38 学園 図書室の日常
「佐伯これお勧めなんだけど」
と言って新田図書委員長が差し出してきたのは
カズオ、イシグロ
ビブリオバトルでわたしの悲惨な読書量がばれそれ以来、いろいろな本を紹介してくれる。
「やだな、新田それ渋すぎるよ。あたしのお勧めはこっち」
真鈴のはやたら分厚くて何巻もある本をもってきた。
風と共に去りぬ
とかいてある。
「やあ、なんだかあたしには難しそう」
などといっていたら二人の間でビブリオバトルが勃発してしまった。
どうやらどちらかの本を読まなくてはならないらしい。
隣では由奈がすぴすぴ寝てる。
さっきまで宿題一緒にやってたのに。
「うーい新田おまたせ」
と同じクラスのお調子者の矢部が入ってきた。
その隣にもう一人見覚えのある男子。
最近知ったのだが矢部も図書委員だったらしい。
ほとんどこないけどね。
あたし一人でやってました。
矢部の隣にいる男子が
「ようヒナっち」
って、親しげだけれどあなたは誰・・・
よく滝川くんといるのだけれど思い出せない。
「なんだ”ゆなゆな”寝てるのか」
と矢部が突っ伏している由奈の肩をつつく。
「もう、うるさいなあ」
あくびをしながら体を起こす。
「お前、寝てる場合じゃねだろ。英語やばいんじゃね」
「はあ、なんであんたに言われなきゃなんないのよ。ヒナと渚に聞くからいいもん」
「なんだよ両方とも頼りねえじゃん。佐伯さんなんて勉強してるわりに
成績普通だし」
と言って由奈の横に椅子を持ってきて座る。
失礼だな、最近は平均点越えするようになったのに。
それになんで矢部はあたしを「佐伯さん」と呼ぶのだろう。
「さん」付け。まあどうでもいいや。
最近矢部は由奈がお気に入りのようでよくちょっかいをだしている。
渚と由奈を取り合ってちょくちょくバトルしている。
私は軽薄っぽい矢部より渚を応援している。
「村やん、何してんの?」
と真鈴。
そうだこの眼鏡男子、クラス委員会の村田君だ。
「ああ?今日は新田と駅前のファミレスでお勉強。
矢部が数学やばいから」
「そう、残念ね。矢部、普通の成績も取れなくて」
とあたし。
「お、おう」
言い返されて面食らっているようだ。
たまにはね。
「今日はサッカー部ないの?さぼり」
ちょっと探りを入れてみる。
「ん、休み。毎日あるわけじゃねえから」
「休みはサッカー部の人たちと出かけたりしないないの?」
みな仲が良さそうなのに不思議なので聞いてみる。
すると矢部がにやにや笑って
「なんだあ。佐伯さんなんだかんだ噂あるけど
結局、翔が気になるのかな」
といった。
いらないとこ勘がいい。
「なんでそっちに結び付けるかな」
「無理すんなって。今日はあいつら町口に遊びにいったから
里沙と亜弥とあと敦也な」
情報駄々洩れ。
「敦也って誰?」
「え?冷たくね。わがサッカー部のミッドフィルダーだよ。
よく応援きてたじゃん。
高山狙いで。まあ俺らも差し入れのおすそ分けで
高級そうなチョコレートとかもらったけど」
ああ、すっごく聞きたくない事実がでてきた。
媚び媚びでいろいろバラまいていたんだろうな。
弟の修があたしお金使い荒かったって言っていたし、
母のお気に入りの真珠のネックレスをあたしが
売り払ったことはいまだ語り草になっているし、
6月よりまえの話されるのって凄く理不尽。
「ってかさあ。前々から聞きたかったんだけどお。
佐伯さんの記憶喪失ってほんとなの?
突然別人みたいになったよね。
結構、それ、こわいんですけど。
それにいるグループ違くね?
なんで由奈とか渚?
里沙たちとはどうなってんだよ」
まあ、そう感じる人もいるでしょうね。
畳みかけられても困るけれど。
「やめなよ。一番大変なのヒナなんだから、勉強だってみんな忘れちゃったんだよ」
と由奈がほっぺたを膨らまして抗議する。
「そうだよ。矢部あんた無神経」
あらあら真鈴まで。
女子二人が加勢すると矢部はいつもの軽い調子で謝った。
男子が三人連れだって図書室をでて行くと真鈴がこそっと
教えてくれた。
「矢部の奴、学校のそとで高山がつるんでくれないから
面白くないんだよ。あいつグループに入れてもらってないから」
なんでと聞いたら、「口が軽いから」だった。
「でもね。あいつグループ入りたくて、里沙に媚び売ってた。
ヒナにもやたら親切だったし。あいつちょっとうざいよね」
うざいには賛成。
でもきっとヒナのことだから、里沙と一緒になって
矢部を軽くバカにしてたのだろうね。
しかし意外な取り合わせだな。
新田君村田君の優等生コンビに矢部だし。
・・・どうでもいいや。
さっ、気持ちを切り替えて今晩のご飯でも考えよう。
はあ・・・一人メシか。
修でもこないかな。




