17 乱闘?
「おい、てめえら、何やってたんだよ」
沢渡さんがどすの利いた声で脅しつけている。大人が未成年の男子を・・・。
やだなガラ悪くて。
わたしこのまま帰ろうかな。助けてもらっておいてなんだけれど。この人と知り合いとか思われたくないし。などど考えつつじりじりと後ろに下がると
「おい、なんであいつを道路に突き飛ばした。普通に考えて死ぬだろ」
わたしを顎で指ししめす。確かにそういうタイミングでぶつかってきていた。わざとなのか・・・あらためて肝を冷やす。
ん?沢渡さんいつから見てたの。もっと早くわたしを助けられたんじゃ・・・。
「しっ、知らねえよ。あの女の方からぶつかってきたんだよ」
この期に及んでそんな嘘を・・・。
「ひっ」
おっ、再び関節を決められたようだ。もう、絶対に普通の社員とか嘘でしょ、沢渡さん。
「ち、ちげーよ。ちょっとふざけただけだよ」
「はあ?そういうレベルのいたずらじゃねえだろ?」
さらに締め上げる。捕まっている男子が「ひー」と情けの無い声を上げた。
「で?なんで彼女を連れてこうとしたんだよ」
「頼まれたんだよ。あの女みかけたら、捕まえて、脅して黙らせろって」
「え?」
この発言にはわたしもびっくりだ。何のことだろう。不安で胃がひっくり返りそうになる。さらに沢渡さんが、追究しようとしたところ
「おい、そこ!なにしてるんだ」
振り返るとお巡りさんが二人近づいてくる。
「ちっ」
捕まえていた男子を突き飛ばすと沢渡さんはひらりと身を躱し、住宅街に消えていった。
いやいや、ここでひとり取り残されても困るのですけれどわたしは慌てて彼を追った。だってねえ。沢渡氏が来る前は被害者だったけれど今は何だか加害者っぽいし。
あっ、しまった。見失った。
その時、建物の隙間に引きずり込まれて口をふさがれた。暴れたら、「静かにしろ。ばか」と言われた。なんだ沢渡さんか。横を気づかずにお巡りさんが走りすぎていく。ナイスタイミング。
「ちっ、ああいうガキどもは人を襲っておいてやられそうになるとすぐに警察を呼びたがる」
おい、その発言突っ込みどころ満載だぞ。最初から大人げなく高校生をぼっこぼこにしてたの沢渡さんだし。




