39 準備はOK?
5時間目と6時間目の間。
トイレに立ったら
「ねえ、ちょいヒナ」
と芦原が呼ぶ。
何なのトイレは一人で行く主義なのだけれど。
多分ろくでもない用事。
教室の隅に連れていかれる。
渚や茉奈に気かれたくないのね。
「洋服一緒に買いに行かない?」
「はあ?なんで」
「なんでって、あたしカクテルドレスなんて持ってないもん」
ああ、確かにドレスコードにカクテルドレスってありました。
「あんなの適当にワンピでいいんじゃない」
「え?嘘、ダサくない。ヒナ何着ていくの?
何着かもってるんでしょ。ドレス」
そういえばヒナのワードローブにあったけれど
あれ着れないよね。サイズ違うし。
高そうだから捨てにくいし、古着屋にも売れそうにないし、
どう処分したらいいのよ。
「う~んどうかな。あたしより、里沙とか三宅に頼めば。
その方が確実」
面倒なので適当に逃げを打った。
「いや、駄目っしょ、それ。バカにされるっしょ」
知らんよ。
芦原が縋ってくる。
「通販でいいんじゃない?適当に結婚式の2次会っぽい格好で」
「結婚式のニジカイ・・・。まじ、ヒナってなんか。おばちゃんぽいこと言うよね」
「えっ、そっかな」
鋭いな芦原。あたし中味アラサーです。
「浮いたら嫌じゃん」
意外。
「目立ちたいんじゃないの」
「いやさ。それは追々。まずは認めてもらえないと。馴染むの大事っしょ」
芦原の目がキラキラしている。
そんなに里沙たちに認められたかったのね。
彼女たちの何がいいのか全然わかならない。
むしろやばいのでお近づきになりたくない。
「でさ、あんた青にするの」
「青?なんで。色決まってないでしょ」
「だからエントリーだって」
「ああ、ミスコンみたいなやつ」
そういえば招待状にあったな。
ミスコンイベントやるって
エントリーは青のドレスだった。
出ようなんて発想もなかったよ。
「そんなんでるわけないじゃん」
「・・・・あんた4月に出たってきいたよ。三宅から」
三宅って里沙のグループの子ね。
「それないわあ。いやいや、ヒナじゃ無理でしょ」
ついポロリとヒナといってしまった。
これってあたしの一人称ぽっい、恥ずかしい。
すると芦原が怪訝そうに
「三位に入賞したってきいたけど」
といった。
「・・・」
何?どんなマジック使ったのヒナちゃん。
お金・・・バラまいたのね、きっと。
一万円のパーティ券なんてバカみたいで買う気なかったのだけれど
里沙は睨みきかしているし、芦原が必死だし、
あたしも情報が欲しかったので、行くことにした。
毎月多めに父が入れてくれる生活をためて貯金したのに
こんなことで取り崩す羽目になるとはね。
パーティは当然、飲酒もたばこもありだろうし、警察の一斉摘発がないことを祈る。
今更だけれどあたしヒナよりバカかもしれない。




