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前世をたどる

 再び生前過ごしていた町口駅に降り立った。今の住まいからは私鉄を乗り継いで1時間弱だ。


 ここのところ文化祭やらなにやらで学園生活にかまけていてすっかりご無沙汰になっていた前世の自分を探す旅を再会する。

  新しい生活にも馴染んできたのに探してどうするのという気もするが、やはりマンホールに落ちた後、どうなったのかを知りたい。ちなみに今日の私服はグレーのワイドパンツに明るいパープルのカットソーを合わせてみる。ヒナにはちょっと大人っぽいかもしれない。


  わたしがもともと住んでいたアパートのある商店街側とは逆にある南口は国道に続いている。国道へでる手前を左へ曲がると大型ディスカント店がある。そこの駐車場の敷地に隣接して3年以上前バイトをしていたどんぶり屋がある。


  ちょうど昼時で店はこんでいる。入り口で食券をかう。店の客は男性ばかり、さすがに十代の女子一人は目立つ。落ちつかない気持ちで一人カウンター席につく。注文した豚丼がきた。

 料理を出してくれた中年男性のネームプレートを見ると店長となっている。


「あの。店長さんかわったんですか?あたし、3年まえにここでバイトしてたんです」


 声をかけてみる。


「え?お客さんみたいな子いたっけかな?あたしは2年前ここにきたから。その時のことはわからなけど。だいたいここのバイト男かおばさんだから」


 はい、わたしそのおばさんでした。

 店長は調理場からよばれて去っていった。収穫なしだな。私の中では数か月まえだけれど世間では3年の月日がたっている。店の中は心なしか、煤けてみえた。ふと厨房の壁に写真が貼ってあるのが見えた。従業員の集合写真だった。真ん中に高校生バイトの女子と3年前の店長が並んで微笑んでいる。わたしはいない。なんだか少し寂しくなった。やだな。情緒不安定かな。



 しつこい料理に胃もたれしつつ国道にでる。道は相変わらず埃っぽく、ファミレスや中古品を扱った店、コンビニなどが並んでいる。ちょっと角を曲がると入り組んだ住宅街が広がっている。とりあえずは、バイトを断られたガソリンスタンドを目指して歩く。落ちたマンホールの目印として。

 一本道だけれど結構遠いのだよね。でも食後のいい運動だ。もくもくと歩いているといろいろと考えてしまう。そういえば沢渡さんと最近あわないなとかね。一時期は驚くほど偶然にあってたのに

 もうあれからひと月以上たつ。

 ちょっとアパートまで行って大家さん紹介してもらうかな。生前のわたしの話聞きたいし。だが、しかし連絡先交換をしていない。留守だったら無駄足だし。アパートのそばに近づいて変な大学生風の男にまた絡まれるのも嫌だし。なによりも、とりつくしまもなく断られるかも。


 などと回想と黙考に浸っているといつまにかガソリンスタンドを通り過ぎてしまったようだ。結構歩いたな。もう一度戻る。ない。もう一度進む。ない。デジャヴを感じる。ああ、無くなっているし、つぶれたのね。どこのマンホールだったけ?しばし、立ち尽くす。


 呆然としていたせいで気づくの遅れた。背中に強い衝撃を感じた。何自転車?

 危うく道路に転げ出るところをガードレールをつかんでしのいだ。そこを車がの猛スピードで通過する。危ないあ。

 振り返ると自転車に乗った高校生くらいの男子がいた。あと友達らしき男子が3、4人ほど。


「ごめん、ちょっとよそ見してた」


 謝っている割にはにやにや笑っている。一見普通の子たちにみえるが、嫌な雰囲気。

 するともうひとりが、「これあたりじゃあね」とかいっている。何があたり?なのことだろう。


「ねえ、何年?どこの学校?」


 とか聞いてくる。

 ほっておいて駅に戻ろうかととも思ったが囲まれてしまった。うーんまずいなこれ。


「かのじょ、カラオケ行こうよ」


 あれ両脇から捕まってしまった。


「ちょっと放してくんない。あたし用事あるから」


「えーいいじゃん。ちょっとだけ」などと口々にいい引きずられ行く。

 とりあえず、やばそうな雰囲気なのでさりげなく右にいる奴の足を引っかけてみる。おっと態勢を崩したな。そのすきに左のやつから腕を振りほどき、脱兎のごとく逃げだす。よっしゃ!上手くいった。さらに加速する。だがしかし、あいつら速い!って自転車じゃん。それ反則だよ。


「待てこのブス」

「バカ女」


 などと罵詈雑言をまき散らしながら、追いかけてくる。なお誰も助けてくれない模様。

 逃げるのに必死でもはや振り返る余裕もない。交番どこにあったかなと頭の中で必死に検索してみる。

 すると後ろから、怒号と悲鳴が。振り返ると自転車がなぎ倒され、2人が地面にはいつくばっていた。それは阿鼻叫喚。一人は恐れをなして逃げ出していく。そして最後のひとりが長身の男性にきれいに関節を決められていた。あの人ひとりで片づけたんかい。その男性振り返りざま。


「ちっ、何やってんだ。このバカ女」


 ガキから、バカ女に格上げかしら、

 お久しぶりの沢渡さん。

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終電のその後で……」ぜひ、こちらも!!
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