表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/281

【025 ふたりの初陣(十七) ~敵軍撤退~】


【025 ふたりの初陣(十七) ~敵軍撤退~】



〔本編〕

 一月三一日の夜半、日付が二月一日に変わるわずか一時間前の午後十一時。マリーティの町はずれの荒れ地に駐屯していたミケルクスド國軍は、いきなりの夜襲に遭遇した。

 結論から言えば、夜襲を仕掛けた兵の数は千程度であったが、マデギリーク将軍と対峙していたミケルクスド國軍からすれば、その対峙している正面でなく、左側面に夜襲を仕掛けられたのである。

 ミケルクスド國軍が、夜襲を仕掛けられる直前まで気づかなかった隠密性と、その千の兵全てが精鋭兵という強軍団であったため、ミケルクスド國軍は大混乱に陥った。

 マデギリークの部下ですら、夜襲を仕掛けた兵の数を三千や五千に見間違えたほどであるから、夜襲を受けたミケルクスド國兵たちにとって、その数は八千弱となった自分たちを上回る数に感じたかもしれない。

 いずれにせよ、このままこの場にいては全滅をも免れないと感じたエンテ将軍の判断で、夜襲からわずか三十分後の午後十一時三十分、ミケルクスド國軍全軍に撤退の命が発せられ、日が変わる二月一日午前零時三十分には、この地からミケルクスド國兵は全軍撤退したのであった。


「マデギリーク将軍! 久しいなぁ~。よく俺が到着するまで持ちこたえてくれた! 将軍がここで持ちこたえてくれたおかげで、我が國へ進攻しようと国境付近まで出張っていた日和見ひよりみの各國の軍が、自国へ帰るであろう。いやぁ~将軍には感謝する!」

「いえいえ、ブーリフォン聖王子様こそ……。疾風の如き、お早いご着陣で、わしとわしの軍が救われました! さすがは闘神の申し子と言われるだけのことはございます!」

 千の騎兵を率いて夜襲を仕掛けた指揮官の青年が、マデギリーク将軍の本陣を訪れ、将軍とこのような会話を交わした。

 聖王国の王の息子――聖王子、そういった高貴な身の上でありながら、一般兵と共に戦場を駆け、闘神の申し子と呼ばれ、敵から恐れられ、兵たちからは慕われる十八歳の青年王子――ブーリフォン。

 今回、マデギリーク将軍の援軍として、聖王国王城から派遣された中央軍の指揮官を務める若き聖王子であった。


「とりあえず千の騎兵の早駆けで、敵の諜報兵をも置き去りにしたことにより、敵の虚をつくことが出来た。本来であれば、このまま退却する敵を追撃して、奪われたエーレ地方全て奪還したいところではあるが、何分なにぶん夜襲ゆえ、敵を混乱におとしいれることが出来たが、さすがに日が明ければ、俺の千に将軍の五千を加えても、敵軍の数に及ばない寡兵かへい

 今回の夜襲で、予定では二千ぐらいは敵兵をほふり、四散した残党兵を存分に叩くつもりであったが、敵は五百余りを失っただけ! 偵察兵によると既に残りが集結を終えているとのこと。さすがはミケルクスドのエンテ将軍の采配といったところか!」

「無理もございません!」

 マデギリーク将軍も残念そうではあった。

「我が聖王国兵と敵のミケルクスド國兵では、兵の質が違い過ぎます。聖王子と私が兵を率い、さらに敵の数を上回って、初めてミケルクスド國兵を我が領土から追い落とせるでありましょう。

 今は、王子の残り四千の兵の到着を待って、エーレ城へ進軍いたしましょう。エンテ将軍が、こちらを寡兵と侮り、再びここに攻め寄せてくる、又は、この周辺で我らを待ち伏せするのであれば、こちらとしても、敵を打ち破る手段もいくつか考えられますが、おそらく、エンテ将軍はエーレ城まで撤退するでありましょう。

 それであれば、我らも簡単にミケルクスド國軍をエーレ地方から追い落とすことは出来ません!」

「そうだな! とりあえず、残り四千の中央軍の到着をここで待つとしよう。いずれにせよ、ここの戦いは終わりだ!

 ……ところで、将軍には二人の子がいると聞いている。その二人が初陣で、大いなる手柄を立てたとも……。時間もあることだ。是非、その二人に会ってみたい! 未来の大将軍たちに……」


 クーロとツヴァンソの二人は、マデギリーク将軍に呼ばれ、ブーリフォン聖王子と初めて対面した。

 ブーリフォン聖王子から二、三ねぎらいの言の葉をいただき、一分足らずの対面ではあったが、クーロとツヴァンソはこののち、何回もこの聖王子と顔を合わせることになるとは、この時はお互い夢にも思っていなかった。

 いずれにせよ、敵将軍エンテは七千余りの兵と共に、最初の侵略拠点であるエーレ城に引き上げていった。

 この後、聖王国は、ミケルクスド國からエーレ地方を奪還するという大きな目標はあるが、少なくともミケルクスド國軍のさらなる侵攻は食い止めたわけである。

 二日後の二月三日には、予定通り、残りの中央軍四千が、マリーティの町に到着した。

 四千の中央軍を率いているのは、今回の中央軍の副将であるアルエット将軍で、中央軍大将のブーリフォン聖王子は、アルエット将軍に中央軍四千五百を預け、そのまま、敵エンテ将軍のこもるエーレ城攻略に向かわせた。

 ブーリフォン聖王子は、残りの中央軍五百と共に、ソルトルムンク聖王国の首都であり王城でもあるマルシャース・グールへと帰還する。

 マデギリーク将軍も五千の兵と共に、自分の領地タシターン地方へと帰還する。

 ブーリフォン聖王子は、マデギリーク軍と共に、タシターン地方まで赴き、そこで一週間ほど滞在し、その後、マデギリーク将軍を伴い、王城マルシャース・グールに帰還した。

 龍王暦二〇〇年二月一五日のことである。

 マデギリーク将軍は、王城に一週間ほど滞在し、その間に、聖王ジュラーグレースから、直接ねぎらいの言の葉を賜る。

 王城に滞在していたマデギリーク将軍が、タシターン地方に戻ったのが、同年三月三日。

 未来の六大将軍、クーロ並びにツヴァンソの初陣は、三日間の戦いをもって終了した。




〔参考 用語集〕

(人名)

 アルエット(聖王国の将軍)

 エンテ(ミケルクスド國の将軍)

 クーロ(マデギリークの養子)

 ジュラーグレース聖王(ソルトルムンク聖王国第五代聖王)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹)

 ブーリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の聖王子)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。将軍)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)


(地名)

 エーレ城(エーレ地方の主城)

 エーレ地方地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 タシターン地方(ソルトルムンク聖王国の一地方)

 マリーティ(エーレ地方の町の一つ)

 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ