のマデギリーク主力軍の役割は、ここで漫然まんぜんとエーレ城内の兵糧が尽きるのを待つ籠城戦を続けるのではなく、積極的に一万全ての兵を動員してエーレ城を力押しで陥落させることであった。

 マデギリーク将軍は、一万の軍を東西南北、四方全てに振り分け、全方位から積極的にエーレ城を攻め寄せた。

 マデギリーク将軍の第一から第三の副官に、各方角の指揮をとらせ、さらに四方のうち残った一方いちほうの指揮はマデギリーク自らの手で行った。

 ここに、マデギリーク将軍によるエーレ城攻略の火蓋ひぶたが切って落とされる。

 軍議の翌日にあたる四月九日早朝の出来事であった。




〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(マデギリークの養子。小隊長)

 コロンフル(マデギリーク将軍の副官)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。小隊長)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 バルナート帝國(ヴェルト八國の一つ。北の強国)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国)


(地名)

 エーレ城(エーレ地方の主城)

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