61 刹那的な何か・・・
信じられない。
あたしは襤褸っちい衣装ケースを引っ張り出した。こいつの着ていた服は全部ダサい。しかも激安。さらにその激安の服をつくろって着るとか。ありえない。
あたしは片っ端から捨てていった。するとアパートの1階に住む主婦がゴミはゴミ出しの日にとかうるさい。馬鹿じゃないの。というか結婚していい年してこのアパートに住むとかないわ。ここに住んでるやつらみんなゴミに見える。
しかし、こいつが金をもってないのには困った。仕方がないので適当にスーパーだの激安店で万引きする。
とりあえず遊びに出るワードローブは揃った。地味顔だけどその分化粧で映える。痩せて軽い体、結構スタイルがいい。タイトな服もゴスロリもOK。ちょっと年くってるけど。着るものやメイクでギリ20代前半ってとこ。
さっそく町口駅に行っていろいろ引っかけてみる。未成年じゃないから補導もされない、ここらへんは楽。あっという間にアクセサリーやお金は稼げた。途中、女子高生に「ここら荒らすな」なんて絡まれた。バカだよねえ。若いってだけで男が寄ってくると思ってる。
あたしは親友面したあいつを思い出した。
そういえば三日ぐらい前にこいつの妹だとかいう変な女がぼろアパートに金の無心にきた。
逆に金を巻きあげて叩き出したらアパートの前でわめき出した。1時間もすると近所の人が警察に通報したらしくパトカーで連れてかれた。どうなってるの。
スタバでクリームましましでフラッペを飲む。
これからの計画を考える。
「あの、もしかして中山さん?」
ん?そういえばこいつ中山っていうんだっけ。振り返ると自分がかわいいってこと自覚済みのうっとおしい女子高生がいた。
「あんた誰?」
「やっだー。もうあたしのこと忘れちゃったんですか。中山さんがくびになったバイト先の日向です。真由ちゃんてよばれてましたけど。あの後あたしもすぐやめちゃいました。いい大学の学生はいたけど、連れて歩くにはださくて。これはないなあーって感じで。しかもお誘いがしつこくって。大学名だせば付き合ってもらえると思って、ほんと馬鹿みたい」
というと含み笑いをする。何この女。
「ってか中山さん、そのかっこう無理しすぎですって。だって・・ふふふっ・・・アラサーですよねえ」
相変わらずの含み笑い。でも目が少しも笑ってない。よく見るとたいして可愛くもない。いまのあたしの方が数段いい。
ことわりもなくあたしの向かいの席に座る。
「それでご相談何ですけど、ここあたしたちの稼ぎ場なんで荒らすのやめてもらえます。おばさん」
あたしはテーブル越しに蹴り上げてやった。
その後、このあいだ知り合ったばかりの男を呼び出し。そのばかなJKとまわりに潜んでいたその仲間から金品を巻き上げた。こういう稼ぎ方もあるんだと学んだ。
ショーウィンドウにうつる自分をうっとりとみる。背がすらっと高くてスタイルがいい。それに足も速いし力も強い。最初は地味でびっくりしたけどね。メイク次第で華やかな美人にもなれる。
かなりこの体気に入っている。前だって悪くなかったけれどちょっと太り気味ではっきりしていた二重も最近では肉に埋もれて瞼が重かった。でも今は前の労力の半分で金を巻き上げられる。
さてと今度は何をして遊ぼうか、誰で遊ぼうか。
そうだ、明日はあいつを呼ぼう。ああ、でもあいつはもう海外にいったかな。
食事も酒も男におごらせて上機嫌で駅のホームで電車を待つ。
電車がホームに入ってきた。いきなり背中を強い力で突き飛ばされた。鋭い警笛、目の前が眩いライトのひかりでいっぱいになった。
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