65 実家にて 思いもよらない
今日は休日図書館におでかけ。
やっぱり、滝川君に言われたことが気になる。言われてみれば記憶喪失って精神疾患が一番有力だよね。
などと心理のコーナーで本をあさっている。どれも難しそう。サルでもわかる系の本をさがす。ちらっと読んでみたけれど何だか実感がわかない。結果、やっぱりまともな気がする。
そうだこんなときはお茶でも飲もう。この図書館はロビーにお茶を飲むスペースがある。
自販機コーナーでミルクティーを選ぶ。ちょっとおなかも空いてきた。
スマホを確認すると修から連絡があった。コールバックしてみると実家に呼ばれた。父が月に一度くらい実家にご飯を食べにこいと言っているらしい。
つまり今日来いと。ちょっと面倒くさい。修にはもちろん会いたいけれど。あたしは一応、父の客や親戚が来る予定はないかと確認する。家族だけと聞いて少し安心する。
仕方がないので、3時ごろに実家に行くと伝えた。父は最近優しいけれど、どうも母が苦手。以前からヒナと仲が悪かったらしい。いっそ清々しいほど嫌われている。
実家のある駅で降りた。
高級住宅側に向かって歩く。最初は場違いな気がしていたけれど最近慣れてきた。それに比べてどんどん前の記憶が薄くなっていく。
だからと言って6月以前のヒナの記憶が入ってくるかというとそれもなし。ああ、考えると混乱する。
長い塀を伝って歩くと右手に見える実家の門。外からは家が見えないようになっている。あれ、お客さんかな?なんだか門前でもめているようだ。
20代と思しきブランドもので前身を固めた女の甲高い声にちょっとがらの悪い男が恫喝する声。対応しているのは家政婦の祥子さんと・・・修?
あたしはあわてて走っていった。もうすぐ高校生になるとはいえ中学生があんな人の対応をするなんてあんまりじゃない。お母さんはどうしたのよ。
「修、どうかしたの」
あたしは声をかける。目が合うと明らかに来るなと言っている。
え、姉さん邪魔なの。
ブランド女がすごい勢いで振り返った。あたしは絶句した。
彼女は前世で妹の麻衣子だった。
「姉さん大丈夫?」
修が心配そうに声をかける。実家のリビングでお茶を飲んでいる。
あのあと固まってしまったあたしを修がここまで連れてきたくれた。ほんと役立たない姉だよね。面目ない。
「落ち着いた?姉さんは繊細なんだね。玄関先で見かけたとしても招かれてもいない客の対応はしなくていいからね。これからは玄関チャイムが鳴っても祥子さんに任せて対応しないほうがいいよ」
いや、あのね。繊細とかいう話ではなくて彼女は前世のあたしの妹ですよ。思わぬ出会いにビックリしたのとすごい憎悪の念を向けられてこわかったのとでちょっと思考停止してしまっただけだから。
「ああ、そんなんじゃないから、何かトラブルに巻き込まれてるようだったから心配で、ほら走ってきたら息苦しくなっちゃって」
いってからこんな間抜けな言い訳しないほうが良かったと反省。
「というか、ああいうことよくあるの?あの二人は誰?夫婦なの?」
「ああ、2,3年前くらいから、時々来るんだよ。あの夫婦、金の無心に。遠縁の親戚だとかいってね。正月にも来ていて追い返したんだんけど」
「ええっとそれはどっちが血縁」
「夫のほう、でも血縁ってほど近くないよ。もう他人っていっていいんじゃないかな。大丈夫、今に始まったことじゃないし、昔っからそういう人種はいたからね」
「そうなの?」
あたしは目を丸くする。お金持ちってたいへん。
修はうなずいた。
「で、あのひとたちのお名前は?」
「ああ、苗字は佐伯を名乗っているけど本当は鈴木。父さんの事務所でつかっている調査会社のひとに調べてもらったんだ。あんまりにもしつこいんでね。
姉さんは気にしないほうがいいよ」
「えっと、女性の方はなんていうの?あの、あたし会ったことあるような気がする」
修は話したがらなかったけれど押し問答のすえ教えてくれた。
夫婦に子供はいない。彼女の旧姓は中山。結論から言うとやはり妹麻衣子のようだった。
いつの間に結婚したんだろう。麻衣子は働いていなかった。女子大に入ったものの、体弱いことを理由に休学していた。引きこもりだったはず。
そういえば両親は彼女に甘かった。父はギャンブル好きで、母はパート先の社員と懇意にしていた。
しかし修の話によると一家は父親の自己破産により離散。家族の行方は分からないとのこと。
修には怪訝そうにされたが、姉がいなかったか突っ込んで聞いてみた。
3年前から行方不明だそうだ。
実家に一泊してタクシーで帰ることになった。
父に言われたからというより、修に言われた。
「なんだかあの自称親戚の奧さん、姉さんのことにらみつけてたから気を付けて。
つけられたり、付きまとわれたら、あぶないよ。ああいう自分勝手な人たちは筋違いのひとを恨んだりするかね」
もう弟が保護者のようです。大切なあたしの弟。
探していた前世の家族に会えたはずなのにちっとも懐かしさを感じなかった。ヒナに馴染めば馴染むほど記憶が薄れていく。
お立ち寄りありがとうございます!
繋ぎのような回だったので、今日、また更新できたらと思っています^^
お暇でしたら、是非!




