72 実家にて 春休み
春休みの実家に5日ほど帰った。
その間沢渡さんに会った。
前に行った駅前の商店街の喫茶店で。
逮捕は幹部の8人。最終的には薬で摘発された。
うちの学校では逮捕者は出なかった。
これから本格的な取り調べが始まるそうだ。
「あたし何かの役には立ったのかな?」
「細かくは言えないが多少はな。ただ一つ気になることがある」
沢渡さんが言うには、アビスというシステムを誰が考えだしたのかということだ。
幹部に聞くとネットで相手が接触を取ってきたという。実際にその相手には会ったこともないと。
そのビジネスモデルは無償で提供された。
「なんでそんなことするんでしょ?」
「さあな。そのビジネスモデルはよくできている。ただ渡した奴らが悪かった」
「無償ってことは善意ですかね?」
「相変わらずだな」と呆れたように言われた。その匿名に人間は金の代わりにときどき人事に口を出したいといってきたらしい。
そんな人たちが匿名のひととの約束を守るか不思議だったが、組織運営に困ると知恵を貸していた。やっぱり善意の人にしか思えない。
人事権にしても高山翔を幹部にということだけだった。目的は何だろう。
「まあ、あんたにとってはそうなるかも。それで助かってるわけだしな」
「どういうことですか」
「佐伯ヒナには手を出すなというお達しが下ったそうだ。それはネットではなく高山を通して」
驚いたな、まったくわからん。
でも、それで芦原のように写真で脅されたりしなかったし、襲われそうになったのも一回で済んだのだ。
「・・・誰がなんで?」
何故自分をかばってくれたのか全く思い当たらない。
「さあな。そいつは匿名だし、相談にのったといっても違法なことは何もしていない。ただ、あんたの知り合いなんじゃないか」
その後釈然としない気持ちで実家に帰るとお客様が来ていた。
古賀さんというおじいちゃんで父と古くから付き合いのある議員だそうだ。
弟の修が玄関先であたしを出迎え「挨拶に行くよ」と応接室に引っ張ていく。
「え、ちょっと修。議員って、あたし、どう挨拶したらいいのかわからないよ」
逃げ腰だ。
「大丈夫。覚えていないだろうけど、姉さんの幼馴染の雅人さんも来てるから。姉さんに会いたがってるよ」
「ちょい待ち!雅人さんって誰?」
幼馴染って何?ヒナにそんなのいたの?どうしよう。というかあたしに会いたいって何だろう。ヒナになってもうすぐ一年。そんな人あったこともない。彼は古賀さんのお孫さんだそうだ。
修がいうにはもうすぐ渡米するので最後にあっておきたいとのこと。アメリカの大学へドクターをとりに?なにそのスペックの高そうな幼馴染。意味わからん。
「そんな人あたしと話し合うの?」
「大丈夫。雅人さんは優しいから姉さんにいつでも合わせてくれるよ」
笑顔で言う修。
「あ、修、あたし何だかおなかが痛くて」
「姉さんはまたそんな子供みたいなことを」
結局応接室まで連れていかれてしまった。
そしてそこにいたの好々爺然とした恰幅のよい男性と・・・。
お立ち寄り頂きましてありがとうございます。
あと一回の投稿で多分完結です。その後エピローグ投稿するかも?です。
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