みられている?
最近、視線を感じる。振り返るとそっぽを向く。あなたのことなんて気にしてません的な。わざとらしく教科書開いたり、スマホいじくり始めたり。しかも二人。一人は渚。なんでだろう。
そしてもう一人はほかのクラスのオタクっぽい男子。彼はさらになんでだろう。オタクをじっと見ていたら図書室から逃げ出した。
ふう、なんだったのだろう。すると渚がつかつか近づいてきて
「ちょっと話あんだけど」
穏やかじゃないな。渚にひきずられるように書棚の隅に連行された。
「ヒナさ。最近、由奈とばかり仲良くしてない?そういうの良くないと思う。うちらグループじゃん。誰かひとりばかり仲良くするのどうかと思うよ」
一気にまくし立てた。
「そんなことないと思うけど」
まずい雰囲気だ。わたしが言葉をさがしていると
「だいたい、うち由奈とは中学からずっと一緒だしさ」
あれ、渚拗ねてる?そうかわたしが最近由奈と一緒に帰っているから、やきもちをやいているのか。単に由奈のボディガード代わりのつもりなのだけれど。誤解されちゃったのね。
もともと由奈と渚はセットでアイドルオタだ。由奈がふわゆる系可愛い女子で、渚はどことなく
凛々しい感じですらりとして背も高い。一見正反対に見えるがとても仲が良く二人でドームなどへ推しメンバーのアイドルグッズを買いに行ったりしている。
部活も委員会も違う二人だが中学以来の親友だ。ここで亀裂を入れてはまずいわね。しばし黙考。
こういうときなんて言ったらいいのかしら?
「う~~んとほら、渚は剣道部で遅くなったりするじゃない。だからそのときあたしとかえっているだけだよ」
考えた割にはそのまんまのことを口にした。
「前は由奈、待ってくれたこともあったもん」
即座に返事が返ってきた。ああ、どうしよう。なんといったらいいのか。などと思っているとねばつくような視線を感じた。
「!」
隣の書棚から、オタク男子が覗いていた。やだ、あなたさっき図書室出て行ったじゃないの?いつのまに舞い戻っのよ。なお聞き耳を立てている模様。それはだめでしょ。面倒でいままで放置してきたが、いい加減捕まえて話をきいてみようか。あれ、いま目があったよね?とりあえずここは手っ取り早く。渚の目を正面から覗き込む。
「大丈夫。心配しないで、わたしなんか入り込めないくらい由奈は渚のことすっごく愛してるから」
はっ!何を言っているのだ、わたし、ついオタク男子に気を取られ不覚。渚が拗ねるもの忘れて思いっきりひいているではないか。
「あっ、じゃない。あの子、渚のことが大好きっていいたかっただけなの。一緒に帰ってるときもいつも楽しそうに渚の話してるし」
と慌てて言い換え、渚の手をぎゅっと握った。ごめん渚、雑な対応で、隣でがたんという音が聞こえた。オタク男子が危険を察知してか逃げだしたようだ。逃げられると追いかけたくなるなあ。お姉さん君のお話聞きたいな、まあ、ここでグダグダ渚と話続けても解決をみないだろうし。ここはとりあえず最近ストーカーしはじめたオタクだな。
「ちょっとあたし用があるの思い出しから行くね。また話そうっ!」
「へ?あ、ちょっ、ヒナ~」
あたしは謎のオタク男子を追って図書室を出た。




