52 駅前の喫茶店にて2
滝川君はコーヒーを一口飲むときりだした。
「で、本題なんだけど。
多分佐伯は高山に付き合おうって言われたんだよね。それで三宅達と揉めてるんだろう」
すっかり見透かされている。
彼の迫力に押されてあっさり頷いてしまった。
「問題は付き合う付き合わないじゃなくて、高山の気持ちが佐藤にないってことでしょ」
仰る通り。
何あたし、さっきからコクコク頷いてばっかりじゃない。
「そうなのよ。高山君も別にあたしじゃなくてもいいみたい」
これは本音。だいたい条件だけで選んだ感じだし。
「佐藤ときれたいんだろ」
「え?」
何でそんなと知ってるの。
するとまるで表情を読んだように
「ただの推測だよ」
という。どこをどう推測したのだか。
「俺、高山とは幼稚園から小学校まで一緒だったんだ。同じサッカークラブにいた」
「え!友達なの」
結構ショックだった。
「今は違う。親同士は付き合いあるみたいだけどね」
今はなのね。やっぱり、誰かに頼ったりするのよくないな。
最近どうも依存してしまう自分がいる。
「まあ、興味ないだろうけど」といいつつ高山の家族構成を話してくれた。上の兄は優秀で国立の医学部在籍中、一つ下の弟は中学卒業後ふらふらと遊んでいるらしい。
「あいつ中学受験失敗したあたりから、タチの悪い連中とつきあいはじめたんだ」
「ふーん、なんだかもったいないね」
家も顔もいいのに。
「佐伯は人がいいんだな」
「そんなことないと思うけど」
「受験の失敗はきっかけだろ。もともとそういうやつだったんだよ。佐伯はせっかくあいつらと切れたのにまた付き合い始めたの?」
「それは・・・」
「やめときなよ」
諭されてしまった。
確かに彼の言うとおりだ。転生してからのあたしはヒナに振り回されている気がする。でも動いたわりには前世のあたしの死後のこともわかってない。多少ヒナの黒い過去がわかったくらい。気づけばトラブルばかり引き寄せ。最初はやらかしと思っていたヒナも自分よりスペック高いなと思う今日この頃。
「佐伯?」
気づくと滝川君があたしの前でてを振っていた。
「あー、ごめん、またぼーっとしちゃって」
「佐伯はいつも何にきをとられてるの?よかったら話してくれない」
「いや、いいよ。そんな大した事でもないし」
なぜ皆あたしの心読むの。やめてほしい。
「別に悩み事相談してなんて言ってないよ。佐伯だって俺にそんなに踏み込まれたくないだろ」
「・・・」
そこで滝川君がコーヒーをコクリと飲む。
彼は何を言いたいのだろう。
「俺さ、実は心理学に興味があってね」
急に何を言い出すのだ。話の着地点が見えない。
「記憶がなくなると人格がそこまで変わるかなと思って」
「はあ」
間抜けな返事をしてしまった。なんだかこれ以上彼と話すのが怖い。
「俺はひとの本性なんて変わらないとおもっている。高山ももともとああいうやつだったから、
なるべくしてなったとおもっている」
だから彼はなにが言いたいのだ。
「『時計仕掛けのオレンジ』って話しってる?」
「え?」
滝川君がふっと笑みを漏らす。それがとても大人びていていつもの彼とは違う。
「俺は人が改心したり、目が覚めたりということは信じていない。
よかったら読んでみて。佐伯はどっちのラストが好きなのかな」
なんのなぞなぞなの。
でも、滝川君楽しそう。声に笑いを含んでいる。
あなた本当はいくつですか。精神年齢沢渡さんより高くないですかね。
「まあ、いまとは言わないけど。もう少し待つから。本音話してくれないかな」
優しく笑う。
どうしたらいいのかな。彼、本当に何者なのよ。
結局、コーヒーはおごってくれた。払うといったのに「誘ったの俺だから、それよりレジの前でぐずぐずするのみっともないから、先にでてて」と微苦笑で言われてしまった。あたしったら何をやっているのかしら、コミュ力低すぎ、穴があったら入りたい。
ああ、あしたの学校のうわさと一部の女子の目が怖い。




