58 いつものファミレスにて
これから仕事だから朝早い方がいいという沢渡さんのわがままで朝7時に家の近所のファミレスでモーニングを食べている。解せぬ。まだまだ寒いけれど朝のひざしは気持ちがいい。が、寝不足のめに若干突き刺さる。
呼び出された内容は高山のことだ。
「高山から、佐藤のこと何か聞いていないか」
「なんで直接本人に聞かないんですか」
質問に質問で返す。だって眠いから。
「父親が弁護士を雇った」
「はあ?そんなことしたら、余計怪しいと思われちゃうのに何かんがえてんだろ」
「あんた、やっぱり何かしってるのか」
あたしはサラダをつつきつつ何とこたえたらよいのかと考える。
「たいしたことは知りませんよ。もう深入りしないことにしたので」
こくんと一口コーヒーを飲む。
「里沙は無事なんですか?」
「意識は戻った」
「よかった」
ほっとした。しかしそこで疑問が浮かんだ。
「里沙が目覚めたのなら、彼女に直接聞けばいいじゃないですか」
「長時間の面会は無理だし、だんまりだ。一時的なショック状態らしい。それでだ。あんた見舞いにでも行って聞き出して来てくれないか?」
ずいぶんと気軽に言ってくれる。
「それは無理だと思います。里沙は自分のそんな姿あたしに見られたくないとおもいますから」
そういうと沢渡さんはすぐに引いてくれた。
「現場が十塚駅にある秋本ビルってことは知ってるな」
コクリと頷くとさめかけたスクランブルエッグに手を伸ばした。
「そこで高山が目撃されている」
沢渡さんが、ここまで踏み込んで情報を出してくれたのははじめてだ。
てか沢渡さんもう食べ終わっている。食後のコーヒー2杯目にとりかかっている。
「たまたま近くにいたとかじゃないんですか?」
「いや、二人であっていたらしい。ビルの非常階段の4階で」
「・・・・」
そこまでわかっているってことは。
「目撃者がいる。高山が突き落としたと言っている」
「嘘でしょ!里沙が自分から飛び降りたって・・・」
『しまった』と思ったときはもう遅かった。あたしはついうっかりしゃべってしまった。別に秘密にする義理はないけれど。
沢渡さんに糾弾されると思いきや彼は落ち着いていて
「高山がそういったのか?」
と聞いてきた。あたしは素直に経緯を話した。
いくら何でも里沙のこと突き落としてないよね。なら自殺ってこと。
どちらにしても救われない。
「で。正月はいそがしかったのか?」
あたしが暗い気持ちのとらわれそうになっていると、もののついでのような軽い調子で聞いてきた。
「大変でした。朝から毎日のように着物きて、よく知らない人たちにご挨拶です」
「なに言ってる。それ普通だろ」
「そういうもんですかね」
ジト目で沢渡さんをみる。
確かに修はさらっとこなしていたけれど。あたしには重労働で精神的にも肉体的にもごっそり持っていかれた感じだ。
「沢渡さんはどうだったんですか」
「俺は仕事だ」
あれ?ちょっと機嫌悪くなった。
「年末年始ですか?忘年会とかやらなかったんですか」
「俺の仕事は年末年始は特に忙しいの。そのうえ独身だからな。正月はいいように使われる」
あらら、愚痴ってますよ。
「何がおかしい」
あれ、あたし笑っていたみたい。
「いえいえお仕事御苦労さまです。そうだ!沢渡さん、うち実家からお餅とかお菓子とかたくさんもらっちゃってあまってるんですよ。ちょっともらってくれると助かります」
「ばかが。金も物品も受け取れるわけないだろ」
「結構、たいへんなんですね」
「そうだ。だから、お前も正月の挨拶ぐらいで愚痴るな。それに俺に同情するのはやめてくれ」
それは気づきませんで。
というかこの人、ナチュラルに口が悪い。今ではすっかり慣れました。
「あの、沢渡さん、まだちょっと時間あります?」
「ない」
「・・・」
ですよね。こういう人って俺様っていうのだっけ。警察だからこうなのではなくて、多分これ性格だな。
「急ぎか?」
「いえいえ、個人的な相談事があってですね」
ダメ元でいってみる。
「個人的?俺が警察官だということ関係なしにか?」
関係なしでも相談のってくれるのか?そこは突っ込まないでおこう。
「警察官だから相談したいんです。ただ今回の件とは関係ないかもです。あたし個人としてなので」
やっぱりだめだよね。
「わかった」
「へ?」
彼が了承したのでびっくりして二度見してしまった。
来週あたりならといいと言われた。聞いてみるものだな。




