19 日常?
アイスよりホットミルクティーを買うことが多くなった今日この頃。
由奈、渚、茉奈いつものメンバープラス最近では由奈と同じ文芸部の千春ちゃんってっ子が加わって、ランチタイムをまったり過ごしている。こんな平和な時間を過ごしていると自分の過去もヒナの過去もどうでもいいかなと思えてくる。
だいたい、わたしが動くと碌な目に合わない。町口駅での騒動が嘘のように思えてくる。あのあと結局「バカ、放せよ、離れろ」と邪険にあしらわれつつ、沢渡さんにマンション前まで送ってもらった。
いや、恥ずかしい黒歴史は忘れよう。昨日も勉強を終えた後、深夜までユーチューブで護身術の動画に見入ってしまった。腕っぷし強いの大事。
回想から覚め、眠気をはらうようにふるふと頭をふると
「やっだあ。ヒナ、犬みたーい。きゃはは」
なんだか茉奈にうけている。平和だあ。ずっとこれが続けばいいのに。
「なんかあんた腑抜けてきたよね」
振り向くと里沙がいた。おお、今日は静かに入ってきたのね。ステルス過ぎて気づかなかった。
面倒くさいな。相手したくないです。心なしかランチタイムの仲間も嫌がっている雰囲気。空気悪くするなよ。
「ぷうさんさ。スカート長くない。それから化粧くらいちゃんとしてきな。最近むっちゃ手抜きじゃない?せっかくちょっと痩せたみたい?なのに。もったいなとまではいかないけど。みっともないっていうの?」
といいながらけたけた笑っている。同調して笑うものなし。というか水を打ったようにしずかになった。空気凍ったじゃない。おっ渚がイラつき始めた。さっきまでころころと笑っていた茉奈の愛らしい顔が能面のような無表情になっている。空気がはりつめてきたようで、とりあえず里沙を教室から連れ出す。友達巻き込みたくないからね。
しかし、ちょっと痩せたはないだろう。ヒナになってから心労がたたって10キロも痩せた。
そのうち抜け毛もでそうな勢い。
「いやさあ。あんた最近、金井と仲良くしてるんだって?なんであんなオタクと?」
くすくすと嫌な笑い。廊下にでてのっけから、このお言葉。
「そんなことわざわざいいにきたの」
「だって、笑いものになってるよ。あんた」
ああそうですか。はい。マックで一緒にいたの結構目撃されてて何人かに付き合っているのかと聞かれたことがある。笑いたければ勝手にどうぞ。
「別にどうでもいいや」
と答え、里沙との会話終了。教室に戻ろうとすると里沙に腕を引っ張られた。爪たてないで痛いから。
「なあに?」
「翔からなんか言われたでしょ」
「翔?」誰?櫻井くんですかね。
「は?あんた大丈夫。高山のことだよ。あんた翔君翔君いってたじゃん」
げげっ、まじですか?里沙ちゃんの彼氏ですよね。
「あ・・・っとごめん、ちょっと記憶飛んでた。で、それがどうしたの?」
「だから、付き合うの翔と?」
「はい?あれ金井君のはなしじゃなかったの?」
「あんなオタクはどうでもいいんだよ。いいから答えろよ」
怖いな里沙ちゃん、なんのスイッチはいっちゃたの?いきなり豹変しないでくれるかな。
「いや、あの・・なんであたしが高山君と付き合うって話がでてんの?だいたいそんなこと言われてないし。1回くらいしか話したことないよ。接点ないし」
すると里沙が掴みかかってきた。
「一回くらいって何なのよ。そんなわけないじゃん。あーしら一緒に遊びに行ったりしたじゃん」
怖いよ。知らないよ。なにその新事実。知りたくなったわ。
「だからあ、今年の6月以前の記憶ないっていってるじゃん」
里沙の手がゆるんだ。いやだ。廊下で注目あびてるじゃない、わたしたち。しかし、里沙はおかまいなし
「やっぱ、そうだよね」
どこか腑に落ちたように言う。
「最初はおとぼけかと思ったけどあんた相当おかしいよ」
「かもね」
こんな相槌しかうてません。
「つまんないダサい女」
そう言い捨てるとさっていた。
「ああ、むかつくなんなの?あいつ」
教室からいきりたった渚が飛び出してきた。いまにも里沙をおってとびかかりそうな渚を由奈がどうどうとなだめている。
「渚、あたしも殴り込み付き合うよ」
とピースで笑顔の茉奈。こいつ楽しんでいるな。まあ、茉奈も頭きているよね。いまだに
悪口の書き込みされているようだし。男子の受けがいいというだけで、理不尽だよね。
「佐伯、どうかした?」
心配げに滝川委員長がきた。廊下で騒動を見かけたようだ。
「うん、へーき、へーき」
とりあえずへらへら笑っておいた。みんなごめん。
そしてありがとう。




