32 学園 多分いつもどおり
警察から今にも呼び出しが来るものかと
思っていたけれど音沙汰なしだった。
嵐の前の静けさってやつかなと思いつつ
いつも通りの日常を送ると言いたいとことだけれど
そうもいかない。
動けるうちにいろいろ調べたい。
そういえば、あのあと沢渡さんから一回電話があった。
生意気な弟を無事に家まで送りとどけたと。
「沢渡さんが何かいったんじゃないですか?
あの子は賢いからめったやたらに生意気なこといったりしませんよ」
「随分、仲がいいんだな」
嫌味だろうか。
わたしの抗議などどこ吹く風だ。
「そんなことないです。バカな姉をもってかわいそうです。
あの子はまったくあたしとはかかわり合いなしなので
そこのところ宜しく」
ちなみに連絡先を交換したのではなく。
一方的に住所と電話をかかされた。
わたしのスマホに番号はのこったけれど多分これ
プライベートの番号じゃないよね。
せめて何かあったらこの番号にかけてとか
いってもいいんじゃないのかしら。
もう、ほんとになんの。
どうやらわたしは善良な一般市民に含まれていないらしい。
まずは転落事故のあった団地だ。
由奈にきくほうがはやいのだけれど
彼女は以前怖い目にあっているので気が引けたので、
とりあえず金井君に頼んでどこの団地か調べてもらった。
由奈の家の近くと聞いていたので場所の検討はだいたいついていた。
「これ、真由先生の家の近くじゃないかなぁ」
などと金井君がのたまわる。
日向真由先生とは前日までうちの学校に来ていた
美人の教育実習生。
「え、なんで日向先生の住所しってるの」
「そんなの基本だよ。ヒナさん。個人情報なんて
だだ漏れなんだから」
基本なのでしょうか、それ。
頼んでおいて何だけれどちょっと引く。
だけどしっかり日向先生の住所も聞いておいた。
「何を調べたいのかわからないけど。
危なそうだから僕も行こうか?この地区あまり治安よくないよ」
といいつつ金井君腰が引けている。
「大丈夫。ただこのことは誰にも言わないでね」
自分では頼もし気な笑顔で言ったつもりだったけれど
金井君の表情を見る限りそれは失敗のようだった。
「ねえ、滝川と行くの?」
そんなわけあるか。
学校以外であったこともないよ。




