再びの自分探し2
「で、なんであんた俺の行く先々にいるの。何かの逆恨みか?」
ここは駅近くの小さな商店街の中にある喫茶店だ。レトロな感じの作りで、メニューによるとナポリタンやサンドウィッチなどのような軽食も楽しめる。わたしたちのほかにはサラリーマンや主婦のグループなどがいて適度に騒めいていた。
「逆恨みって・・。わたしそもそもあなたのことしりませんが、そんなの偶然ですよ。」
目の前に座っている目つきの鋭い男は沢渡といって、あのアパートの202号室の住人だ。それならば隣の203号室の住人について何か知っているかもしれない。それを聞きたいと思ったのでのこのこついてきた。彼は彼ではなぜわたしと行く先々で会うのか、またなぜ自宅に来たのか疑問に感じたらしい。それで外で話をする運びとになった。
どうものっけから、わたしは不審者扱いされているようだが・・・。しかし逆恨みって何のことだろう。きっと常日頃からあらゆる方面にガンを飛ばして恨みをかっているからだろう。それとも怪しい職業の人なのだろうか。ホストにしてはめつきが鋭く、チャラついていない気がする。ここで悶々と考えていても仕方がないので
「沢渡さんって何やっている人なんですか」
と直球で聞いてみる。
「は?なんであんたに言わなくちゃならないんだよ」
怪しい何故隠す。
「会社員だよ」
怪しいと思ったことが顔に出ていたのか。存外素直に言った。しかしあくまでも自己申告だし、薬の売人だと言われた方がもっとしっくりくる気がする。
「ああ、何、信じてないの?会社名とか必要?絶対名刺はわたさないけど」
なんだこいつ人の感情が読めるのか。妙に勘がいい。しかも失礼だな、おい。
「いえ、結構です。あのわたしは以前203号室に住んでいた人のこと知っているか聞きたいだけなので」
いちいち感情を読まれのが嫌なので要件だけ言うことにした。
「隣?どういうことだ。なぜ調べてる」
沢渡某、すこし興味をひかれたようだ。
「あの、三年前にそこに住んでいた女性に傘をかりてお返ししてないままでいたので気になって」
用意してきた言い訳をいう。
「で?傘もってないけど、どうしたの」
うるさいな。どうしていちいち突っ込んくる。
「えっと、失くしてしまったのでお詫びとお礼をしようと思いまして・・その」
それを聞いた沢渡さん、「ああ、もういいや。そういうの」とわたしを追っ払うように手をふりながらいった。それから203号の男とどういう関係でなぜもめたのか聞かれた。こちらは素直に答えた。すると「ああそう。商売やってるわけじゃないならいいや」と言われた。商売って何?あたしごく普通の女子高生なのだけれど沢渡さんは信じていない模様。まあ、わたしもこの少しがらの悪い人が
普通の会社員とか信じていないから、お互い様だし。
「で、3年前の隣の住人のことだろ」
おっ、話してくれるのか意外。それから30分ほど話をきいて別れた。コーヒーは割り勘かと思ったがおごってくれた。本当はいい人なのかと危うく勘違いしそうになった。
まあ、それは置いとくとして、沢渡さんがいうには203号室のわたしは三年前に行方不明になり正確な時期は不明。家賃の滞納で不動産屋や大家が押しかけて判明したそうだ。その後、そうそうに家族がきて部屋を引き払ったらしい。
帰りの電車に揺られながら、人が一人消えてしまうのってあっけないものだと思った。亡骸は見つかったのかな。まだマンホールの下だろうか。ものはついでとその家族の様子や住んでいる場所を
聞いた。沢渡さんはわたしのその言動を怪しく思ったのか、ちょっと眉をひそめたが大家から伝え聞いたことだから知らないと答えた。
更になぜ不動産屋にいたのかときいたら、「引っ越しを考えてるからに決まっているだろう。何をしようと俺の勝手だ。お前はストーカーか」などととても失礼なことを言われた気がする。
ああ、疲れた。収穫なしとか・・・ないわ。




