46 コーヒーショップにて1
もう午後9時をすぎた。
待ち合わせは真鈴が住んでいる十塚駅のコーヒーショップにしてもらった。
電車であたしの家まで40分ほどかかるが、タクシーだと意外と近いことに気が付いた。
路線バスもあるらしい。
どうやら電車は遠回りのようだ。
あたしの方が早く着いた。
ロイヤルミルクティーをカウンターで受け取って沢渡さんを待つ。
今更ながら、自分の格好に気づく。
大袈裟ではないけれどフォーマルなカクテルドレス。
これじゃ、沢渡さんのためにとっても頑張っておしゃれしてきたみたいじゃない。
コートを脱ぐのはやめよう。
店内は少し寒いしちょうどいい。
「悪いな。急によびだして」
ちっとも悪くなさそうな口調。
スーツ姿の沢渡さんがたっていた。
仕事帰りのようだ。
いやいや仕事中ですよね。
あたしと会うのだから。
「出よう」
ここで話を聞くつもりだった。
「いえ、ここで。ここがいいです」
「わかった」と言って自分の分の飲み物をを買いに行った。
カウンターからコーヒーを取ってくると正面に座った。
「こんな駅前で同級生に見られてもいいのか」
静かで落ち着いた声。
「大丈夫です。この手のコーヒーショップには高校生は立ち寄りません。
ここのドリンク写真映えしないので」
「なるほど。インスタか」
「あの・・・なんの話ですか」
緊張してきた。
「あんたからは何か話がないのか」
ドキッとした。
もしかしてあのパーティ行ったのばれた?
言葉に詰まる。
そんなあたしを沢渡さんが胡乱げにみている。
というか観察してる。
やばい。
「とりあえず、コート脱いだら?」
「へ?」
そっちですか。
「ああ、それはあのちょっと今日来ている服が
そのですね・・・・」
どうしよう。
店内から浮くわけではないけれどおしゃれしているので
恥ずかしい。
父と弟には受けが良かったけれど母には似合ってないと言われたし、
芦原にはドン引きされたし、里沙と亜弥には馬鹿にされたような気がする。
てことは同性受けしないのよね。
この服装、異性に媚びてるってこと?
露出あまりないのだけれど。
「またド派手な格好をはじめたか」
呆れたようにいう。
なんだか腹が立って脱ぐことにした。
まあ、あたしも意識しすぎよね。
「で、どうしたんだ。その恰好?」
やっぱりか、浮きますよね。
「今日ホテルで食事したんです」
「誰と」
「家族です」
「何かの記念日か?」
ですよね。
なんで年に数回家族でお食事会とかあるのかしら。
「さあ、よくわかりませんが、12月に毎年あるみたいですよ。
家族の行事みたいなものらしいです」
「また、他人事だな」
「他人事じゃないですよ。身に降りかかっているんだから。
ホテルで食事なんて食べた気しませんよ」
「なんでだ?うまいもの食ったろ?」
「ナイフやらフォークやらいっぱいあるし。
間違えたらどうしよって、緊張しちゃって味なんてしませんよ。
って、家族の話はどうでもいいじゃないですか。
結局なんの用で呼ばれたんですか?
そろそろ捕まるって話ですか?」
「なんの容疑で捕まるんだ」
「なんのって・・・タバコ吸ってお酒飲んでた、とか」
やだなクスリはやってないよね、ヒナちゃん。
「そんなんで捕まえないよ」
また呆れられてしまった。
「町口のクラブで未成年がくすりで摘発された」
と沢渡さんが本題をきりだした。
「え?いやあのそれはさすがに・・・知りません」
やめてよ。無関係よ。と切に思いたい。
「誰か・・・また、あたしの名前言ったりしたんですか」
「そいつらのスマホ没収したら、あんたの写真がでてきたんだ」
いやーーーー
あたしは心の中で絶叫した。




