67 放課後 何の話?
「今日は佐伯家の近くにしよう」と彼の一言で駅前のファストフード店になった。
学校のある駅から近いが、同じ高校の生徒はほとんどいない。
バーガーとポテト、コーヒーをご馳走になった。
そういえばジュースとかも学校で時々買ってもらう。
これでいいのか、中味アラサーのあたし。おかしくないか。今度はあたしが出すというのに「用があるのは俺の方だから気にしないで」と笑顔で毎回押し切られてしまう。
「なんの話、心理テストか何か?」
「違うよ。今日はこの間の放課後、変なところで話が途切れたから続きをしようと思ってね」
あのポゼッションとか多重人格の話か。
「あたしの中ではもう気にしないってことにしてる」
なんか大人げない返事をしてしまった。
「俺もその方がいいと思うよ」
あっさりと言い切り、コーラを飲む。
「6月以前の佐伯について興味があるんじゃないかと思ってね」
「え・・・」
今さらって気はするけれど興味はある。
「今の友達はみんな以前の佐伯を知らないだろう。友達入れ替わったから。
高山や佐藤たちにしても佐伯のこと急に変わったとは言っても以前どうだったか教えてはくれないだろ。佐伯も聞きづらいだろうし」
「そうね、言われてみれば」
あまりおなかが空くような話題ではないのでポテトをちょこっとつまむ。
「まあ、俺も別に佐伯と親しかったわけじゃないから、詳しくはないけど。何度かクラスのことでやりとりしたことはあるからね」
「ああ、なんか想像ついてきた。掃除当番さぼったりとかクラスの活動に非協力的だったりとかでしょ」
「そのとおり」
それ根にもってたりするのか。ああ、そうかそれでいろいろ雑用を押し付けられているのか。
すると滝川君が首を傾げる。理知的なイケメンはそんな仕草も様になっている。
「ん?多分いま佐伯の考えてることって見当違いだと思うよ」
相変わらず人の心を読んでいるようだ。
「実は佐伯に男のぶりっ子って言われたんだよ」
はい?滝川君ってそんな可愛らしいイメージないけど。
「また、勘違いしているみたいだけど見た目の話じゃないからね」
「?」
今度はあたしが首を傾げる番だ。
「一挙手一投足が計算の塊だって言われた」
まじか・・・こわっ。なんかそれいったのあたしじゃないけれど
「・・・ごめん」
そういうと滝川君がクックッと笑い始めた。何がおかしいの?
「そこであやまっちゃうんだ。6月以降の佐伯が言ったんじゃないのに」
あたしは目を白黒させた。
「えーっと、つまり何が言いたいのかな?怒ってたり根に持ってたりするわけじゃないんだよね」
まったくわからん。
「僕は前の佐伯に興味はないよ。今の佐伯に興味があるんだ。とっても面白いからね」
そうかな。あたしって地味ですっごくつまらないよ。ケチだしお金貯めるの好きだしね。
「だから、俺と付き合わない?」
「?」
目が点になる。そして思考停止。この人があたしの事好きだとは到底思えない。
「ああ、だから好きだの嫌いだのじゃなくて。友達として」
そうだよね。
よくよく滝川君の話を聞いてみると本当に好きだから付き合ってというのではなく。友達としてこれからもいろいろあたしから話を聞きたいとのことだ。
そのためにはこうして二人で会うわけだし。まわりに付き合ってるっていってはどうかというものだった。
あたしが高山、金井君、そして滝川君のことでいろいろ噂されているのでそれに対する配慮だ。高校生男子に配慮される中味アラサーのあたし、大丈夫なのか?
「まあ、佐伯につきあってる人がいなければの話だけど」
「それ、いないのわかって言ってるよね」
ジト目でみる。
「じゃあ、言い方を変えるね。誤解されると困るひといない?」
ひたっと目を合わせられて、どきっとした。まるで何もかも見透かされているようだ。
答えようとした瞬間。
「答えは今すぐじゃなくていいよ。ちょっと考えたほうがいいよ。俺の考えに穴があるかもしれないし」
それから少し、たわいもない会話をしたあと帰った。




