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27 学園 今日も平和? 1

 ここのところ放課後はパソコン室にこもっている。なかなかいい仕事ができるようになった。今までエクセルやワードなどを使ったことはなかった。使えるようになるとなかなか楽しい。紙ベースよりもきれいに作れるし、早くて、楽だ。


「わるい、佐伯、資料できた?」


 とパソコン室のドアから顔を出してクラス委員長の滝川君が、ちっとも悪くなさそうに声をかけてくる。


「うーん、あとちょっと待って」

「オッケー、じゃあコピー機借りる許可取ってくるから、メモリーに落として職員室まで持ってきて」


 と言って出て行ってしまった。ちょっと滝川君、人使いあらくないですかね。だいたいこれクラス委員会の資料でしょう。わたし図書委員だし、関係ないんじゃないかな。

 確かに情報の授業について行けなくてエクセル教えてといった。しかし、気づいたら彼の仕事をさせられていた。そうだ、覚えたついでに資格をとってしまおう。就職活動の時有利に働くかもしれない。

 よし、平穏で安定した未来へ向かって一歩前進だ。


「ねえ、ちょっと」


 剣呑な調子だ。


「えっと、何?」


 振り返ると女子が二人。


「あんたさあ。調子に乗ってない?」


 さあ、今度は何の因縁でしょう。


「うーんとね。とりあえず・・・あなた誰?」


 ほんとに知らない。いや・・体育のとき一緒だったかな、多分。


 というこは隣のクラスの女子か。


「は?とぼけてんの?なに滝川といちゃいちゃしてんのよ。ほんとあんた滝川の何なの?この間まで高山君高山君って大騒ぎしてたくせに。ばっかじゃないの。ふられたら、すぐ別の男なわけ。あたしは入学以来、滝川一筋だよ。たいしてかわいくもないくせに調子にのってんじゃないわよ」


 ここまで一息で言われた。誤解を解こうと口をひらいた瞬間。


「ちょっと謝れよ。愛華かわいそうじゃん」


 もう一人の女子に睨みつけられた。さしずめ彼女の友人代表かなにかだろう。まいったな。今回はヒナのやらかしではなく、わたしがやらかしだ。ナイスガイの滝川君がもてないわけがない。気づかずフォローに甘えてしまった。

 知らないところで結構ヘイトをかっているのかな。やだな。ちょっと憂鬱。


「ちょっと待ってよ。あのさ、謝れっておかしくない。あたし付き合ってないし。滝川君もあたしのこと何とも思ってないよ」


 はっきりと断言した。


「嘘だ。休み時間とか放課後よく一緒にいるじゃない。だってこの間だって二人でゴミ捨ていってじゃない」


 いやそれはやる人いないから、押し付けられただけなのだけれど。しかも途中から委員会に呼ばれていってとうの滝川君はいってしまったし。

 だいたい、何故ゴミ捨てごときでいちゃついていることになるのかな。


「ん~。そういうんじゃないんだけど。なんていったらいいのかな。うちのクラスのごみ捨て手伝ったり、掃除当番手伝うとか、言ったりしたら喜ぶし、仲良くなれるんじゃないかな?滝川君と」

「はあ?あんた馬鹿にしてるの」


 どうやら火に油だったようだ。


「してないって。好きなら、相手の喜ぶことしてみたらと思っただけ」


 一般論をぶち込んでみる。


「それがあんたのやり口なの?」


 とことんヘイトをかってしまった。しかしこれは誤解だ。なら誤解をとけばいい。


「じゃあ。聞くけど。あたしと滝川君が一緒に帰ってるところ見たことある?」


 そういうと女子二人が何やらこそこそ相談し始めた。

「え?何?見たことある?」だの「知らないよ。そんなこと」だの

「だって、芽衣がこのままじゃ。佐伯に滝川とられちゃうっていったんじゃん」

 ・・・きこえてますけれど。



「えっとお。確か。3組の美香って子がいってた」


 なんとか食い下がってきているが、しどろもどろで、トーンダウンしたようだ。畳みかけるならこのタイミング。


「じゃあ、その子連れて来てよ。なんだったら、あたしが聞きに行こうか」


 あきらかに目が泳いでいる。勢いだけでこないでよ。いや・・・それも青春か。


「・・・じゃあ・・今回はこれくらいにしといてあげるよ。次なんかあったら、許さないから」


 トーンダウンした捨て台詞。何もないの確定だから、もう来ないね。嫌われついでに、前々から気になっていたことを聞いてみる。仲の良い友達にはききづらいのよね。


「ねえ。ねえ。あたし6月からちょっと記憶が混乱していて・・・」

「ああ、知ってる。あんた、まだらボケなんでしょ」

「え、そんな風に言われてるの?」


 女子二人は互いにちらりと顔を見合わせてから、勢いよく頷く。ひどいな、それ。自分がちょっと哀れになる。気を取り直してさきを続ける。


「その6月以前のあたしって、高山君一筋だったの?」


 彼女たち二人の答えは「はあ?そんなわけあるか」だった。高山君に異様に執着しながらもあっちこっちに手を出していた模様。なんて面倒くさい子なの。

 わたしは肩を落として職員室に向かった。

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終電のその後で……」ぜひ、こちらも!!
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