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【034 クーロ小隊編成(中) ~パインロとの邂逅~】


【034 クーロ小隊編成(中) ~パインロとの邂逅~】



〔本編〕

「クーロ様! クーロ様からご依頼いただいておりましたパインロなる弓兵についての素性が分かりました!」

 マデギリークの執事ナヴァルは、クーロにこう告げる。

 クーロはマデギリークと共に語らいだ翌日には、自分の小隊の編成に向けて動き出していた。

 そして、弓兵のパインロについては、名前と凄腕の『弓兵』ということしか分からないため、執事のナヴァルを通じて、彼の調査を依頼したのであった。

 ナヴァルが、クーロにパインロについての調査を報告したのは、クーロが依頼して三日後のことであった。

「お時間がかかりまして申し訳ございません!」

 ナヴァルは、先ずはクーロに調査に時間がかかったことを詫びた。

「しかし、それにはわけがございます。なぜなら、パインロなる弓兵は、旦那様所属の軍の兵では無かったためでありまして……」

 クーロもこの報告には驚きを隠せなかった。

 今回の五千の兵は、全て父上であるマデギリークの兵か、父の領地の民から召集されたものだと思っていたからであった。

「パインロ殿は、今回の戦いでは、イムベという中隊長の隊に所属しておりましたが、イムベ自身も、上官からの命によって、パインロ殿を所属させたということで、中隊の一員ではありましたが、イムベ所属のどの小隊にも所属しない、いわゆる遊撃兵のような位置づけだったようでございます。

 結局、イムベ自身も、所属された日以外は、自分の中隊内にいたのか、そうでないのかも把握していない状況でございました」

「……それでは、今はその中隊にはもういないということか?」

「そうなります」

「……マデギリーク軍の者でない者が紛れ込んでいたということか。それはどういった事情だったのだ?」

「それにつきましては、クーロ様にもお話しするわけにはまいりません」

「その口ぶりだと、ナヴァルは知っているということか」

「はい! ただ、これは将軍直轄の上層部の者だけが知り得る事柄。そこのところはお察し下さい!」

「……」

 クーロはしばし黙っていたが、

「分かった! それで、パインロ殿の所在ももう分からないということか?」

「所在につきましてもお話はできません! ただ……」

「ただ……?」

 クーロはナヴァルの最後の一言を耳ざとく聞き逃さなかった。

「クーロ様が、どうしてもパインロ殿と連絡をとりたいというのであれば、書簡をおしたため下さい。それを、パインロ殿の元に届けることは可能であります。

 パインロ殿が、クーロ様の書簡を読まれ、クーロ様に興味を持たれましたら、きっとパインロ殿の方から何らかの反応リアクションがあるのではないでしょうか? その方法しか会う手立てはございません」

「分かった!」

 クーロは即答する。

「ナヴァル、ありがとう。早速、パインロ殿に向けて、自分の思いをしたためよう! ナヴァル、それをパインロ殿に届けてもらいたい」


 パインロに書簡をしたためて三日後。

 クーロは、パインロに会うため、指定の場所に一人で向かった。

 パインロから前日に届いた書簡に、その場所と時間が指定してあった。

 クーロがその指定された場所に到着して、しばらくすると一頭の、鷲の頭と獅子の身体を持つ飛行動物、グリフォンがそこに降り立つ。

 そのグリフォンの背に一人の人物が乗っていた。

「クーロ様でございますか?」

 その人物がクーロに尋ねる。

「そうです!」

「パインロ様からの使いの者です。グリフォンの背にお乗りください。パインロ様のいらっしゃる所までご案内いたします」

 クーロが頷き、そのグリフォンの背に乗る。

 二人を乗せたグリフォンは、そのまま空高く舞い上がり、東の方角に飛び去った。

 これには、密かにクーロを尾行していた者たちがおり、その者たちが慌てるが、いずれにせよ、これ以上後をつけることができなくなってしまったのは確かである。

 クーロを密かに尾行していたのは、クーロの身辺を世話する者達であった。

 クーロにパインロからの書状が届いた時、それらの者達は、クーロに同伴することを強く要望した。

 タシターン地方領主マデギリークの養子であるクーロの身に何か起これば、重大事だからである。

上層部の秘密とはいえ、クーロの身辺の者たちからすれば、氏素性うじすじょうも分からないパインロなる者の呼び出しに、一方的に応じるわけである。

 あるいは敵の間者かもしれない者の元へ、クーロ一人をいかせるわけにはいかない。

 しかし、クーロは誰の同伴も絶対に許さなかった。

 困り果てた身辺の者たちは、クーロに内緒で、クーロを尾行したというわけである。

 しかし、待ち合わせの場所に現れたグリフォンにクーロが乗ったことにより、飛行する動物などを用意していなかったクーロを尾行していた者たちの追跡は、ここで頓挫とんざする。


 さて、クーロの乗ったグリフォンは、二つほど山を越え、二時間の後、鬱蒼うっそうとしげる森の中に降下した。

「クーロ様。申し訳ございません。このような形でしか対面できないことをお許しください」

 森の中にある小屋に、パインロは一人座っており、クーロをそこで出迎えた。

「いえいえ、あの戦いの際には、パインロ殿のおかげで、強敵を討ち果たすことができました。ありがとうございます」

 小屋に通されたクーロが、パインロにこう挨拶を返す。

「クーロ様のご書簡は読ませていただきました。私をクーロ様の小隊の一員にされたいとのこと。非常にありがたいお申し出なれど、それはお受けできかねます。

 クーロ様のご書簡に対し、書簡のみでのお断りではさすがに申し訳なく、直接お会いして辞退したほうが良いと思い、クーロ様にこのような形でご足労いただきました。逆に、クーロ様に足を運ばせてしまったことのほうが失礼にあたったかもしれませんが、そこはご容赦いただければと……」

「パインロ殿! 理由をお聞かせいただけますか?」

 クーロがそう尋ねた。

 パインロからすれば、クーロは当然、自分の要望を受け入れられたと思って、ここに赴いたはずである。

 パインロの断りに対し、驚きも怒りもしないクーロが、むしろ不思議に思えた。

「理由は、私自身がある任務のために、マデギリーク軍に特別に加わったこと。その任務につきましては、クーロ様にも明かすことが叶いません。そして、もう一つの理由は、私自身が一小隊の一員になるような身分ではないということであります」

 パインロの言いぶりは丁寧ではあったが、要は、特殊な任務で今回の戦いに参加したので、他の兵のように敵兵を撃退するために参加したのではないということ、そして自分は一小隊の一員になるほど兵のレベルが低くないということを暗にほのめかしたのであった。

 クーロが馬鹿でなければその真意は理解できるはず、今度こそクーロが怒り出すかと思えば、案に相違して、クーロはにっこりと微笑み、パインロにこう返す。

「そうは思っておりました。パインロ殿の弓の腕を見れば、それはおのずと分かります。きっと私の要望についても、お断りなされるであろうと思っておりました」

「……では、何故?」

 パインロからすれば、逆に意外ともいえるクーロの反応であった。

 マデギリークの養子であるクーロが、自分が小隊長になった時に、そのメンバーとして誘って、断られる人物がいると考えるはずがないと思っていたからであった。

 パインロの考えによると……。

 むろん、パインロがマデギリークの純粋な兵でないとしても、クーロ自身が書簡をしたため、そして自らこちらの指定する場所まで向かう。

 それも、指定の場所でグリフォンに乗せられ、尾行も全てまかれた状態となり、まさに一人で来た、ここまでして、断られるとは普通考えないであろう。

 領主であり、中央からの信任も厚いマデギリーク将軍の養子ではあるが、『将軍の子』という特別な存在なのであるから、クーロは……。

 パインロは、クーロに少し興味を抱き始めている自分に気づいた。




〔参考 用語集〕

(人名)

 イムベ(マデギリーク軍の中隊長の一人)

 クーロ(マデギリークの養子)

 ナヴァル(マデギリークの執事)

 パインロ(謎の上位弓兵)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(地名)

 タシターン地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)


(その他)

 グリフォン(鷲の頭と翼、獅子の体を持つ動物。『鷲獅子しゅうしし』とも言う)

 小隊(この時代の最も小規模な集団。十人で編成される)

 小隊長(小隊は十人規模の隊で、それを率いる隊長)

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