表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/75

18 とある商店街の喫茶店、再び

 この前の喫茶店で沢渡さんと差し向い。なんかきついなこの状況。妙に緊張するのよね、この人といると。でもいまは安心感もある。相反するおかしな感情が湧き上がる。


「で、あんた、あそこで何してたの?」

「・・・・」


 黙秘したいな、この質問。


「あの、そんなことより、こんな近くにいたりしたら、お巡りさんに見つかったりしませんか?」


 最大の懸念事項を口にした。


「灯台下暗しだよ」


 堂々としているというか太々しいというか。


「・・・やっぱり、普通の会社員って嘘ですよね」

「おい、こら、質問してんはこっちだよ」


 とりあえず軌道修正された。ほんとのこと言っても信じてもらえないだろうし。かといってこのままのらしくらりと躱せるだろうか。


「えっと、マンホール探してました」


 我ながら間抜けな受け答えだ。


「は?」


 怖いから睨むのやめてください。


「いや、あの・・・そうだ。なんで沢渡さん、あんな場所にいたんですか?」

「ん?俺は散歩だ」


 いいきった。


「散歩に適した場所とは思えませんが・・・」


 そこまでいってにらみ合いになった。先に目をそらし下を向いたのはわたし。マウンティング失敗です。


「いや、あの実は・・・事件というか事故を調べてまして」

「ほう・・・で?」


 さきを促されても困るのだけれど。


「最近、その・・団地やら、駅やら、マンホールやらで転落死が続いているときいて・・」


 ごにょごにょと語尾をごまかす。


「よく知っているな・・・そんなこと?いや、ネットでみたのか」

「まあ、ネットっていうのもありますけど・・・。最初は先生に聞いたんです。そういう事故が続いているから、気をつけろって、それから友達にきいたりして」

「ふーん」


 本当の話をしているのだが、信じてない様子。


「で。先生って何?」

「え?何って高校の担任ですけど?」

「・・・あんた。ほんとの高校生?なんちゃってじゃなくて?」


 ほんとにそうなのかと呟きながら顎をさする。半信半疑のようだ。前からそういっているのに。なぜ、信じない?わたしどれだけ怪しいの。沢渡さんはコーヒーを一口飲むと口を開いた。


「はなしをもどすが、まず繁華街で中年男性に追いかけられてた件。次に羽衣駅東口の不動産屋で会った件、それからアパートを訪ねてきた件、で今日の件。それはなにかつながりがあるのかな」


 いきなり切り込んできた。武闘派と思いきや、頭もしっかり使うタイプなのね。面倒くさい。しかしこの人なんであんなに腕っぷし強いの?一瞬、警察の人かと勘違いするところだった。ほんと何者?。でも助けてくれたんだよね。


 ん・・・助けたのか?あれ。


 何かを彼らから聞き出そうとしていたような気もする。それになぜあの場所にいたのか。偶然にしてはおかしい。ともあれ


「繁華街の件は・・なんだかよくわからないです。パパ活ってやつですか?多分誰がと勘違いして追いかけてきたんじゃないかなと」


 疑わし気な視線を感じる。


 ん?もしかしてあの時、追いかけれているわたしを助けてくれた?


 いやいや違うでしょう。乱暴すぎる。あっと・・・次の質問にこたえなきゃ。これ難しいな。


「不動産屋・・・やっぱり私も引っ越し?」


 ああ、怖いから睨まないでください。納得できないですよね。こんな話。


「で、さっきのは・・・。えっと、ひょっとしてあたしが過去に恨まれるようなことしたのかも?」


 うわあ沢渡さんからの威圧感半端ない。お怒りのようで。ええい言ってしまえ。


「あたし、実は6月ごろから記憶が混乱するというか正しくは記憶障害?とかいうらしいんですけど

 今年の6月以前のことほとんど、っていうかきれいさっぱり覚えてないんですよ。あはは・・・」


 沢渡さん、怒り狂うと思いきや


「くだらねえ」


 としらけたように呟くとおもむろにテーブルに2千円をおいて席をたった。

 珈琲二人分に2千円って多くない。というか静に怒るタイプなの?意外過ぎる。


 これは見捨てられたな・・・。


 わたしは清算をすませて慌てて店をでる。スタスタ商店街を歩いている沢渡さんをみつけた。お金返さなきゃ。追いつくとジャケットをしっかりとつかむ。何故だか手に力がこもってしまう。勝手に言葉が口をついて出る。


「ごめんなさい。変なことばかりいって。理由があって3年前に203号室に住んでた人のこと調べてるの。ただそれだけ。ほんとになんでこんな目にあうのかわからない。あたしが一番知りたい。だから、怖いから、家まで送って。あの、途中まででいいのでお願いします」


 支離滅裂だけれど本音を吐露していた。


 これが泣きつくってやつか・・・。


 今頃になって震えがきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終電のその後で……」ぜひ、こちらも!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ