暗雲来る?
ほんと重いなこのゴミ。わたしは学校集積所に向かって廊下を歩いて行った。今日は掃除当番だ。皆が面倒くさがって放置してきたゴミを一人引きずる。多分、球技大会で使ったものと思われ。・・・3ヶ月以上放置かよ。
階段をよろよろと下りているとふっとゴミ袋が軽くなった。
「佐伯。一人じゃ重いだろ。手伝うよ」
笑顔が眩しい。久しぶりに男子に優しくされて涙ぐみそうになった。たしかクラス委員のた・・滝・・滝何とかくん・・・む、なんだっけ?最近、よくお世話になるのだが名前がでてこない、まあ、いいや。とりあえず二人でゴミを運ぶことになった。
彼はどうやら、わたしの様子が球技大会以来おかしいのを心配してくれているらしい。クラスでも何かと声をかけてフォローしてくれる。ってか高校生にフォローされるなよ。いやだ、あたし中身はアラサーなのに。多分、担任に声をかけるように頼まれたのよね。山田先生は面倒見がいいからな。やだ!わたし、まだクラスでおもいきり浮いているのかしら。
ゴミ捨てを終え3階にある教室に戻るとぽつんと女子が一人机に座っていた。
「あれ、由奈じゃん。渚待ってんの?」
わたしは声をかける。由奈がいつになく深刻そうな面持ちでいた。目でわたしに何かを訴えかけているようだった。
「じゃあ、俺帰るから」
隣にたっていた滝何とかくんが空気を察して帰り支度をはじめた。
「あっごめん。滝川」
と由奈がいう。なぜ、謝る。というか、そうだ彼、滝川くんだわ。
「佐伯、もし困ってることがあったら気軽に言って」
微笑みながらそういって、帰っていった。やばい相手高校生なのに惚れそうだわ。なわけないか。
「なんか、邪魔しちゃってごめん」
「いやいや、そんなんじゃないから、多分山田に頼まれているんじゃないかな。あたしここのところ挙動不審だし」
「挙動不審?そんなことない。むしろ今の方が全然まともだし、優しい。人のことぜんぜん悪く言わなくなったし」
「ああ、そう・・・、ありがとね」
ちょっと照れるな。褒められたの何年ぶりだろう。
「でね。相談なんだけど・・里沙のこと」
由奈と肩を並べて学校から駅へ歩いている。あれからいろいろ話してすっかり遅くなってしまった。もう周りは暗い。由奈はびくびくしているようだ。話のあらましはこうだ。日曜日に里沙に呼び出されて駅前のマックに行くと知らない男子が数人里沙と一緒にいたという。由奈は彼らに囲まれて、ヒナに団地の転落死の話をしたことをなじられ、これ以上その噂を広めるようなら、ただではおかないと脅された。
「うちら全員であんたの行動みているから、背中には気をつけな」
それが里沙の捨て台詞だった。怖い怖すぎる。ってかリサリサかなりたち悪いな。里沙ったら今日もわたしらの教室に昼休みきて部活の女子の悪口たれてたじゃん。別段変わった様子はなかった。そういえば由奈元気なかったような・・・。そりゃ震えあがるわな。先生に相談しようといったけれど由奈がおびえて駄目だった。今日のとこは引き下がったが折を見て山田先生に一緒に相談に行こうと考えている。
それから、なぜその話で里沙が過剰とも思える反応を示したか心当たりあるのかときいたけれど。黙りこくってしまった。無理強いは良くないので追及はしなかった。そのうちはなしてくれるだろう。
星の見える晩、震える由奈と手をつないで歩いた。




