29 学園 再び出会う
「佐伯さん、ちょっと」
図書室を出たところで声をかけられた。ダークスーツの男が佇んでいた。やはり見間違いではなかった。
「それ変装ですか?学校まできてなにしてるんですか」
「変装じゃない。普段はこうなんだ」
本当かな。確かにスーツは着慣れているようだ。
「おい、沢渡、なにしてる」
担任の山田先生だ。こちらに急ぎ足で来る。
「うちの生徒にみだりに声をかけるなよ。佐伯、なにもこたえる必要はないからな。もう、帰れ」
そういうと二人の間に割って入った。
「おいおい、変な疑いかけるなよ。何も聞いちゃいない。俺も遅いからもう帰れと言おうとしたところだ」
なぜかこの二人以前からの知り合いのようだ。
「先生この人とお友達なんですか?」
「ああ、こいつとは大学の同窓生だ」
まじですか。沢渡さんそんなに若かったの。というか、なんで沢渡さん学校にいるのでしょう。気にはなるけれどげんなりしてきた。
「じゃあ、帰りますね」
「おう、もう暗いから気をつけろ」
と山田先生。
「生徒がそんなに心配なら俺がおくっていくぞ」
と沢渡さん。
「だから、お前はそうやって、うちの生徒からなんか聞き出そうとするのやめろよ」
「しょうがないだろう。それが俺の仕事なんだから」
「お前が警察とはねえ」
帰りかけたわたしの足がぴたりと止まった。
「うそでしょ。このひとほんとうに警察の人なんですか」
この間高校生ぼこして、警察から走って逃げたじゃないの。という言葉は飲み込んだ。山田先生がポカーンとしている。
「なんだ?お前ら知り合いか」
「いやいや、今知り合ったばかりだ。この生徒が俺を学校に入ってきた不審者と勘違いしたらしい」
沢渡さんナイスロフォローというかこの人怖い、よくもそんな嘘がさらさらと。
「じゃあ、お巡りさん暇なら送ってくださいよ」
と口走った自分にびっくりした。




