23.佐伯家の人々
この居心地の悪さは何だろう。転生しても実家・家族というのがつらいという部分だけ変わらない。もちろん前世より、かなり裕福になったことは素直に嬉しい。初めてスタバに友達と入った時はドキドキした。
それにしても両親の弟の修一への溺愛ぶりには戦慄を覚える。有名私立中に通ってお勉強がよくできるらしい。ヒナの弟とは思えないほど理知的だ。姉を小ばかにしくさった目で見てくるのが気になるが・・まあいい。こういう扱い慣れてるし。ヒナちゃんかなり邪険に扱われてたのね。ほんとにこのうちの子だよね?
今日は法事でお寺さんいる。この家族とは夏休み中に一回食事をしたきりだ。父はヒナの言動にすこし神経質になっている。なんでも以前のヒナは荒れていて実家からよく無断でお金を
持ち出したり、母親の高額なアクセサーを売り飛ばしてお小遣いにしたりと傍若無人なふるまい。その結果の一人暮らしらしい。何のことはない弟の教育に良くないから追い出されたのだ。
そして、久しぶりにあった親戚たちはわたしの変わりように引き気味だ。まあ、一番変わったのはスカートの丈。次に体重ですかね。精神的ダメージ半端ない日々が続いたのでその結果だ。従妹に雅という女子中学生がいて、どうも以前の派手でおしゃれなヒナにあこがれていたらしい。
「なにヒナ、ダッサ、ありえねぇ」
といったきり口も聞かない。軽蔑されたようだ。うーん更生して軽蔑されるなんて立つ瀬ないわぁ。このほうが両親の受けもよさそうなものだけれど帰りしな母のるり子に
「みっともない。そんなに痩せてご飯食べさせてないのかって節子おばさんい言われたじゃない。こんなところで親に恥かかせないでよ。お父さんの顔たててよ。修ちゃんだってかわいそうじゃない」
と叱責された。
帰りは家族も親戚の皆さんも車でかえっていった、父にタクシーで帰りなさいと2万円もらった。断ったら怒られたので仕方なく受け取った。メンツの問題らしい、めんどくさいな。
結局電車で帰る。帰りの電車で思い立って以前住んでいた駅に降り立ってみた。あんなに怖い目にあったのに性懲りもなく来てしまった。懐かしくて、貧しいながらも平和に一人暮らしていた街が。
とりあえず駅の前のドトールコーヒーに入る。ケーキセットを注文した。上にのったマロンクリームがおいしそうで選んだ。そして前世ではなかった読書習慣。これが一番のストレス解消法だ。
だが、今日は集中できず、気づくと前世を回想している。ぼうっと店の外を見ていると見知った人物が通り過ぎた。
高山君。
それと同じ高校の里沙とよくつるんでいる2組の三宅亜弥と男子は名前おぼえてないな。とりあえず見つからないように顔を伏せた。
もしかして、高山君はここに住んでいるのだろうか。学校が休みの時わざわざこの駅利用しませんよね。




