34 団地で情報収集
「あたし、高校入学した頃は中学からの付き合いで高山とか里沙たち
のグループにいたんだ」
「それは・・・同じ中学だったってこと?」
「里沙とはね。
あいつらとつるむのいい加減やばかったし、
高校入って色んな奴らがグループに絡むようになって・・・ヒナもはいってきたしね。
で、そのすきにあたし抜けたんだ」
「ん・・・そうなんだ」
なるほど今の里沙グループの成り立ちはわかった。
「ってか、不思議なんだよね。ヒナは高校からとはいえ
あのグループにどっぷりつかってるようにみえたんだけど。
すんなり抜けられた。なんでかなって」
「う~ん。あたしもよくわかんない。覚えてないから」
実はグループから手出しされない心辺りはある。
あの写真の流出が怖いのだろう。
もう流出済みですが・・・警察から音沙汰なし。
「ああ、今はそれすんなり信じられる。だからこんな話できるんだし」
「それにヒナの後ろの席の芦原未来。あいつ里沙のスパイだよ」
「え?」
「里沙があんたがとぼけてるだけじゃないかってさぐらせてた。
芦原、高山好きだし里沙のグループ派手だから入りたがってた。
でも相手にされなくてツカイッパやってる」
何だかきな臭い話になってきた。
知らない間にわたしは随分危ない立場に追いやられていたようだ。
「それで里沙たちのグループってここの団地を中心にどれくらいいるの」
「まあ、ここ中心ってわけじゃないんだよね。
町口には高山とか住んでるし。ここら辺一体だよね」
町口駅はわたしが3年前に住んでいたアパートのあるところだ。
そして以前駅前で高山君を見かけている。
「ここの三号棟の屋上がたまり場になっているのは、結構昔からなんだよね。
その前の先輩達が何人かいるんだよね。例えば教育実習生の日向とか」
やっぱりそうなんだ。
「ヒナ、驚かないね」
「うん、高山君と一緒にいるとこと見かけたから」
「そうなんだ。あの二人まだ付き合ってるのかな」
「付き合ってたの?」
「う~ん。高山が中学のときかな」
そういうと真鈴はペットポドルに入った炭酸水を飲む。
意を決したように口を開く。
「実はね。三号棟で転落死した女子中学生。小さなころから知っててね。
2年ぐらい前だったかな。グループに入りたがってから、あたしが紹介したんだ。
でも・・あたしはグループやばいから抜けちゃったわけで・・・。
で、誰かがあたしの名前を出して、それで警察に話をきかれたわけ。
その子派手なものにあこがれてて。高山のことすごい好きで。
あいつ見た目もいいし、スポーツもできるじゃん。
いつも取り巻きがいるから学校の先生にも一目おかれてて。
さらに医者の息子だし、ここらの団地の子らから見ると憧れなんだよね」
真鈴の話によると当時のグループ構成を警察に聞かれたとのこと。
今もグループにいるのではと疑われているらしい。
そして女子中学生のことは随分責任を感じているようだ。
彼女なりに過去を悔やみ苦しんでいた。
実際にグループにいた頃は恐喝まがいのことをしたり、酒や煙草は常習
で、警察に補導されたこともあったといっていた。
それとグループには「アビス」という名があって、
いかにも中二なネーミングで深刻な雰囲気でなければ失笑していたところだ。
上は20代までいて、パーティを取り仕切っている。
クスリのうわさもあるらしい。
真鈴はパーティには参加したことはなく参加料は一万円。
随分、情報は集まったが闇が深そうで気が重くなった。
十塚駅のショッピングモールまで真鈴が送ってくれた。
二人でしばらく他愛の無い話をしていると
人ごみの中をカップルが通りすぎた。
男性に見覚えがある。あれは・・・。
「ヒナ?どうかした」
真鈴に肩をゆすられた。
心配そうだ。
「へ?」
「何度呼んでも気が付かないし、急にフリーズするんだもん」
やだな。わたし、ショックうけているみたいじゃない。
適当に取り繕って、真鈴と別れた。




