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63 放課後教室にて

今日は珍しく剣道部が休みになった渚がいる。

逆に由奈は部活でいない。そしてあたしと同じく帰宅部の茉奈がいる。

「これからプリクラとり行かね?」

「はら減ったあ」

などと放課後教室でだらだらしていると人影がさした。


「あの・・・なぎちゃん」


あたしたちはその声に一斉に振り返った。

なんと金井君がいた。

そういえば渚と金井君は幼馴染だった。


「えーっとなぎちゃんって渚のこと?」


なぜか茉奈が反応する。しかもいつものぶりっ子仕様が発動しない。

どうも金井君相手には素で対応するようだ。その方が自然でよりモテると思うのだけれど。


「ほら、渚。ご指名だよ」


「はあ、何言ってるし、ここキャバクラじゃないし」


金井君は茉奈の反応に固まっているし、茉奈はカラカラ笑ってるし、渚はそんな茉奈を渋い顔して見ている。


「茉奈。からかうなよ。であんた何の用」


と渚が金井君に先を促す。


「うん、実は。ヒナさんの話」

「「「・・・・」」」


女子三人黙り込む。


「あのあたしここにいるんだけど。ってかいていいの?席外す」


代表して口を開いてみる。


「いや、あの、そうじゃなくて」


金井君が女子三人の圧にあわあわしだす。

それをみかねた面倒見のいい渚が教室の隅に金井君を連行して問いただす。

しばらくして席に戻ってきた渚と金井君。


「ああ、こいつヒナとあたしに話あんだって。でさあ、ついでに茉奈もいていい?こいつ口堅いから」


金井君がちょっと怯えた様に、そしてあきらめたように首をたてにふる。

確かに茉奈は口が堅い。ぶりっ子だから軽薄そうに見えるけれどSNSでやたら他人の悪口を呟いたりしない。

すると茉奈がするっとイヤホンをだし「気にしなくていいよ。あたし音楽聞いてるし」と言い出した。

「いや、それあたし気にするから」と結局女子三人バーサス金井君になってしまった。



 いったん仕切りなおして話は始まった。


「去年の6月あたりからヒナさん別人みたいに変わったでしょ。なぎちゃんからみてどう」


からかわれても「なぎちゃん」呼びは変わらず。


「まあ、あたしが同じクラスになったのって2年からだからね。4月5月頃のヒナはいつも佐藤理沙とか三宅亜弥とかつるんでたかな。まあ本人目の前にしてこういうのもなんだけど友達になりたいタイプじゃなかったな」


渚から見たそのころあたしは派手でうざかったらしい。6月ころ、突然大人しくなり人が変わったようになってぼーっとしだしたらしい。その頃由奈と仲良くなって渚との付き合いも始まった。最初は無防備に良くない噂のあるあたしと仲良くしだした由奈が心配でそばについていたらしい。


「でさあ、僕の言いたいことは、そこなんだよ。ヒナさんてヒナさんの皮をかぶった別人みたいなんだよ」


なんですかね。その羊の皮をかぶったオオカミみたいな表現は。


「それな。確かに。別人だよ。あたしのこと覚えてなくてびっくりした。それにツイッターのアカ、裏アカも含めてみんな削除されてるし、SNS系きえてるし」


と茉奈。最初は半信半疑であたしに近づいてきたらしい。そんなこと気がつかなかった。

すると金井君がスマホの写真をみせる。そこには6月以前のあたしが映っている。あれ結構化粧が巧だな。今よりいいかも。でもちょっと太ってるな。


「誰これって感じだよねえ」


皆が頷く。


「これってでも化粧のせいじゃないの?」


動画や学校のトイレ見たけれどメイクで完全に別人になれる子っている。


「違うよ。話し方も雰囲気も。ヒナが6月に休んだ後、学校来たとき、この子誰って思ったもん」


と渚。


「そうそう、芦原もおっかなビックリ話しかけてたよね」

「あたし、そんな違和感あったのね」


やっぱり全然馴染めてなかったのね。

そんなあたしの様子をみて「いい意味でだから」といって茉奈が手を握ってくれる。


「こういうの。ポゼッションっていうんだって」


渚と茉奈の顔にわかりやすく「?」が浮かんだ。あたしは弟の修に以前言われたことがある。

金井君はあたしの方に向き直ると


「ねえ、以前の記憶があったりしない?別人の頃の記憶」


その言葉に鳥肌がたった。


「金井、楽しそうだね。怪談話でもしてるの?佐伯がおびえてるじゃん」


突然声をかけられあたしたちは飛び上がった。胆の据わった渚を除いて。

声の主は滝川君だった。いつからいたのよ。

渚がぱこーんといい音させて金井君の頭を張り飛ばす。


「あんたねえ、何言ってのよ。まるでヒナがヒナの体のっとったみたいじゃない。どういう思考回路してるのよ」


茉奈は「あ~もうわかんない。オタクがなんか言い出すし」と頭を抱えている。



結局渚は金井君に説教をはじめ、茉奈は「わからん」と混乱し。その場は滝川君がおさめた。

あたしは自分の存在がはじめて怖いと感じた。



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終電のその後で……」ぜひ、こちらも!!
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