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これ以上は限界である、イフの胸元の小さな丘の頂上に俺の視線が到達するリスクを回避すべく、俺はイフの肩をがっしりと掴んだ。
「ひゃう……!」
イフは、びっくりしたような声をあげた。
俺は、極力イフの胸元を見ないよう、イフの目をしっかりと見た。
目と目で見つめ合うこと、数秒だろうか。
「……ソ、ソラ?」
イフの瞳が、不安げに揺れた。
「大丈夫だ。今ので、お前の気持ちは伝わった」
と、俺は声を張って言った。
イフの髪のサイドテールが、揺れた。
「き、気持ち……?」
「ああ。お前からは離れないことを約束する」
パーティーを組む以上、背中を預ける以上、クエストを遂行するにあたっては信頼こそが命綱だと思われた。
イフは、一瞬驚いた様子だったが、やわらかくほほ笑んだ。
「わかりました、ソラ」
イフの笑顔に、俺はそっと胸をなでおろした。
何とか危機は脱したようだ。
「じゃあ、早速ギルドに行ってみよう」
と、俺は、気を取り直して言った。
はいと、イフは嬉しそうに頷いた。





