48 コーヒーショップにて3
「その子何であたしの写真を何で持ってたんですか?」
想像はつくがきちんと確認はしておきたい。
「そいつの名前は川崎。もしあんたを見かけることがあったら、
いろいろ詮索しないように釘を刺しておけと高山にいわれたそうだ」
あいつ!釘刺すってレベルじゃないでしょ。
こっちは拉致されそうになったんだから。
ほんと高山って想像以上の屑。
「いろいろって何をですか?」
詰め寄った。
「何で俺が質問されているんだ」
沢渡さん、ちょっとむっときているようだ。
「それ知らなきゃ身の守りようがないじゃないですかあ」
まったく、この人はあたしがボコされてもいいのか。
いいのよね。その態度。
「転落事故及び団地の件だ。
その後、高山はその命令は取り消した」
「それは良かったです。
で、それって、その川崎って高校生が高山の
舎弟ってことですか」
「そう畳みかけるなよ」
そうね。少しクールダウンしなくちゃ。
沢渡さんが再び口を開く。
「まず川崎は高校生じゃない。無職だ。この春に高校を中退している。
主に中学の時の友達とつるんでる。
自分はアビスの処刑人だといっていた」
「・・・」
「どうした?黙り込んで」
「いえ、ごっこ遊びみたいで幼稚だなと」
恐怖を感じるがどこかで気持ちが冷めていく。
こんなくだらないことにあたしは今までつき合わされていたのか。
「そうも言ってられないだろ。
今度は佐藤が新たにお前を狙うよう願い出たそうだ」
里沙に嫌われている自覚はあった。
あたしも彼女はすきではない。
だからしょうがないことと思っていた。
でも、そこまで・・・ちょっとショックだ。
唇をかむ。
「ずいぶん恨まれてるようだな。
佐藤は川崎たちに命令する立場にない。
それで自分とデートすることと引き換えに頼んできたといっていた」
「デートって・・」
そのなかみを想像して気が滅入った。
「どういうわけだか今度はそれを高山が牽制している。
なんでだ?」
沈黙が落ちる。
これが今日の本題か。
「普通に考えればあんたが佐藤から高山を奪った。
ということになると思うが、違うのか?」
追い詰められた気分になった。
あたしは悪くないって、いいそうになる自分を抑えた。
「その時計すてきですね」
さっきから気になっていた沢渡さんの時計をほめた。
高山と同じブランド。
彼は突然関係ないことを言い出すあたしを睨みつけたが
すぐにいつもの無表情に戻った。
「その時計たかいんですか」
続けて聞いてみる。
「大学の入学祝に親戚からもらったんだ」
質問の答えを微妙にはぐらかすが、話に付き合ってくれた。
「あたしそのブランドの時計、4月に高山に誕生プレゼントととして贈った
らしいです」
相変わらず感情が伺えない表情。
「らしいです」などといえばまた他人事言われるかもしれないが
こればかりはしょがない。
「それで、この間、付き合ってやろうかって」
「時計のはなしは今初めて聞いたが、付き合うどうこうの話は前に聞いてる」
「だから、そのあと、屋上に呼ばれて。また『付き合ってやってもいい』っていわれたんです」
「はっきり断らないからだ」
沢渡さんが舌打ちする。
ガラ悪いですよ。
「まあ、高山があたしのこと好きじゃないのは確かです。
自分は医者のむすこだから里沙とは釣り合わないといっていました。
お金めあてなんじゃないですか」
そういいつつあたしは今頃になって高山の目的が気になった。
お金めあてなら別に他の子でもいいんじゃないの。
「なるほど。佐藤と違いあんたの家は裕福だからな。
だが、金のためなら別にほかの子でもいい気はするがな」
沢渡さん、「裕福」と「金のため」にアクセント置かないで、言葉のとげが痛いです。
でも同じこと考えてました。
「あたしもそう思うんですよねえ。
なんででしょう?
あれだけモテればより取り見取りなのに
よりによってなんであたしなのかな」
以前高山に夢中だったし、やっぱり金づる的な?
沈思黙考をはじめたあたしの目の前でテーブルが強くたたかれる音。
ビクッとして顔を上げると
「お前、いい加減にしろよ」
沢渡さんがまじ切れしてる。
え?なんで。
テーブルに他の客たちの視線が集まる。
その後すぐに店をでた。
夜の10時を過ぎていた。
沢渡さんが送ってくれた。
無言で・・・なんの圧力なのでしょうね。
あたしの住む部屋のドアの前まで来てくれた。
無言で。
なにか謝ったほうがいいのだろうか。
おそらく他人事的に自分のことを話すあたしが気に入らないのだ。
「あの・・・なんかすいませんでした」
我ながらおバカな謝り方。
お願いなんかこたえて、気まずいから。
「別に謝ることじゃない。俺もおとなげなかったな。
怖がらせて悪かった」
あれ?謝られた。
まあ、普通に怒った大人男はこわいですよ。
とりあえずほっとした。
「よかった。実は話したいことがあったんです。
今日はもう遅いからメールで送るので
アドレス教えてもらえますか?」
それならば、もう一度あって話がしたいと言われた。
もういつもの沢渡さんにもどっていた。
出会って数ヶ月、やっと沢渡の電話番号とメールをゲットした。




